経血は子宮から「搾り出されて」いた?
nullそもそも生理のときの経血って、どうやって体外に出てきているのでしょう。まずはその仕組みから。
「生理は、子宮内で準備された、本来なら赤ちゃんを受け入れるためのベッド=厚くなった子宮内膜が、はがれ落ちることで起こります。
このはがれ落ちた内膜を、体の外に押し出す働きをしているのが、 “プロスタグランジン”という物質です。
子宮は筋肉(平滑筋)でできていて、この“プロスタグランジン”が筋肉の収縮を引き起こし、子宮をギューギューと握りつぶすことで、内膜を押し出しているのです」(高尾先生。以下同)
生理痛は、あってあたりまえ
null「子宮がギューギュー収縮させられているわけなので、みんなに生理痛は起こっています。だから、痛みがあっても正常なんです。
ただ痛みというのは、その“感じ方”に個人差があるものなので、ほとんど感じない人や少し感じる人、とても感じる人がいるわけです」
そうなんですね! 子宮の中からギューギューと搾り出されていると思うと、あの痛みも納得です。
生理痛に「鎮痛剤」という選択
null生理痛と付き合っている多くの人が抱えているのが、“痛み止めを飲んでもいいの?”“カラダに悪くない?”という悩み。
「生理痛は、あっても当然な痛みです。治療でまず選択するのは、痛み止め(鎮痛剤)ということになります」
鎮痛剤というと、kufura世代が子どもの頃、あまり飲んではいけないものと言われて育った人もいるかもしれません。そのため、鎮痛剤に抵抗がある、という方も多いよう……。
「痛み止めの元祖であるアスピリンは歴史が100年以上もある鎮痛剤で、十分に安全性が確立されているもの。大きな問題(副作用)が出ることはまずありません。
一般に作用が強いと言われているロキソニンのような鎮痛剤にしても、決められた用法で内服を続けても、肝臓や腎臓に負担にならないように作られているんです。
鎮痛剤が服用できるのは、今の時代に生きるメリットですから、辛いなら飲む、という選択でいいんじゃないかと思いますよ」
たしかに。医師の処方箋なく購入できる市販薬は、私たちの判断で飲んで大丈夫なように、効き目も調整されています。必要以上に心配しなくてもいいのかもしれません。
鎮痛剤が効く仕組みと、正しい付き合い方
nullでは、鎮痛剤を飲むときに、注意したいことは?
「鎮痛剤を使うときに大切なのは“決められた量を、決められた回数ちゃんと飲む”こと。1日3回と書いてあったら、きちんと3回飲まないと、効かないようにできているんです。
カラダに悪いかも?と、自己判断で量や回数を減らしてしまうとせっかく飲んでもその効果がありません。
薬を飲むと、薬の成分の血中濃度が上がり、痛みに効いていきます。でも薬の血中濃度は、時間がたつと下がっていく。痛みが続く場合、薬の血中濃度が下がり切らないうちに、次の薬を内服することで、血中濃度を保つ必要があります。
3回と決められているということは、1日のうちに、規定の時間を空けて3回飲まないと血中濃度が下がってしまって、効かなくなるということです。
一度、血中濃度が下がってしまうと、新しく薬を飲んで血中濃度が再び上がるまで、痛みを感じ続けるわけですよね。だから薬の効果を持続させるなら、決められた時間で次の薬を服用、安定した血中濃度を保つことが大事なんです。
生理の期間中、2〜3日くらい飲み続けることは問題ありません。自分の生活に支障があるほどの痛みなら、鎮痛剤を上手に取り入れながら、ストレスなく過ごす選択を考えてみませんか?」
生理痛がひどいと、病気のリスクがあることも…
null生理痛があること自体は問題ない、とわかりました。ではこの痛み、他の病気から来ている場合もあるんでしょうか?
「前回の連載で説明をした過多月経(連載第4回『私の生理、大丈夫?量や血のカタマリなど…受診の目安って?』)と同じで、生理痛が辛くて、日常生活に支障が出てしまうとご本人が感じているなら“月経困難症”という病名がつきます。これも他人と比べられるものではないので、自己申告なんですね。
病気のリスクという面では、月経困難症がひどい場合、将来的に子宮内膜症が見つかる可能性が高くなります。特に、チョコレート嚢胞(のうほう)といって、卵巣に血液が溜まる病気も考えられます」
急に病気になるわけではないから…
null生理痛には、病気のリスクが潜んでいることもあるんですね。では、どのくらいの痛みの場合、受診を考える必要があるのでしょうか?
「子宮内膜症やチョコレート嚢胞は、エコー検査などを1年に1回継続的に受けていて、初めて発見されるんです。チョコレート嚢胞の大きさが、せめて1cmくらいになっていないと、私たち医師も判断できないんですね。実際に診断に至るまでに6年くらいかかることもあると、報告されています。
そのためにも、毎年検査や健診を行って状態を把握しておくことが大事なんです。もし子宮内膜症かもしれないとわかったら、診断がつかなくても前もって対策を講じることができます。早期発見のためにも、検査は定期的に受けていただきたいな、と思います」
子宮内膜症やチョコレート嚢胞などは、突発的にできるものではなく、徐々に育っていくもの。ひどくなってしまってからでは治療も大変ですが、小さいうちに見つけられれば、大事に至らずに治療することが可能な時代です。
今不調がないと、ついおろそかにしてしまいがちな検査や健診。将来の自分の体を守るためにも、ぜひ年に1回、婦人科健診の習慣をつけたいですよね。
次回は「生理が変わってきた!は女性の病気を見つけるサイン」をお届けします。
イラスト/Naho Ogawa
産婦人科医 高尾美穂
産婦人科専門医であり、婦人科スポーツドクター。女性のための統合ヘルスクリニック『イーク表参道』副院長。Gyne Yoga主宰。
「すべての女性によりよい未来を」と、TVや雑誌をはじめ、ツイッター(@mippolin78)やstand.fmなどのご自身のメディアにて、正しい知識や知っておくといいことなど、精力的に発信されている。