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思春期になった親子を助ける!「スキンシップは大人から」のすすめ【井桁容子先生の「子どもの不安」に寄り添う育児】#2

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乳幼児教育実践研究家の井桁容子さんに、子どもの心の不安について聞く本連載。

前回は、子どもが心に不安を抱えているとき、どんなサインを出すのかお伝えしました。今回は、親として子どもの心の不安に寄り添うためにどんなスキンシップをすればいいのか教えていただきました。井桁さんの42年間の保育士経験に加え、思わず目頭が熱くなるご自身の育児エピソードも交えてお届けします。

他人と距離をとらなければいけない今だから、家庭でのスキンシップを見直して

コロナ禍で、保育園の先生やお友達との距離感に気を使う家庭も多いと思います。そんな状況の中、井桁さんが教えてくれたのは、家庭でのスキンシップの在り方について。

「園の先生は、保護者からのクレームやクラスターを起こしたら大変という緊張感と、子ども同士の関わり合いの保障や、保育士と子どもが触れ合う保育の板挟みになっています。

集団の保育の場は、家庭では味わえない開放感や多様な関わりができる場所と考え、一方の家庭では密は避けられないので、いつも以上に、お子さんと関われるといいですね」(以下「」内、井桁さん)

筆者の子どもたちは小学4年生と2年生なので、学校では密を避ける指導をされていますし、もちろんマスクも必須。井桁さんのお話を聞いてから、「家族は密になってもいいもんね。密、密!」とくっついてみたら、その言い方を真似してよくくっついてくるようになりました。“くっついちゃいけない”という感覚を刷り込まれて不安になっていたのかもしれません。

スキンシップは、大人から求めることで子どもは安心する

スキンシップは、子どもに求められるからやるというよりも、大人側に“私が生きていく上であなたは重要な存在で、それをあなたに伝えないと元気が出ない。だから、あなたに触るということは、私のためにやっています”という意味が込められているといいですね。

大人が子どもを自分の思い通りにしようと思っているわけではなくて、“いつもあなたのことを心配しているよ、忘れていませんよ”という信号を、触れるという行為で表現することに意味があります」

筆者が思っていたスキンシップとは真逆の意味合いに、目からウロコです! 子どもに求められるからとか、落ち着かせてあげるために抱きしめていただけで、「私自身が元気になるため」「あなたが大事だよ」というメッセージは届けられていなかったかも……。

「子ども自身が、“自分が生きている意味は、お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんにとって愛おしい大切な宝だ”と無意識に思えるように、スキンシップを通して自分は必要とされている存在だということ感覚を通して伝えておくことが大切。

“いい子だから大切にされる”のではなく、“失敗してもダメなところがあっても丸ごと無条件に大切”だと思われている感覚が、大変な状況にある時の心の支えになるんですよ。

それがないと、思春期に抱える悩みの種類によっては、乱暴に自分を傷つけるようなことをしてしまいます。悩みを抱えているけれど、親にだけは言いたくないというのが思春期の特徴ですからね」

小さい子どもでも、“自分は必要とされている”という実感を持つことが大切なんですね。必要とされていない不安感が募って思春期を迎えないように、井桁さんが教えてくれたのはスキンシップを儀式化して習慣にすること。

スキンシップを儀式化してどんなときも触れ合いを止めない

例えば、「いってらっしゃい!」の時に必ずハグをするとか、肩をポンポンするとか、ほっぺたをギューッと挟むとか……。おうちの雰囲気にあったもので構わないので、肌にちゃんと触れることをちっちゃい時から儀式にしてしまいましょう。

そうすれば、腹が立つことがあっても、“こいつめ~!”と思ったときでも、いつもの儀式をやらないとなんだか気持ちが悪くて、やり続けることができますよ。それに、大きくなっても途中から子どもが嫌だと言わないものです。

井桁さんも、ご自身の子育ての中で“スキンシップの儀式化”を実践していたそうです。

「息子が保育園時代、私も保育者としてバリバリ仕事をしていましたから疲れすぎて腰が痛くなってしまうんですね。なので、抱っこはお父さんの役目でした。

ある時、“最近仕事が忙しくて全然子どもに触れていないな~”と思って“ちょっと抱っこしたいから、抱っこさせて”と4歳の息子に言ったんです

最初は“お母さん、腰が痛いでしょ?”と申し訳なさそうな顔したんですが、それでも私が“大丈夫、大丈夫、抱っこしたいから!”といったら、“そうか……”と、遠慮がちに抱かれてきました。いつの間にか、こんなに重たくなっていた……とドキっとしましたし、本当は私に抱っこしたほしかったんだと気がつきました。

それからは、仕事が忙しくなればなるほど、“抱っこさせてくださ~い!”“抱っこしたくなっちゃった。お願い!”と言うようにしました。

そしたらね、小学生になっても“しょうがないな~”なんて言いながら膝に乗っかってくるんですよ。いつまで続くのかなと思って、中学生のころに試してみたんです。思春期になって息子が何を考えているかわからないと思う日々だったのですが、

“最近、とんと坊やを抱っこしてなかったわ。なんだか坊やを抱っこしたくなっちゃった”っていつものセリフを言ってみたらね、膝に乗ってくるんですよ、本当に(笑い)。

今度は高校生になってからいたずら心でまた試してみたの。いつものセリフでね。そしたら、ニコッと笑って、“やれるものならやってみろ”って180㎝近い息子がどん!と私の膝に座ると、息ができないんですよ! “ごめんなさい、もうしません!”って言いました(笑い)。あれが最後でしたね」

親だけには言えない、そんな悩みを持つようになっても…

リモート取材だったので、井桁さんは「今日は息子が家にいるの。聞こえちゃったかしら」と笑いながらご自身の子育の歴史を語ってくださいましたが、求められることに終りが来るんだな~と寂しい気持ちも……。

「抱っこするにしても、ハグをするにしても、大人から頼めばいいんです。ダメなら“せめて握手でもどうですか”って。“ママ、一緒に寝てくれる?”と子どもが聞いてくる前に、“一緒に寝たくなっちゃった。一緒に寝てもいい?”とかね。

子どもって、ある年齢になると辛いことがあっても親に言えないことがあったりします。特に思春期に抱える悩みや不安というのは、種類によっては命に関わるくらいのことなのに、親にだけは言えない……。だから、触れたところから悪魔が逃げていくおまじないのように触れることをやめないで」

 

他人とは距離を取らなければいけないコロナ禍で外での触れ合いが制限されてしまう今だからこそ、家庭でのスキンシップを十分にとってあげたいと思いました。

そして、スキンシップの意味合いや継続することの大切さを知った私で、子どもとの触れ合いをリスタートしたい気持ちでいっぱいです。

次回は、スキンシップ以外にも、家庭が子どもの心の安全基地になるためにできることをお伝えします。


 

【取材協力】

井桁 容子(いげた ようこ)

東京家政大学の保育施設で42年間保育士として勤め、2018年より非営利団体『コドモノミカタ』代表理事に就任。『すくすく子育て』出演や『いないないばぁ』(ともにNHK Eテレ)の監修、著書「保育でつむぐ子ども親のいい関係』(小学館)等、様々なメディアを通して子どものありのままを大切にする関わり方を伝えている。コロナ禍でも、自身の団体のオンラインワークショップやオンライン講座、YouTube出演等で精力的に活動中。

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