産後うつを早期発見して、周囲がケアし、治療が必要な人を治療につなげられれば、重症化も防げるそうです。そのための本人や周囲はどのようなことをしたらいいのでしょうか。
前回に続き、産後うつを予防啓発するリーフレット『ママから笑顔がきえるとき』を作成した文京学院大学(東京)で行われたセミナーでの取材から、解決法を探ります。
早期発見で重症化を防ぐ!要注意時期は「産後2週間から6カ月」
広尾レディース院長の宗田聡さんは、「産後2週間での健診が効果的」だと話します。実は産後2週間は産後うつを発症しやすい時期でもあるからです。2週間から6カ月までが、要注意時期でもあります。
「1カ月健診は、主に母子の身体的なチェックが行われ、眠れない、ちょっと元気が出ない、疲れるといった母親の訴えが、これまでスルーされることが多かったのです。
しかし2017年度から厚生労働省が2週間健診の費用助成を始めています。これは母親の心身の状態を確認して、産後うつのケアにつなげるという意味があります。そこで早期発見できれば、重症化を防げるので、健診を受けるようにするといいでしょう」(宗田さん)
その際に使われるのが『エディンバラ産後うつ病自己質問票』です。「はっきりした理由もないのに不安になったり心配した」「不幸せなので泣けてきた」など10の質問項目にこたえていくもの。直接診断につながるものではないのですが、点数によって産後うつの可能性があるかどうかのふるいわけができるそうです。
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母親は「すべてを背負わない」、周囲は「母親がフリーになる時間」を
null宗田さんは、そういったケアをした上で、産後うつを軽減、予防する方法について次の項目について言及しました。
なにもかも完璧にしない。できることだけをできる範囲でする。
・夫やパートナー、友人や家族の協力を求めることをためらわない。
・できるだけ睡眠をとる。子どもの昼寝の時間を活用し、自分の睡眠不足も解消する。
・パートナーとのデートや、友人との外出を計画して、自分自身の時間を持つ。
・子どもが誕生した後の生活はできる限りシンプルにする。この時期は、必要でない限り、重大な決断をしたり、生活を変えるべきではない。
「赤ちゃんと24時間ずっと一緒にいるのはきついです。周囲の人は、母親がフリーになれる時間を作ってあげてください。そして本人はすべて完璧にしようと思わず、周囲に協力を求めることが大切だと思います」(宗田さん)
産後うつは「誰にでも起こりうること」と認識しよう
null助産師で文京学院大学保健医療技術学部准教授の市川香織さんは、全国にある『子育て世代包括支援センター』にいる保健師や助産師、ソーシャルワーカーに相談することをすすめています。
「産後うつは私には関係ないと思わずに、誰にでも起こりうるのだと認識することです。妊娠中、産後の生活は想像している生活とは違うことは当たり前です。
できれば妊娠中から産後ケア、子育て支援情報の収集をしておくのもよいと思います。相談できる助産師や保健師、母親のサポートグループなどを頼るのもひとつの方法です」(市川さん)
できれば産後3カ月くらいまで、父親の育休取得や祖父母も含めた家族でサポート計画を立てておくとよいようです。家族の手が足りない時は、外部のサービスを利用するのもいいでしょう。産後1カ月健診で外出のOKが出たら、赤ちゃんを連れて外に出ていくようになれれば、孤育てのリスクも減ります。
人生に1度か2度のエポックメーキングなイベントを上手に乗り切るためにも、妊産婦、ママを孤立化させないように、周囲も見守りましょう。
リーフレット『ママから笑顔がきえるとき』
文京学院大学が、妊娠中のママとその家族を対象に、「産後うつ」に関する基礎知識、産前産後の生活や気持ちの変化、対処法などを解説。
公式サイト:https://www.u-bunkyo.ac.jp/faculty/health/2017/11/20171122.html