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「歯の黄ばみ」は加齢のせい?原因と手軽にできる対策も。ホワイトニングって不安…歯科医が解説

年齢とともに気になってくる歯の黄ばみ。歯が黄ばんできてしまうのは、加齢のせいなのでしょうか? それとも蓄積された汚れのせいなのでしょうか? 今回も、地域密着型の歯科医院の院長として、お子さんからご高齢の方まで、歯の健康管理と治療を行ってきた歯科医の山本伸彦先生による連載【オトナのための歯科相談室】を開設! 10回目は、「歯の黄ばみの原因と予防法」について教えていただきました。

歯の黄ばみの原因は?生まれつきのもの?

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「歯が黄ばんできてしまう要因は、加齢と汚れのふたつですね」と話すのは歯科医の山本伸彦先生。

「歯の表面を覆っているエナメル質が経年劣化で少しずつすり減ったり、酸によって表面が少しだけ脱灰したりすることにより、象牙質のオレンジっぽい色が透過して、より黄色く見えてしまうのです」(以下「」内、山本先生)

歯の本体を形作っている“象牙質”は乳白色ですが、個人差があり、生まれつき白い人もいれば、黄味を帯びた人も。歯の表面を覆って象牙質を守っているエナメル質は色が薄く半透明なため、加齢によってエナメル質が薄くなった分、その内側の象牙質が透けて見えてしまうのです。

「ときどき歯が黒ずんでいる方がいますが、あれは歯の神経が死んだまま放置しているため。死んだ神経の断片や血液中の鉄分が入り込み、変色してしまった象牙質の色が透けて見えているんです」

歯の黄ばみを防ぐには歯磨きするしかない?手軽にできる対策も

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歯の黄ばみのもうひとつの原因は、“ステイン”とよばれる着色汚れ。とくに、赤ワイン、コーヒー、緑茶、紅茶、カレーなどの色素が含まれる食べ物やたばこのヤニは、着色の原因やステインのもとになりやすいため注意が必要です。

「清掃不良や口腔乾燥症も、ステインがより定着しやすい状況をつくります。例えば、コーヒーを飲んでいるときに席を外し、そのまま忘れてしまうと、乾燥してカップに輪染みができますよね? 歯も同じで、飲みっ放しでそのままにしてしまうと、色が歯に定着しやすいのです」

歯の着色汚れを防ぐには、飲んだらすぐに洗い流すことが大切! とはいえ、お茶を飲むたびに歯磨きするのは現実的ではありません……。

「口の中を水で軽くブクブクゆすぐだけでも効果大です。自分の口の中ですから、そのままゴクっと飲んでもいいですし、それが嫌だったら洗面所で洗口剤や水を含んでゆすぐだけでもいい。そういう習慣をつけるだけで、ステインをつきにくくすることはできます」

歯の黄ばみは取れないの?

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では、ついてしまったステインを取ることはできるのでしょうか?

「ステインは研磨もしくはジェットクリーニングで取れます。ジェットクリーニングは炭酸水素ナトリウムやアミノ酸の一種のグリシンの微粉末を水と空気で吹きつけて歯の表面をキレイにする治療法。歯の表面のステイン、あるいはベースにある汚れをきちんと落としきることができます」

一方、加齢による黄ばみは止められませんが、ホワイトニングすることである程度明るくはなります。ホワイトニングの方法には、歯医者で行うオフィスホワイトニングのほか、歯科医院の指導で行うホームホワイトニング、歯医者ではないサロンや市販のホワイトニングキットで行うセルフホワイトニングがあります。

「一般的に、サロンで行うホワイトニングや市販のキットで行うセルフホワイトニングは、漂白によりステイン系の汚れを白く見せるだけで、歯の色を本質的に変えているわけではないんです」

とはいえ、セルフホワイトニングでも、ある程度の着色が取れてキレイな歯になるのも事実。歯の健康に対する意識を高めるためにも、安い価格でステインレベルを下げておくことは、悪いことではないと山本先生は言います。

「歯並びや歯の色など、歯にコンプレックスを持っていると、歯に興味を持ちたくても持てないという人もいるかもしれません。だけど、こんなにキレイになるよというのがわかったら、そこから意識が変わる人もたくさんいるはず。

ですから、矯正やホワイトニングに目を向けていくことは、意外に重要。意識が変わることで、歯を大事にしようという気持ちも出てくる。それが大きな意味での歯の病気予防にもつながっていくと思います」

歯医者のホワイトニング、どんなことをするの?歯が弱くなりそうで心配…

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歯医者で行うホワイトニングは、エナメル質から象牙質、表層から薬剤を浸透させることによって、中から歯の色そのものを変えます。中からブリーチして色を抜いていくと同時に、歯の表面が“すりガラス様”になることによって、乱反射でより明るく見えるようにする効果があるのです。

「ホワイトニングに対して、しみる・痛いというイメージをお持ちの方も多いと思いますが、最近はしみにくい製品も出てきています。光を照射するものなのですが、1回約90分、3回続けると効果がバンと出ますので、黄ばみが気になるという方は試してみる価値はあると思います」

強い薬剤や光の照射によって、歯が弱くなる心配はないのでしょうか?

「ないです。なかには、逆に歯を強化しながらホワイトニングする方法もあるくらいですので。

歯医者で処方してもらった薬剤をマウスピースに入れ、自宅で装着して行うホームホワイトニングとあわせて行うと、いちばん白さが長持ちするかもしれませんね」

ただし、ホワイトニングは保険適用外のため高額になります。どんな方法で行うのか、費用はどれくらいかかるのか、どれくらい白くなるのか、医師とよく相談して決めましょう。

 

取材・文/清瀧流美

山本伸彦
山本伸彦

やまもと歯科 院長/デンタルネットワーク株式会社代表取締役/歯科医

都立目黒高校卒業後、レストラン勤務を経て、明海大学歯学部入学。1995年、同大学卒業。歯科医師免許を取得。南青山友歯会ユーデンタルクリニック勤務を経て、1999年、やまもと歯科(東京都)開設。2018年、デンタルネットワーク株式会社設立。歯科専門情報サイト「Smile Teeth」を立ち上げ、多くの人に歯科医療に関する正確な情報を提供している。

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