子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

娘の生理痛に「低用量ピル」という選択。こんなメリットも!【産婦人科医・高尾美穂が教える、今どき生理の基本#12】

実は私たちが、自分の知識で大丈夫?と不安に思っている「生理の基本」や、医学的に正しい、新しい情報を身につけよう!というこの連載。第12回目は、子どもの生理痛と低用量ピルの使い方について。

今回も、産婦人科医で『あさイチ』などメディアでもおなじみの高尾美穂先生に教えていただきました。

“生理痛がつらい”という状態が、子宮内膜症につながることも?

null

娘の生理痛。自分の子ども時代を振りかえり、つい“がまんできるでしょ?”と軽く捉えてしまいがちな方もいるかも知れません。でも……。

「前回の、連載11回『娘の生理痛「鎮痛剤」の飲み方の正解は?』でもお伝えしましたが、生理痛を放っておくことはリスクを伴います。生理痛は我慢しないこと、早めに対策を講じることをお子さんに伝えることも、大事な教育だと思っていただきたいんです。

昭和の時代と違って我慢することが美徳ではありませんし、今では、つらい状態を続けることが、子宮内膜症を引き起こすことにもなるということもわかってきています。母親の皆さんが正しい知識をもって、子どもたちに対処してほしいところです」(高尾先生。以下同)

痛みの対処法として「低用量ピル」という選択肢も

null

生理痛の痛みの対処法として、鎮痛剤ともうひとつ、低用量ピルという選択肢があります。

「低用量ピルというのは、今のお母さんたちが子どもの頃にはなかった対処法ですよね? 自分が経験したことのない、知らない方法は、怖いと思うかもしれません。ただ月経困難症を軽減させる有効な方法ですので、選択肢のひとつとして、ぜひ考えてみてください」

子どもの頃から、鎮痛剤だけでなく、低用量ピルについても正しく知ることができたら、大人になっても役立つ知識になるはずです。

生理痛の対処法としては、鎮痛剤のほうが手軽かもしれません。ですが、最初からピルを使うという選択肢も、子宮内膜症を予防する意味では実はとても有効なんです。

そもそもピルというのは、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンのふたつが配合されたもの。もともと、避妊目的の薬剤として、日本においては1999年から使われ始めました。

低用量ピル、エストロゲンとプロゲステロン(プロゲスチン製剤)を使うと、子宮につくられる内膜が通常に比べて“薄く”形成されます。

子宮を収縮させる力=プロスタグランジンは、子宮内膜によって作られるため、準備される子宮内膜が薄ければそれだけ子宮の収縮も少なくて済み、生理痛も軽くなるという仕組み。

子どもだから心配と思うかもしれませんが、生理痛を軽くするだけでなく、内膜が薄い分、経血量も減るので貧血を防ぐというメリットもあります。

治療法など、医療はどんどん進歩してきていますから、まずはクリニックで相談してみてください。自分の経験だけで判断せず、今できる、安全で最善な方法にアップデートしていくことを忘れないでくださいね」

低用量ピルのデメリットってどんなこと

null

低用量ピルのデメリットも知っておきたいところ。

「確かに薬ですから、大なり小なりマイナートラブルはあります。ですが低用量ピルは、女性が毎日、長期間にわたって服用しても、安全に、効果が保たれるように開発されてきています。

飲み始めは、軽度の吐き気や乳房の張り、頭痛、むくみが起こることもありますが、飲み続けていくと解消していくことがほとんどだと言われています。 ただし、血栓症の心配がある方は注意が必要なので、医師とよく相談しましょう。

また、ピルを長く服用すると妊娠しづらくなるのでは?と心配される方もいらっしゃいますが、そのようなデータはありませんので、安心してください

そして、生理痛の軽減のためにピルを飲み始める場合、それを止める時も医師に相談してほしいそう。

「低用量ピルを止める際は、止めた後のからだの変化やリスクについて知っておく必要があるので、必ず医師に相談しましょう。低用量ピルの内服を止めることで、再び生理痛に悩まされることもありますし、もしマイナートラブルが原因で中止を希望させる方には、違う種類の低用量ピルをご紹介することもできます」

低用量ピル、かかる費用はどのくらい?

null

長期的な服用となると、金額的な面も気になるところですよね。

「月経困難症、もしくは子宮内膜症という診断がつくと、保険適用になりますので、1シート(21〜28日分)で700〜2,500円くらいが相場となっています。このほかに初診料や、クリニックによっては検査代などがかかることもあるようです」

生理痛の仕組みと対処法については、特に大事な部分だったので、高尾先生のお話をじっくり伺いました。よく理解して、母娘で一緒に対策を講じていきましょう! 生理痛がないだけで、日常生活の過ごしやすさは確実に上がりますから。

次回は、子どもの「おりものと初潮の関係」についてお届けしていきます。

 

イラスト/ Naho Ogawa


 

産婦人科医 高尾美穂

産婦人科専門医であり、婦人科スポーツドクター。女性のための統合ヘルスクリニック『イーク表参道』副院長。Gyne Yoga主宰。

「すべての女性によりよい未来を」と、TVや雑誌をはじめ、ツイッター(@mippolin78)やstand.fmなどのご自身のメディアにて、正しい知識や知っておくといいことなど、精力的に発信されている。

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載