読んだあとは、あたたかくて心がキュッとなる
null昔からのお気に入りの絵本もあるのですが、今回は新作を。2月2日に発売された『ももちゃんのねこ』(作 わだ ことみ/絵 いまばやし ゆか・小学館)です。
主人公である“ももちゃん”と猫の“みゅう”の出会いから、お互いの成長と触れ合い、やがてやって来る別れのときと、その後のももちゃんとみゅうの絆までが描かれています。読むと命の大切さや家族の絆に想いを馳せずにいられなくなる、何度読んでも目頭がぽうっと熱くなる物語です。
実はこの絵本を最初に開いたのは会社のデスクにいるときだったのですが、後半はもう目がうるうるに。慌てて本を閉じ、家に帰ってもう一度読んで、また目がうるうる(笑)。
それというのも、わが家は現在2代目の猫がいて家族全員猫が大好き。先代猫が息を引き取ったときは家族みんなで見守っていたのですが、そのときのことを思い出さずにはいられませんでした。
猫に限らず、大切な家族はいつか別れがやってきます。当たり前のように一緒にいる生活、一緒に遊んだり喧嘩したり、慰め合ったりすることの大切さ、読んでみるといろいろな思いがめぐるはずです。
原作はアニメ!絵本はまた違った物語に
null『ももちゃんのねこ』の原作は実はアニメ。2016年に幼児雑誌『めばえ』増刊号のDVD付録のアニメとして登場し、世界の映像クリエイターたちの作品が集うSKIPシティ国際Dシネマ映画祭 2017で、アニメーション部門国内コンペティション観客賞を受賞しています。
アニメは絵本の発売を記念して、今YouTubeで公開されていて、わたしは絵本を読んだ後にアニメを見たのですが、絵本とはまた違った物語になっています。どちらも素敵なのですが、絵本はより一層ももちゃんの心情の奥行きが深く伝わってきて、大人が読むと自身の経験を反芻することもできそう。
また、わたしの読後感を裏付けてくれたのが、絵本版とアニメ、両方の作画を手がけた、アニメーション監督で絵本画家のいまばやし ゆかさんの絵本発売記念でのインタビュー。
「アニメーションだと観る画面のサイズで大きさや印象が変わりますし、さわれませんが、絵本の場合はまるで猫に『出会えた』ようなサイズ感ですし、実際に触れることもできますね。絵本には絵本ならではの良さがあると思います。
デフォルメを控えリアル感を大切にし、さわりたくなるような絵柄にしたくて、猫の毛1本1本も丁寧に描きました。柔らかい色合いなのは、ぬくもりを感じられるものにしたかったからです。悲しくて苦しい場面でも、どこか包まれているような感覚を持てるように心がけて色を使いました」
いまばやしさんが工夫された柔らかな色合いやタッチが、絵本に触れた子どもだけでなく、一緒に読んだ大人の心にもぐっと刺さるような「切なさやあたたかさ」を生んでいるのがわかります。
やさしくて切ない『ももちゃんのねこ』、わたしとしては子どもに限らずぜひ大人にも読んでほしい! 気になる方はぜひ手に取ってみてください。