生理の出血は「かさぶたがはがれる」のと同じ?
null前回の連載(連載 #3『私の「生理の日数」これって正常?』)で、生理のときの“赤い血”と“茶色い血”の違いを、教えてくれた高尾先生。
赤い血は新鮮な血、茶色い血は、体内では出血していたのに体外に出てくるまでに時間がかかった“古い血”、ということでしたよね。
そもそも生理の出血は、妊娠の準備として、着床するであろう受精卵のためにふかふかに調えられた子宮内膜が、はがれ落ちることで起こるもの。この内膜が、そのまま出血になっているのでしょうか?
「生理の出血は、子宮内膜がはがれることで起きますが、まずはがれる際の出血というのがあるんです。カサブタがはがれるときに出血することがありますよね? それと同じで、物理的に膜がはがれるということに伴う出血です。これが生理の出血の半分くらいになります」
カタマリがあっても、当たり前
nullそうなんですね! 生理の出血は、内膜が“はがれる”ということに伴う出血が半分。ではもう半分は?
「生理で排出されるもう半分は、内膜です。内膜は読んで字のごとく“膜”で、そもそもが液体ではありませんので、血のカタマリ(のようなもの)が出てきても、おかしくはありません。だから、カタマリが出てくること自体は、そんなに問題ではないんです」
自分の生理を思い返してみると、カタマリが出てくる頻度ってそんなに多くはなく、通常はほぼ“サラサラの血”のような気がします。排出される半分が「膜」なのであれば、もう少しカタマリになりそうな気もするのですが……。
「通常は、膜を溶かす酵素が働いてサラサラの血液状に分解されるので、それがいわゆる“赤い血”となって排出されます。
ですが経血量がそもそも多いと、酵素の分解が追いつかないことがあります。また座っている時間が長いと、膣が体重で押しつぶされた状態が続くので、経血がそこで詰まって固まってしまうということもあるんです」
カタマリで気にすべき目安は“500円玉以上”
null「よく“血のカタマリが出る”と、不安になられる方もいらっしゃいますが、親指の第一関節くらいまでの大きさなら問題ありません。 目安として、500円玉くらいまでの大きさがたまに出るくらいなら、そこまでは心配はないとお話しします。
でも、それ以上の大きさになると、出血が多いから大きなカタマリが出る、と考えます。量が多いということは、過多月経の診断で治療対象になり、そこから貧血の疑いなども考えられますので、必ず婦人科を受診をされてくださいね」
量が多い“過多月経”、その判断基準は?
null自分の経血量が多いか少ないかって、気になりますよね? とはいえ、他人と見比べることはできないし、どのくらいが普通なのか、判断に困っている女性も多いのではないでしょうか。
「ご自分の経血量が多いかどうか、気にされる方もいるようですが、そこは自己判断でいいんです」
え? 自分で多いと思えば、それでいいということ? 産婦人科的な基準というのは、ないんでしょうか。
「婦人科的に、“150ml以上は過多月経です”という基準が、一応あります。ですが、自分が出血量が多くて生活を送る上で困っているということであれば、過多月経という診断名がつきます。 比べる材料がないので、あくまでも自分が困っている、という感覚を大切にされてください。
過多月経であれば、低用量ピルや保険適用となったミレーナ(*)などの治療法がありますので、一度、クリニックで相談されてみることをおすすめします」
経血量が多いことで自分の生活に支障があると思えば、自己申告で診断名がつくことには驚きました!
と同時に、婦人科に相談して経血量を調整することも可能だとわかると、生理期間を少しラクに捉えられるようになりますね。
*ミレーナとは、T字型をした小さなリングで、腟の中に留置する装具のこと。これまでは長期避妊目的で用いられてきましたが、近年、過多月経や生理痛の有効な治療法として注目されています。
次回は「生理痛ってどうして起こるの?あっても大丈夫?」をお届けします。
産婦人科医 高尾美穂
産婦人科専門医であり、婦人科スポーツドクター。女性のための統合ヘルスクリニック『イーク表参道』副院長。Gyne Yoga主宰。
「すべての女性によりよい未来を」と、TVや雑誌をはじめ、ツイッター(@mippolin78)やstand.fmなどのご自身のメディアにて、正しい知識や知っておくといいことなど、精力的に発信されている。