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「夫がイクメンになるまでの軌跡」から見えてくる、父親特有のつらさとは?

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2010年に “イクメン”という言葉がユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされてから10年。「育児に積極的に参加する男性」という意味が世の中に浸透するとともに、この言葉への違和感も聞かれるようになりました。違和感の根底にあるのは、男性が育児をすることを特別視する風潮です。

一方で、自分で“イクメン”だと自覚している男性たちは、“イクメン”になるまでの葛藤があったようです。今回は、その胸の内を聞いてみました。

半数以上の男性が自分を「イクメン」と自覚

今回、アンケートにご協力頂いたのは20〜40代の父親163人。

まず、「自分のことを“イクメン”だと思うか」という質問を投げかけてみました。結果は以下のようになりました。

とても「イクメン」だと思う・・・17.8%

やや「イクメン」だと思う・・・36.2%

「イクメン」とは思わない・・・46.0%

ちなみに、過去記事「夫が早く帰宅しても、結局…。『育児に協力的ではない夫』は自宅で何をしている?」で実施したアンケートでは、約6割の女性が「夫は“イクメン”だと思う」と回答。男女間の認識の誤差が生じているようですが、“イクメン”と“非イクメン”の割合が拮抗しているのは確かなようです。

男性が自分を“イクメン”だと感じている理由については、以下の4つがありました。

(1)日常的に育児をしている

「習い事の送り迎え、休日の子どもの相手をしている」(47歳・その他)

「送り迎え、寝かしつけ、入浴、休日の相手もしてるから」(34歳・公務員)

「授乳以外すべて行います」(35歳・技術職)

(2)自発的に子どものケア・しつけ・教育をしている

「子どもの世話を進んでするから」(48歳・公務員)

「子どもと一緒に留学した」(39歳・ 公務員)

(3)妻がいなくてもすべて対応できる

「夜はワンオペで育児をしているから」(39歳・金融関係)

「奥さんの代わりが出来る」(46歳・その他)

(4)妻のキャリアをサポートしている

「妻が仕事の時に育児を行なっている」(26歳・その他)

「頼まれたから参加する」というのではなく、主体的、かつ自発的に育児を行っている男性が多く見受けられました。

育児に積極的な男性が、育児につまづいた経験は?

子どもを授かってから、ガラっと変わる生活リズムに戸惑う夫婦は多いと思われます。女性が子どもを授かってからの育児の経験談はよく聞かれますが、現在“イクメン”だと自覚している男性も、様々な葛藤を経験しているのではないでしょうか。

そこで、自分のことを「とてもイクメン」「ややイクメン」と感じている男性88人に育児にくじけそうになった経験や、その局面をどうやって乗り越えたのか聞いてみました。

特に多く寄せられた5つのエピソードをご紹介します。

(1)もっと育児をしたくても…「仕事と育児の板挟み」

今回、7人の男性から寄せられた回答が職場の理解に関することです。

「休日出勤を断りにくかったこと。上司の理解を得られるようにコミュニケーションを取った」(37歳・総務・人事・事務)

「仕事だけではなく、家庭内での仕事や子どもの世話をしたいが、職場での理解もなかなか得られず肩身が狭い。上長を含め相談しているが、なかなか理解してもらえず。しかし、少しずつだが業務の段取りの段階等で気を使ってくれている感じはする」(30歳・研究・開発)

「お迎えなどで早く帰ることなど、職場の理解も得られず肩身が狭い。かんばって世話しても、子どもには『ママがいい~』と言われて報われない気持ちだったが、子どもの成長につれて関係性がよくなった。職場の理解を得られるよう、あきらめず説明を続けた結果、少しずつ進化している」(38歳・その他)

このように、積極的に育児参加をすることで職場で肩身の狭い思いをした男性もいました。

(2)妻からの「ダメ出し」に傷ついた経験

「嫁に文句を言われると、ムッとなる。話し合いで折り合いをつける。考えが違うと仕方ないので」(36歳・その他)

