子どものほうが「生理痛」は重い?
null私たちが“生理痛”を認識したのは、いつの頃からでしょう? 遠い昔の記憶すぎて、いつからあったのか、それともなかったのか、思い出せない人もいるのではないでしょうか(私がまさにそう!)。
そこで高尾先生に、子どもの生理痛についてお聞きしてみると……。
「生理が起こるメカニズムは、連載第5回『 私の「生理痛」大丈夫?鎮痛剤が効く仕組みと、正しい付き合い方って?』でもお話した通り、大人も子どもも同じです。
子宮内膜がはがれ落ちるときに、子宮からギューギューと押し出す働きをしているのが“プロスタグランジン”という物質。この物質が筋肉(平滑筋)でできている子宮に作用し、子宮を収縮させることで、内膜を押し出す=生理が起こるわけです」(高尾先生。以下同)
ということは、もちろん子どもにも同じように生理痛が起こっているのですね。
「その通りです。もちろん痛みを感じるのには個人差がありますから、全員が全員、同じように痛みを感じるわけではありません。
ですが、子どもの場合は子宮がまだ未熟で子宮の出口も狭いため、経血が外に出ていきにくい、ということが起こり得ます。
外に出ていかないということは、内膜が子宮内に残る。すると“これを外に出さなくては!”とプロスタグランジンがさらに分泌され、過剰に収縮を生むというサイクルになるわけです。
こう考えると、子どもは余計に痛みを感じやすいともいえるのです」
子どもの生理痛を放っておくリスク
null私たちが子どもの頃は、親から鎮痛剤を飲まないほうがいい、我慢しなさい……などと言われた人も多かったのではないでしょうか。
けれど、痛みを我慢させて放っておくと、ある病気のリスクが上がると高尾先生。
「生理痛がある場合、機能性月経困難症という診断名がつきます。これは本人が日常生活に支障をきたしていると感じていたら、婦人科で診断がつくものです。
本人の我慢が足りないということではなくて、生理痛が重い女性は、子宮内膜症のハイリスクグループである、ということもわかっています。ですから、将来の病気の予備軍になっているという見方をするんですね」
なるほど! 将来の病気のリスクを減らすという意味でも、早めに生理痛をケアしておいたほうが賢明なんですね。
子どもの生理痛、その対処法は?
nullでは、生理痛の対処法も大人と同じと考えていいのでしょうか?
「今できる選択肢は、鎮痛剤を服用すること、そして低用量ピルを服用することの2つになります。これは大人と同じです。
まず鎮痛剤で気をつけたいことは、お子さんの場合、15歳を境に婦人科で処方できる鎮痛剤の種類が変わってきます。15歳以上はロキソプロフェンなど、大人と同じ処方となりますが、15歳未満はアセトアミノフェン系(代表的なものはカロナール)となります。
ただ、たとえば14歳10か月で、大人に近い体型、たとえば身長が150cmを超えていて、体重も40kgを超えていれば、大人と同じ処方薬もありかなと思います。そのあたりは、ご自身での判断が難しければ、婦人科医と相談してもよいでしょう」
鎮痛剤は、子どもの年齢によって処方が変わるんですね。それも知っておきたい知識です!
痛み止めを飲むタイミングを間違えないで
null鎮痛剤は“飲むタイミング”を間違えると効きにくくなるので注意が必要、と高尾先生。
「鎮痛剤というのは、生理痛が起こってから飲むのでは遅いんですね。遅いと、結果的に痛みはなくならず、“服用しても効かないじゃないか”という感覚だけが本人に残ってしまいます。
では、どのタイミングがベストかというと、プロスタグランジンが作られ始める前に飲むのがベスト。 でも、プロスタグランジンっていつ作られ始めるの? と思いますよね。目安としては、まだ生理の出血が始まっていないけれど、なんとなくお腹が痛いとか、出血がチラッとでも始まったら、そこが服用するタイミングです。 ぜひ覚えておいてくださいね」
鎮痛剤は、痛くなってから、我慢するのが辛くなってから飲むという人が多い中、この効かせるタイミングは知りませんでした。私たちは経験的に“もうすぐ生理が始まりそう……”という気配を、お腹の内側で感じますよね。それを逃さないのが大切です。
鎮痛剤は、飲んでもクセにならないの?
null昔から一部で言われている“鎮痛剤はクセになるからよくないのでは?”という考え方。前述の連載第5回でも、お話ししてくださっていますが、改めてその安全性を教えてくださいました。
「鎮痛剤がクセになったり、成長期のからだに何らかの影響が出たりということはありません。 鎮痛剤は用法用量を守れば、十分に安全性が確立されていると言える薬剤です。生理のときだけに飲む、くらいであれば副作用が出ることもまずありません。ですから、生理痛があるときは、迷わず服用を勧めてあげてくださいね」
お子さんが初潮を迎えていたら、生理痛があったときの対処法もきちんと伝えて、親子で一緒に考えていきたいですね。
次回は、「子どもの生理痛と低用量ピル」についてお届けします。
イラスト/ Naho Ogawa
産婦人科医 高尾美穂
産婦人科専門医であり、婦人科スポーツドクター。女性のための統合ヘルスクリニック『イーク表参道』副院長。Gyne Yoga主宰。
「すべての女性によりよい未来を」と、TVや雑誌をはじめ、ツイッター(@mippolin78)やstand.fmなどのご自身のメディアにて、正しい知識や知っておくといいことなど、精力的に発信されている。