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「昼の子も夜の子もみな平等」夜間保育園…偏見乗り越え親子を支える日常

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雨にもかかわらず、ベビーカーに子どもを乗せてやってくる親子連れの列――。母親たちの間で立ち見もでるほど話題を呼んでいる1本のドキュメンタリー映画があります。東京・東中野の『ポレポレ東中野』を皮切りに、大阪、名古屋、仙台などで順次拡大上映されている『夜間もやってる保育園』(監督・大宮浩一/東風)です。

「夜間保育園って知ってる?」と聞かれて即座にこたえられる人は少ないかもしれません。
夜間保育園とは、文字通り夜間もやっている保育園のこと。現在、夜間保育園は全国に80カ所はあり、認可も受けた“最長で24時間預かってくれる”保育園です。

都内で唯一、24時間保育を行なう『エイビイシイ保育園』(東京・新宿区)の片野清美園長は、夜間保育園のことを世の中に周知したくて同映画を企画したといいます。

これから保育園の申し込みが始まる大切な季節。女性の働き方が多様化し、家庭の事情も画一的ではないこの時代。どうしたら親も子も生きやすくなるのか……。映画の舞台になった『エイビイシイ保育園』でお母さんたちに独自の取材をしながら夜間保育園について考えました。

上記写真提供:『エイビイシイ保育園』(東京都新宿区)(C)夜間もやってる製作委員会

迎えは夜遅くても…「ふくろうさん」の子どもたち

「はい、お帰りなさい!」

22時過ぎ、夜間保育専用の入り口のチャイムが鳴ります。あわただしく迎えにやってきた母親とそれを迎える保育士。筆者が保育園を訪れたこの日、部屋の中には、0歳児を含む30人の子どもたちが就寝中。お迎えが深夜になる“深夜組(ふくろう)”さんの子どもたちは、19時半には入浴を終え、21時ともなると真っ暗な部屋の布団の上で寝息を立てているそう。

4才になるマサオくん(仮名)の母親、アキさん(仮名・30才)は美容師。午後8時がお店の最終受付なので、その時間からカットやカラーに入り、さらに後片付けをしていると22時を超えることもしばしば。

マサオくんは、生後半年からこの保育園に通っています。夜間まで預けて働いていると、友人たちからは「そんな時間まで預けて働いているなんて、子どもがかわいそうじゃない?」という声もあると言います。

遅いお迎えも「子どもの日常」…仕事のない2日間は親子べったり

アキさんは20歳からずっと同じ美容院で働き、そこで産休も取得したそうです。離婚後にシングルマザーとなったときも、迷わずに同じ店で働くことを選びました。

長くこの生活スタイルでやってきたので、保育園で夜眠りにつき、お迎えでいったん起きて家に帰る生活がマサオくんにとっては日常。週に3、4回、寝ぼけ眼のマサオくんを自転車に乗せてアキさん親子は帰宅します。

土・日はマサオくんを埼玉の実家の両親に預けて仕事に専念。店の定休日に加え、もう1日休みが取れるので、月・火はマサオくんとべったり過ごします。

店の人たちはマサオくんのことを気遣い、「早く帰っていいよ」と早帰りをすすめてくれるといいます。

「早くお迎えに行けた日は、もう大喜びで。その喜んでいる顔を見ると、少しでも早く迎えに行ってあげたいですね。たまに“ママと一緒に寝たいなあ”と言います。この子は、本当は一緒に寝たいはずなのに、彼なりに日常を受け入れてくれているのでしょうね。20歳から続けてきた仕事ですから、シングルになったときも、ほかの仕事をするという選択肢はなかった。今の状況で頑張っていくしかないですね。保育園が、母と子の気持ちをわかってくれて、長い時間預かってくれるのは本当にありがたい」(アキさん)

アキさんは眠そうにしているマサオくんにレインコートを着せ、長靴を履かせ、雨の降る中、自転車で帰路つきました。

「水商売?」「育児放棄」偏見をはねのけて必要な保育を

通常の認可保育園はおおむね朝8時から18時くらいまでと定められていますが、『エイビイシイ保育園』では11時から22時までの11時間が基本時間。延長保育を利用して最大24時間保育が可能です。国は夜間保育園を認可しましたが、開園時間や保育士所定数などに厳しい規定を設けています。

『エイビイシイ保育園』も、2001年に社会福祉法人格を取って認可保育園になりました。前身の『ABC乳児保育園』時代を含めると、歴史は34年。定員は90人で0歳児は15人定員ですが、多いときには深夜組に10人の0歳児を預かることもあるそうです。
取材の日も、昼の部の保育士と深夜組の保育士が入念に申し送りをしている姿が見られました。

開園当初は、「水商売の人が多いんでしょう?」「夜遅くまで子どもを預けているなんて育児放棄だ」……片野園長の元にはそんな批判もあったといいます。

「周囲の偏見はすごかったですね。園のお母さんたちの仕事はさまざまで、国家公務員や医者、看護師、介護士など、7割がフルタイムで働く母親です。みんな自分の仕事に生きがいを感じています。近くに祖父母がいて育児を助けてくれる、お金に余裕があって長時間ベビーシッターを頼める人はいいんです。しかしそれができない親もいる。必要としている親と子に必要としている保育をしたい、というのが私たちの願いです」(片野園長)

長時間保育に関しては、筑波大学大学院の安梅勅江(あんめ ときえ)教授の研究論文でも「子どもの発達状態」への影響は「育児の形態や時間帯ではない」とされ、むしろ家庭における育児環境が大きく影響していると指摘されています。

「保育園でも家庭的な環境を充実させていけば、影響はないと考えています。昼預かる子も夜預かる子もみんな平等です」(片野園長)

 

次回は、そんな子どもと親を支え続ける夜間保育園がなぜ増えていかないのかを考えていきます。

『エイビイシイ保育園』(東京都新宿区)(C)夜間もやってる製作委員会

【公開情報】

夜間もやってる保育園
(C)夜間もやってる製作委員会

2017年9月30日(土)より、ポレポレ東中野にてロードショー

まだまだ知られていない、子どもたちが安心して過ごしている夜間保育園の現場から、家族の在り方、働き方を考える作品。『エイビイシイ保育園』のほか、沖縄県那覇市の『玉の子夜間保育園』、北海道の帯広市の『すいせい保育所』などが登場する。

撮影(映画写真以外)/樋田敦子

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