「『そんなこといいから、もっと稼いできて。バイトでもしてこい!』と正社員しているのに嫁から文句を言われたとき。副業で本業を超える収入を目標として実際に超えた」(47歳・その他)

一生懸命がんばっても最も身近な妻に認められない経験は、育児のモチベーションに関わってくるようです。

(3)泣き止まない、計画総崩れ…思い通りにならないときは

「時間など全て思い通りにならない。そんなときは、『まぁいいか』と思うようにする」(36歳・研究・開発)

「どんなにあやしても一向に泣き止まなかったとき。 何を言ってもわからない年齢なので、こちらが辛抱するしかありませんでした」(38歳・営業・販売)

「子どもが小さいときにはかわいがるだけでよかったが、小学生になった今は求めることが増えて、きつく怒ってしまい自己嫌悪の念に駆られることが増えた。そんなときには子どもが寝た後、くだらないバラエティ番組を見て気持ちを切り替えて罪悪感も怒りも翌日に引きずらないようにしている」(40歳・その他)

「常にくじけている。そんなときはあきらめる」(39歳・その他)

「夜の育児は大変。でもがんばる」(27歳・学生・フリーター)

「まあいいか」とあきらめたり、“ぐずりタイム”が過ぎ去るのを待ったり、気持ちを切り替えたりと、それぞれのやり方で乗り越えているようです。

(4)「ワンオペ育児の苦労」は成長とともに…

「深夜に子どもに嘔吐され一人で対処するとき。子どもが成長し、そういった機会は減った」(39歳・金融関係)

今回、夜は“ワンオペ育児”をしているという男性もいましたが、子どもの成長とともにラクになったという回答は、実感がこもっています。

(5)どんなにがんばっても…「ママがいい!」

今回のアンケートで男性がくじけそうになった瞬間で最も多かったのは、自分なりにがんばっても「ママがいい!」と泣かれてしまったときでした。

「何をしても泣き止まない。『ママがいい』の連続のときに参りました。意志疎通がお互いにできるようになってきて、少しずつ楽になってきました」(38歳・その他)

「小さいときには、泣いてしまうとママには勝てない。子どもと遊ぶようにすると自然とよくなった」(42歳・営業・販売)

「おっぱいが出ないこと。父親しかできないことをする」(44歳・技術職)

育児は子どもの成長とともに悩みの質が変わっていきます。試行錯誤して解決策を探ったり、大変な時期がすぎるのを忍耐強く待ったりして、それぞれの困難を乗り越えていたようです。

回答を振り返って…

仕事との兼ね合い、夜の孤独、泣き止まない子ども……。これらの悩みは女性からもよく聞かれることではないでしょうか。

一方、今回男性から寄せられたのは“妻からのダメ出し”や、子どもの「ママがいい」という言葉、さらに男性の育児参加に理解のない職場に関する回答です。

今回のアンケートのように、母親と同じような悩みに加え、父親ならではの様々な葛藤を抱えている男性は少なくないのではないでしょうか。

科学記者のポール・レイバーン氏による『父親の科学 見直される男親の子育て』は、科学的な見地から父親の重要な役割をあぶりだし、全米育児出版賞の金賞を受賞した著書。その中では「仕事と家庭の葛藤が、男性を家族から遠ざける結果を生む」という研究や、男性に絶え間ない批難を浴びせて父親の育児へのかかわりを阻害する“母親の門番行為”などに関する研究報告も掲載されています。

同著では、“育児スキルがないパパ”を描写したコマーシャルが大炎上した例も紹介されており、アメリカでは男性の育児スキルを軽んじる言動に対して厳しい眼差しが向けられていることがわかります。

日本では過去に”ワンオペ育児”に奮闘する母親を描いたCMが「孤独な育児を美化している」と炎上したことがありました。今後は、男性の育児参加が広がることで、男性の家事・育児スキルを軽んじる広告や記事が減っていくのでは……と筆者は予想しています。

ひょっとしたら、そのころには、“イクメン”という言葉が使われなくなっているのではないでしょうか。

【参考】

『父親の科学 見直される男親の子育て』(ポール・レイバーン 著/東竜ノ介 訳・2019年・白揚社

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