「日々の米作り」の原動力になっていること…
null思い立って断食をした。
3日間だけ固形食を取らず、胃に負担をかけない日々を過ごした。 痩せたいという気持ちもあったが、それよりも、 毎日休まず働いてくれる胃を、少し休めてあげたいという思い。断食をしたら、自分の身体はどういう変化があるんだろう興味。何より、噂に聞く断食明け1食目、お粥の美味しさを味わてみたいという欲望。
いろいろ理由はあったけれど、 食いしん坊の私は、最後の理由が大きな原動力だった気がする。
断食といっても、絶食するわけではない。水はたっぷり取る。栄養補給として酵素ドリンクなどを飲む人が多いと思うが、私は手軽に用意できるお味噌汁(具無し)を選択。
1食でも抜くとストレスが溜まる、おやつは絶対に欠かさない、晩酌は心ゆくまで。 そんな生活を送っていた私が、果たして本当に断食なんてできるだろうか? と不安しかなかったが、始まってみたら、体も心も脳もスッとその状態に入っていった。 それほどお腹も空かないし、穏やかな数日間だった。
さて断食明け、最初の食事はこれ、お粥だ。 お粥を炊くなんていつ以来だろう? 生米とお水からコトコト炊く、ただそれだけ。
お米と水の量はお好みだが、お米1/2合に対してお水600ccが作りやすいだろうか。 時々お箸でかき混ぜながら沸騰させて、蓋をして弱火で30分くらい。拭きこぼれるので、箸を1本挟んで隙間をあけておく事を忘れずに。
胃に負担をかけないよう、最初は重湯(上澄み液)からいただく。 ほんのり甘く、優しい味わいが胃に広がった。 美味しいのは間違いない。でもそれは、脳に直撃するようなわかりやすい美味しさとは全然違う。なんだろう、胃にも心にも染み入る味わい。しみじみと美味しかった。
温かいからか、心もホッと落ち着く。
久しぶりにお粥を炊いて思い出したのは、離乳食だ。日本では、赤ちゃんが最初に食べる物はお粥、という事が多いと思う。うちの娘ももちろん、我が家のお米を最初に口にした。
米農家にとって、こんなに嬉しく誇りに思える事があるだろうか。
日本の主食と言える作物を、そして多くの赤ちゃんが最初に口にする物を作っているという事が、 どれだけ私たち米農家にとって嬉しく、日々の農作業の原動力になっている事か。
離乳食作りは好きではなかった。
うちの娘は全くスムーズに進まず、当時の私はかなり悩んだ思い出がある。 でもこうして写真を引っ張り出して眺めると、パクパクお粥を食べる娘がいた。こんなにも小さかった娘が、我が家に本当にいたのだろうかと不思議な気持ちになる。
可愛かったなぁ。今でも可愛いけれど、この頃の可愛さは格別だ。
久しぶりにお粥を炊いてこの記事を書いて、当時の事を思い出して感じたのは、娘はちゃんと成長している、という事だ。 我が家のお米と共に。
あの頃も今も、そしてきっとこの先も、人生に寄り添うようにお米がある。 お米を作っていて良かった。 これからも頑張ろう。 お粥を炊いてそこまで思えた、稀有な断食体験だった。
今回は断食明けのお粥だったので、塩も入れずお米本来の味わいを楽しんだ。 断食明けでなければ、塩を少しふったり梅干しを添えれば、より一層お米の甘さを感じられるはず。
寒い冬が終わろうとしていて、芽吹きの季節が巡ってきた。
ちょっと重くなっていた体も、どんよりした心も、断食のおかげでスッキリした気がする。来たるべき農繁期も、これで乗り越えられそうだ。
今年の米作り。予定表を作成しました!
nullその農繁期に備えて、まずは予定表を作成した。
世間的には、田植えはまだまだ先では?と思われるけれど、田植えに向けて準備するこの期間が、実は一番忙しい。 田植えで植える苗を育てる日々が、休みなく続くからだ。
種籾(たねもみ)を小分けして、水に浸したり乾かしたり芽を少し出させたりして、 それからやっと種まき作業。 さらにビニールハウスの中での育苗は、田植えが終わる5月下旬まで続く。
赤い部分は人手も必要なので、お手伝いにいていただけそうな方への声がけもある。並行して、田んぼではトラクター作業も始まるから、もう、 こうしてスケジュールを立てるだけで目が回りそうだ。
今年の米作り、いよいよ始まります!
濱田律子
愛知県生まれ、千葉(スイカの名産地・富里)育ち。大学卒業後カナダへ。バンクーバー、カムループス、バンフと移り住み、10年間現地の旅行会社で働く。カナダの永住権を取得したにもかかわらず、見ず知らずの富山県黒部市で農家に転身。米作りをしながら、旦那とココ(娘)と3人で日々の暮らしを楽しんでいます。