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子どもの「お腹が痛い」を疑わないで!親が取るべき態度は…【井桁容子先生の「子どもの不安」に寄り添う育児】#1

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コロナ禍で普段の暮らしは一変し、秋を迎えようとしている今も世の中には緊張感が漂っています。

これまでに経験したことのない事態の中、皆さんのお子さんの行動や情緒に不安定なところは見られませんか?

全国的にも、コロナ禍で心身のバランスを崩しているお子さんがいると報じられていて、大人だけでなく、子どもにとっても“いつもと違う”という感覚がストレスになっているようです。

そこで、『kufura』に度々登場してくれている乳幼児教育実践研究家の井桁容子さんにオンラインで取材をしました。

子どもの心が不安定になったとき、親はどうすればいいのでしょうか―――。

42年間、0~3歳児向けの保育施設で子どもの保育と研究に携わり、言葉でうまく表現できない乳幼児の気持ちを汲み取ってきた井桁さんならではの『子どもの不安に寄り添う育児講座』、第1回は子どもの心が不安定になっているサインについてお伝えします。

サイン1:嫌いな食べ物が出てきた時や園に行く前にお腹や頭が痛くなる

「心に不安を抱えると、“お腹が痛い”とか“頭が痛い”とか、どこか痛がる子は多いです。大人とそんなに変わらないと思いませんか? 神経を病むと胃が痛くなることがありますよね」(以下「」内、井桁さん)

例えば、子どもが目の前に嫌いな食べ物を出された時、急に“お腹が痛い”“頭が痛い””と言い始めるのは、”嫌いな食べ物”というストレスがかかるから。そうすると、血流にも影響があり、人間の体はどこかが痛くなるようにできているそうです。

「“お母さん(お父さん)にとっては平気なことでも、ぼくにとっては命に関わることです!”という心と身体からのサインなんです」

井桁さんが2歳の子どもを保育していた時のことです。

「子どもが痛がっているのに、お母さんが大したことないと思って“そんなに痛くないんでしょ?”と言ったら、その子が“ママはぼくじゃないのに!”って、怒ったんです。

私は、そのやりとりの横にいたので“その通り! 〇〇くんの言う通りですよ、お母さん!”とそのお子さんに向かって拍手しましたね(笑い)。

本人が痛いと言っているんだから、痛いんですよ。それを大人が自分の物差しで決めてしまうのは失礼な話ですね」

“お腹が痛い”を疑うと、子どもは何度でもお腹が痛くなる

筆者の小学2年生の息子も休校明けにお腹が痛いと言って学校に行きたがらないことが何度もありました。思いあたる節があって耳が痛い……。でも、いざ学校を休むとケロッと元気になるんですよね。

「子どもの表現を疑う大人ってね、根本的に子どものことを疑っているんです。

お腹が痛いと言っているのに、本当は痛くないんじゃない?と疑って、元気になったら、やっぱり痛くなかったじゃないと疑う。子どもの心とつながっていないことの証拠です。

園や学校を休んだら、そのままずーっと怠け者になってしまうんじゃないかと思っていませんか? そんなことは、断じてありませんよ。

お母さんやお父さんが、自分がお腹を痛がっていることを心配して、治ったらほっとして“よかった~”と言えば、“ちゃんとぼくのことを信じて心配してくれている!”と安心して、頑張る気持ちになれるし、困ったことがあったら助けてもらえると確信できるので落ち着きます。

疑っていると、子どもはわかってもらえていない思いを一人で抱えて、更にいろいろなところが痛くなってしまったりします。これは、仮病ではなく、本当に痛いんです」

どおりで! 我が子の“お腹痛い”が続いて遅刻早退をしていたころ、「家ではすごく元気なんですよ!」と私が担任の先生に言うのを聞いて、子どもは“ママが心配してくれていない”と、訴えを繰り返していたのかもしれません。

サイン2:きょうだい喧嘩が激しくなる。園や預け先で乱暴な行動をする

「わかってもらえない気持ちを大人に向けられない分、身近な人に向けてしまうということがありますね。

いきなり目の前の子を突き飛ばしたり、わけもなくおもちゃをひっくり返したり、人の物を次々と持っていってしまう。他にも、噛みついてしまったり、とにかく友達につっかかるような行動がみられることがあります。

