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親が自分を丸出しにしていませんか?家庭が「子どもの心の安全基地」になるために…【井桁容子先生の「子どもの不安」に寄り添う育児】#3

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子どもが心に不安を抱えたとき親はどんな風に接したらいいのでしょう。特に、自分の気持ちを上手に言葉で表せない未就学児の場合は、SOSを察知するのが難しい場合も……。

そんな“子どもの心の不安”について乳幼児教育実践研究家の井桁容子さんに聞く本企画。

前回の親子のスキンシップに続き、家庭が子どもの心の安全基地であるためにできることをお伝えします。

親子共々家で過ごす時間が長いと、お母さん役・お友達役・先生役などいくつもの役割をしなければいけない気持ちになってしまいますが、井桁さんが教えてくれた親の役割とは……。

家庭の役割は実はシンプル!いくつもこなそうとしなくて大丈夫

「家庭の役割とは、生活の基盤を作ること。例えるなら、温かいお布団の役割と、お腹を満たしてくれるお台所の役割だと意識してみてください。

子どもは安心していないと、どんなごちそうでも美味しいと思えないし、ぐっすり眠ることもできません。美味しくご飯を食べられて、気持ちよく眠れて、疲れたら抱きしめてもらえて……。お父さんとお母さんは、そういうことに配慮してあげるだけでいいんです。

心や知的な育ちは、外の世界での体験が必要。家庭の中だけでやろうとせず、外からもらうと考えて」

「子育てというのは、お父さんとお母さんだけでしてはいけない」と言いきる井桁さんのお話に、思うように外出したり人と会えない状況の中、母だけで色々やろうと頑張りすぎていた自分から解放された思いです。

イライラしてしまうこともあり、子どもたちの布団にも台所にもなれず、逆効果だったことに気がつきました。

子どもの前で大人の不安や不満を好き放題に言ってない?

「夫の前では女性であっても、子どもたちは“お母さん”としてしか見ていません。お父さんについても同じです。自分を丸出しにして子どもと接する親もいますが、子どもにとってはお父さんお母さん以外の何者でもないのです。

ありのままの自分でいることはとても大切なことだけれど、そのことと地を丸出しにすることは違います。テレビに向かって文句を言ったり誰かの悪口を言うのは美しくないですし、子どもはちゃんと聞いていますよ。子どもの前で“これはどうかと思うな~”と意見を言うくらいにとどめたほうがいいですね。

夫婦喧嘩も気を付けて。子どもの前でうっかり喧嘩をした場合は、ちゃんと子どもの前で仲直りしてみせるのが大事です。裏でコソっと仲直りしたり、いつの間にか元通りもよくありません。子どもはね、“あの喧嘩はどうなったんだろう”“この家族はこれで終わってしまうんじゃないか”と、とても気にしていて、それが“お腹痛い“につながってしまうこともありますよ

新型コロナに関するニュースを見ては不安を遠慮なく口にして、夫への不満で険悪な雰囲気を出してしまったり、普段の生活に思いあたる事ばかり。私の方がお腹が痛くなってしまいそうな井桁さんのお話に、子どもの気持ちがわかったような気がしました。

子どもにとって、父であり母である責任を果たすには……

「お母さん(お父さん)として見られていることに誠実に向き合って、子どもが自立するまではその役割を演じてあげる。それが親としての責任のひとつかもしれない、と私は考えています。

子どもよりも立派でいようと虚勢を張ることが親を演じることではありません。

人として足りない部分や嫌な部分、苦手なことがあってもいいんです。

“なんでも食べなさいって言ってるけど、お母さんもにんじんが嫌いなの。少しずつ食べられるようにするね”

“お母さんにも上手にできないところがあって、すぐ怒っちゃってごめんね”

“お母さんは時々乱暴な言い方をしちゃうから、そういう言い方をしちゃった時は教えてね”

“いい人であろうと努力してます!”という事に関しては頑張ってもいいし、子どもに伝えても大丈夫。

大人でも失敗したり間違ったりすることがあると見せることで、子どもを追いつめなくて済むし色々な選択肢の中で生きていいと教えることができるんです」

子どもが心の不安を話せるシチュエーションは?

「トランプや家族で関われるゲームをしたり、一緒にソファに並んでテレビを見る、お風呂にはいる、美味しいご飯を食べる、お布団にはいって寝るなど、どんな状況でもいいけれど、子どもの心が安定して子どもの心を抱きしめてあげられるような雰囲気をおうちにいるときに作ってあげましょう。

もし余裕がなければ、10分でも15分でもいいので、目の前にいるお子さんのことだけ考えて他のことは全部捨てる。そうすると大人の頭と心が隙間だらけになったことを感じ取った子どもから、やっと“あのね、お友達がね……”“学校でね……”と言いたかったことがポロポロと出てきます。

心配事が言葉になって出てこなくても、スキンシップも含めて安心できる関わりの中にいれば心配事はだんだんと抜けていくので大丈夫。無理に聞き出そうとされると、身構えてしまうのは、大人も同じですね」

自粛期間が明けて学校や習い事や仕事も通常運転に戻ったら、これまでの日常がとても忙しく感じてしまい、目の前の子どものことを考える余裕がなかったかもしれません。井桁さんの言葉をお借りして、“理屈じゃなくホッとする家族の形”を意識しなければ!

幼いうちから、子どもの心のメンテナンスを意識する

「世の中には、様々なタイプの人がいますから、人とぶつかってストレスを感じるのは当たり前。幼くても、集団生活の中では、色々な気遣いをしているもの。でも、家庭でも同じことを求められてしまうと、自分の心をメンテナンスする場所がなくなってしまいます。

”お父さんとお母さんに合わせないとこの家にいられない”と子どもが思ってしまうことは、自分の気持ちを抑え込んで人に合わせないと生きていけないと教えているようなもの。抑え込んだ自分を抱えたまま過ごすと、将来的に自分に自信のない打たれ弱い人になってしまいますよ。私は、そういう子どもや若者、大人をたくさん見てきました。

子どもが心配事を抱えているのに言えない状態しておかないで、“自分の気持ちは、思ったままに大人に伝えても大丈夫なんだ!”と思える環境を『意図的に』作ってあげることが、子どもの安心を確保するためにはいちばんです」

新型コロナウイルスによる死亡者数について日々報道されていますが、日本では自ら命を絶つ20歳以下の人数が、先進国の中でも多い水準にあることを井桁さんは心配しています。新しい生活様式に順じて暮らすことはもちろんですが、我が子が自分自身を大切にしながら生きていける心の基盤を作ることを、大切にしていきたいです。

 

3回にわたり”子どもの心の不安”についてお伝えしてきました。コロナ禍での暮らしで、大人だって今までにない不安を抱えていると思います。

次回は、そんな大人に向けて、井桁さんから前向きになれるメッセージをご紹介する予定です。


 

【取材協力】

井桁 容子(いげた ようこ)

東京家政大学の保育施設で42年間保育士として勤め、2018年より非営利団体『コドモノミカタ』代表理事に就任。『すくすく子育て』出演や『いないないばぁ』(ともにNHK Eテレ)の監修、著書「保育でつむぐ子ども親のいい関係』(小学館)等、様々なメディアを通して子どものありのままを大切にする関わり方を伝えている。コロナ禍でも、自身の団体のオンラインワークショップやオンライン講座、YouTube出演等で精力的に活動中。

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