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歯ブラシの理想的な交換頻度はどれくらい?歯ブラシ選びのコツも【オトナのための歯科相談室#11】

みなさんはどのくらいの頻度で歯ブラシを交換していますか? 今回も、地域密着型の歯科医院の院長として、お子さんからご高齢の方まで、歯の健康管理と治療を行ってきた歯科医の山本伸彦先生による大人の歯科相談室を開設! 連載11回目は、「歯ブラシの理想的な交換頻度と選び方」について教えていただきました。

歯ブラシの理想的な交換時期は?

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毎日使う歯ブラシ。毛先が広がり、弾力がなくなっているのに、使い続けてはいませんか?

「抗菌仕様かどうかなど、製品によって違うため一概には言えませんが、一般的な話をすると、歯ブラシは1カ月くらいで交換するのがいいと思います」と話すのは歯科医の山本伸彦先生。

電動歯ブラシに関しては、3カ月くらいを交換の目安にしている商品もあるため、メーカーが推奨する期間の確認を。毛先が広がって弾力性が失われた歯ブラシをそのまま使っていると、汚れを落とす力に大きな差が出てきます。

「例えば、家の掃除をするとき、へたったブラシを使ったら上手く掻き出すことができないじゃないですか。また、いくら抗菌処理がしてある歯ブラシでも、歯についた汚れが毛の間に残っていると雑菌が繁殖してしまいます。気持ちよく歯磨きするためにも、歯ブラシは定期的に交換しましょう」(以下「」内、山本先生)

歯ブラシの毛は「硬め」と「やわらかめ」どちらがいい?

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「歯はエナメル質という硬い組織。歯のことだけ考えれば、適度な硬さのあるブラシの方が清掃性は高いです」と山本先生。

ただし、歯は歯茎についています。そのため、歯の表面を磨くというよりも、歯と歯茎の境目の汚れをいかにコントロールするかということが重要になります。

「例えば、女性の肌は男性に比べて薄くてデリケートですから、男性が使うようなスクラブのいっぱい入った洗顔料でガシガシ洗うのは避けますよね? 歯茎も同じ。歯茎は粘膜ですから、硬すぎる歯ブラシを使うと、傷ついたり細菌感染したりしてしまうリスクが高くなるんです」

とはいえ、あまりにやわらかい歯ブラシでは、清掃性が落ちてしまいます。「普通」か「やややわらかめ」の歯ブラシで、歯はもちろん、歯周ポケットといわれる部分や歯と歯茎のつなぎ目の部分まで、ていねいに磨きましょう。

「好みもあるとは思いますが、毛先がシャープに尖っているような歯ブラシも、あまりおすすめしません。知覚過敏がある人にとっては刺激になりますし、道具の使い方があまりお上手ではない方の場合、歯と歯茎の隙間に入りすぎて、歯周ポケットを傷つけてしまうこともあるので注意した方がいいと思います」

理想的なヘッドの大きさや形は?

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ヘッドの大きい歯ブラシは、手早く磨けるように思われるかもしれませんが、口の中がすごく広い人もいれば、舌が大きい人や頬が厚い人、口の中があまり広くない人もいます。ヘッドは自分の口に合った大きさを選びましょう。

「たとえ口の中が広い人でも、歯の裏側までは行き届かないこともありますから、大き過ぎるヘッドはおすすめしません。横幅3列、縦幅6列から8列ぐらいのコンパクトなヘッドで、1本ずつていねいに磨いていただきたいですね」

横幅3列、縦幅6列の歯ブラシ

どうしても磨くのが難しい場所がある場合は、細かい隙間にピンポイントで毛先を当てられるワンタフトブラシという歯ブラシを使うのも手。歯ブラシ1本で勝負をかけるのではなく、ワンタフトブラシやフロス、ジェットウォッシャーなど、補助的な道具を使うと効率よく磨けます。

ワンタフトブラシ

「最近は、山型やジグザグ型など、さまざまなカットの歯ブラシもありますが、わたしのおすすめはベーシックなフラット型。特別なカットが施されていなくても、正しく使えば、歯周ポケットや歯間もきちんと磨けますよ」

歯ブラシの正しい当て方・動かし方

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歯磨きでは、歯と歯茎の境目の汚れをいかにコントロールするかということが重要になります。そのため、歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目、歯と歯の間に、きちんと当てる必要があります。

「例えば、下の歯の境目を磨くときは、歯ブラシの毛先を下斜め45度の角度で歯肉の下の方に押し当て、そのまま上へ滑らせると、歯と歯肉の境目に毛先がピタッと入るんです。あとはそのまま毛先を逃さないように、左右に小さく振動を与えるイメージで、力を入れずに磨きましょう」

歯を磨くときの理想的な力は100〜200g。シャコシャコ音がするような方は、力が強いうえ、大きく動かし過ぎ! 歯の表面しか磨けていない可能性もあるため、見直しが必要です。

「前歯は湾曲しているので、裏側を磨くときは歯ブラシを縦に使い、ブラシの“かかと”を歯の1本1本の裏側に引っ掛けるようにして、ちょこちょこ磨くのがポイント。奥歯の頬側を磨くときは、口を大きく開けず、歯ブラシの柄を磨く部分と反対側の唇の角に当てるように横からグッと入れて、ブラシの“つま先”で歯を包み込むようにして磨きます」

 

包丁と同じように、歯ブラシも大切なのは使い方。当て方や動かし方など、一度、歯科医院でチェックしてもらい、正しい習慣を身につけておく方がよさそうです。次回は、歯磨きの最適なタイミングについてご紹介いたします。

 

取材・文/清瀧流美

山本伸彦
山本伸彦

やまもと歯科 院長/デンタルネットワーク株式会社代表取締役/歯科医

都立目黒高校卒業後、レストラン勤務を経て、明海大学歯学部入学。1995年、同大学卒業。歯科医師免許を取得。南青山友歯会ユーデンタルクリニック勤務を経て、1999年、やまもと歯科(東京都)開設。2018年、デンタルネットワーク株式会社設立。歯科専門情報サイト「Smile Teeth」を立ち上げ、多くの人に歯科医療に関する正確な情報を提供している。

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