そんな時は、園全体や保育者側でしっかり受け止めてあげるようにしていました。

“何かすっきりしたいことがあるんだね~。先生とふたりきりで散歩に行こうか”と行動を否定するのではなく、温かい心でていねいに接するようにしてあげると、不安やストレスがすーっと抜けていきます。

“お花が綺麗だね~、空って広いね~“なんて言いながら、集団から離れて子どもと気持ちのいい時間を過ごすと、”ママがね……”“パパがね……“と不安に思っていたことをぽろっと話してくれたりするんですよ」

井桁さんがそこで聞いた子どもの思いを、後で子どもがいないところで保護者に「おうちで何かありましたか?」と伝えると、やはり保護者が気付いていないところで、家族に言えない気持ちを子どもが抱えていたことがわかったそうです。

「周りの大人は、子どもが乱暴な行動をとるときは、それを困った行動と捉えて怒ったり抑えようとするよりも、子どもが何かを伝えたい表現だと受け止めることが大切です。“何をしたかったの?”“何か困ったことがある?”と尋ねたりしながら、子どもの気持ちをわかろうとすることを繰り返すことで、子どもは“暴れなくてもわかってもらえる”と安心し、その大人を信用するようになります。

大人に余裕がなくて子どもの気持ちを抑えつけて威圧的な態度でいることは、流れる水を大きな石でせき止めているようなもの。大人のストレスが大きな石となって子どもの感情の出口をふさいでいるから、そのうちせきをきって他のところで出てしまうというわけです

休校期間中はきょうだい喧嘩が激しすぎて「喧嘩しないで!」と何度も声を荒げた私……。外で体を動かせないストレスのせいで子どもたちがいら立っているのだと思っていましたが、私が子どもたちの感情を抑えつけて窮屈な思いをさせていたことに気づかされました。

サイン3:園や学校でいつもと様子が違う。ぼーっとしていたら要注意

「お腹が痛いとか乱暴になってしまうなど外で発散するタイプの子もいれば、自分の内側に抱えきれない気持ちが向いてしまって、自分の心を痛めつけてしまう子もいます。

そういうお子さんは手がかからずおとなしくしているので、先生たちが忙しくしているような集団生活の場では気づいてもらえないことがあります。

保育者としては、子どもが何も言わない状態は何か問題を抱えていないかと、目と気持ちを傾けるように心がけていました。

ある時、スタッフの多くが“〇〇ちゃん、朝から何となく様子がおかしいね”と話していたことがありました。実は前日にお母さんが大けがをしていたんです。お迎えに来たお父さんから初めて事情を聞いて、お母さんを心配して小さな胸を痛めていたんだとわかって、納得したということがありました。

その時は、お父さんに子ども達を不安にさせないためにはどうしたらいいかと相談されたので、”お母さんは怪我をしたけど、病院でちゃんと治してもらえるから大丈夫。大人達はいろいろあって、ちょっと忙しくしているけど心配いらないよ”と安心させてあげてくださいと伝えました。

子どもが、理由が分からず不安になってしまうと、その子自身が怪我をしてしまったり、お友達にイライラを向けて怪我をさせてしまったり、被害が広がるようなことになりかねません。心配してもしなくても時間が解決してくれることについては、子どもは安心の中にいた方がいいですね。大変なことがあった時こそ、まずは、子どもの安心を確保することが大切です

”大変なことがあった時こそ”という井桁さんのお話が、いまのコロナ禍の状況と重なります。自分自身も大変な上に、不安に思うことが次々に耳に入ってくる日々の中、そこに子どもを巻き込まないで暮らせているだろうか、振り返るきっかけになるお話でした。

子どもが小さいうちは、自分の言葉で上手に気持ちを表現できないものです。だからこそ、そのサインに気づいてあげたいですね。

 

次回は、子どもに心の不安のサインが見られたとき、親はどんな関わり方をすれば安心を確保してあげられるのか、井桁さん自身の子育てのエピソードと共にお伝えします。


 

【取材協力】

井桁 容子(いげた ようこ)

東京家政大学の保育施設で42年間保育士として勤め、2018年より非営利団体『コドモノミカタ』代表理事に就任。『すくすく子育て』出演や『いないないばぁ』(ともにNHK Eテレ)の監修、著書『保育でつむぐ子ども親のいい関係』(小学館)等、様々なメディアを通して子どものありのままを大切にする関わり方を伝えている。コロナ禍でも、自身の団体のオンラインワークショップやオンライン講座、YouTube出演等で精力的に活動中。

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