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本当は大人も不安…。親として時代と向き合う私たちへのメッセージとは【井桁容子先生の「子どもの不安」に寄り添う育児】#4

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新型コロナの影響を受け続けている2020年。『kufura』では“子どもの心の不安”について乳幼児保育実践研究家の井桁容子さんにこれまで3回に渡ってお話を聞いてきました。最終回は、”大人の心の不安”についてお伝えします。

これまで、「子どもの“お腹が痛い”を疑わないこと」や「親の方からスキンシップをすること」で子どもの不安を解消する方法を教わりました。

では、コロナ禍やそれ以外の出来事でも、大人自身が不安を抱えてしまった時、どうしたら前向きになることができて、そして、親子で笑顔で過ごせるのでしょう。井桁さんからのメッセージをお届けします。

心配しすぎるのは自分にとっても子どもにとっても逆効果

いまだ(2020年8月現在)、各地でクラスターの発生が報じられることもあり、特に未就学児の子どもを持つ共働きの家庭では心配事も多いのではないでしょうか。

筆者の周りでも子どもの事を案じるあまり疲れきっていることをLINEグループで吐露するお母さん達がいます。

 集団の目の中で見えないいじめに遭うようかのように、自分の身だけが細っていってしまうような考え方は、子どもにとっても自分にとってもよくありません

精神的にも身体的にも弱るということは、免疫力も下がってしまうでしょう。お母さんが、家族が感染症にかかりやすい畑を耕しているようなものです。

どうして自分はこんなにやつれてしまっているんだろう”と自分を俯瞰して見ることができる、そういう知性や理性が試されている時です。

不特定多数の人といい関係が結べなくてもいいので、普段からよく関わりを持っている人達の間では、“お互いをわかりあおう、お互い様だから大丈夫だよ”と言葉にできる関係を広げていく働きかけができるといいですね」

“〇〇のせい”にしている人は、成長できない⁉

これまでの暮らしよりも除菌や消毒に気を遣う日常に疲れてしまったり、やりすぎ!?と思う場面に遭遇することも……。

 「“絶対感染させてはいけない”と敏感になっているお母さんは、世間体などの外圧を意識しすぎているところがありますね。そうやって防御しすぎてしまうと、起こっていないことで妄想が働いてしまい、何もかも怖くなってしまう。

親自身の安定感が足りていない……、そんな時こそパートナーが“家族みんなで幸せに笑っていれば何とかなるよ”と言ってくれたりすると、フッと心が緩むはず。でも、そういう夫婦の会話も足りていなかったり、お互いに責任転嫁するような関係だと、家族という単位としてとても弱くなってしまいます

相手はそこまで思っていないのに、勝手に自分で何でもしょいこんで“私ばっかり!“という人と、いつも責任転嫁する人には共通するところがあると思います」

昔を振り返ってばかりいても、未来はない

「仕事に置き換えたら、“でも、だって”と何かのせいにする人は成長しませんよね。仕事を持っている方も多い『kufura』の読者の皆さんは、職場でそういう人に出会った覚えがあるのでは? 今回のコロナ禍でも“コロナのせい“と嘆いたりコロナ以前を振り返ってあの頃はよかったと言っていることに未来はないのでは……

 働く母としてキャリアを積み重ねた井桁さんならでは指摘。新しい生活様式で不自由なことがあると、つい「コロナじゃなかったら……」と時代を責めがちですが、確かにそうなると気持ちも家族の雰囲気も沈みがちです。

心配事がある時こそ笑いを生む行動を心がける

心配したり、悩んだり、落ち込むことが多いこの状況をどんな風に過ごすか、井桁さん自身も実践しているのは“意図的に“笑って過ごすこと。

「コロナなんて大丈夫!と笑って楽観的に過ごすということではないんです。手を洗う・換気をするなど対策は十分にして、コロナにかかったときの準備もきちんとして、そういう救急箱をちゃんと用意した上で、あとは笑って過ごした方がいい。笑うことで免疫力が上がるし、楽しむ余裕がある時こそ新しいことに気づけるチャンスです。

笑えなくなったら、映画でもお笑い番組でも、笑いの種を自分から探してみてください。私は家でテレビを観る時だけでなく、映画館で映画を観るときでも、わざと声を出して笑うようにしています。夫には驚かれるけど、そうすると、隣の人も声を出して笑えるんですよね。

子どもと親のいい話、笑える話を集めるのもいいですね。私が保育士をしていたころの保護者といまでもつながっているので、“息子がこんなこと言ってました、あんなことをしました”という話をよく聞かせてもらいます。

リラックスした気持ちにもなりますし、子育ては大変なことだけではなく、子どもから生きがいや幸せな気持ちをもらっていることにも気づけると思いますよ」

どうしても深刻に考えて落ち込んでしまうときは……

そうは思っていても、笑顔を作る余裕すらなくなってしまったら……。

「うんと落ち込んでいるときは、這い上がるときに誰かにロープを降ろしてもらわないといけません。そういう時に、“泣いても笑っても同じ状況なら、笑おうよ”と言ってくれるお友達がいると心強いですね。

困った状況でも笑って過ごすことが苦手なタイプの人もいると思います。そういう人は、得意な人に“どう考えると、そうなれるの?”と聞くところから始めてはどうですか」

学力よりも大切な、どんなことにも対応できる理性と知性

「この状況と向き合う本当の正解は、いまを無駄にせずよく生きようとすることだと私は思っています。いまを乗り越えられたとしても、また違うウイルスが出てきたり、地震や台風など自然災害も含め明日何が起こるかわからないからです。

そのために必要なことは、出来高で良し悪しを計るような学歴や学力ではありません。

本当の理性と知性を使って何が起こっても対応できる準備と覚悟をしたうえで、よく生きようとする。そんな親の姿を子どもたちも見ています

 

働く母であり、そして42年間保育士として多くの保護者の不安や悩みに寄り添ってきた井桁さんならではの説得力のあるお話でした。

自分が大変な状況になったとき、プラス思考になれずシリアスに悩んでしまう人もいると思います。相談したくても近くに頼れる人がいなかったり、人に頼るのが苦手だったり……。そんな時、井桁さんのお話が心に届いて、元気を取り戻すきっかけになればと思います。


 

【取材協力】

井桁 容子(いげた ようこ)

東京家政大学の保育施設で42年間保育士として勤め、2018年より非営利団体『コドモノミカタ』代表理事に就任。『すくすく子育て』出演や『いないないばぁ』(ともにNHK Eテレ)の監修、著書「保育でつむぐ子ども親のいい関係』(小学館)等、様々なメディアを通して子どものありのままを大切にする関わり方を伝えている。コロナ禍でも、自身の団体のオンラインワークショップやオンライン講座、YouTube出演等で精力的に活動中。

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