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「お酒の飲み過ぎで下痢」 不調はどうして起きる?【医師に聞く二日酔い対策#3】

お酒を飲みすぎたり、二日酔いになったりすると決まってお腹を下す、という人もいるかもしれません。家事や育児、仕事など生活全般に支障をもたらす困った二日酔いの症状。何が原因で起こるのでしょうか?

肝臓専門医の浅部伸一先生に、二日酔いの原因や対策についてうかがっていく本連載の第3回目は、二日酔いで起こる頭痛や吐き気以外の症状の原因と対策についてお届けします。

おさらい!二日酔いの原因・メカニズム

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二日酔い 原因 メカニズム

二日酔いはどうして起こるのでしょうか。その原因とメカニズムをおさらいします。

「二日酔いは、体の処理能力の限界を超えてアルコールを飲みす過ぎることで起こります。アルコールは肝臓で処理されますが、摂取したアルコール総量が処理能力より上回ると、追いつかなくなります。

一般的に、1時間で分解できる純アルコール量は、『体重×0.1』。つまり体重50kgの人が1時間に処理できるのは純アルコール5gとなります。酒類に換算するとビール中瓶の約4分の1本程度。かなり少ないのです。

二日酔いの症状で多いのは頭痛や吐き気、だるさですが、どれも原因は明確に分かっていません。厳密にはいえませんが、今のところ、二日酔いの症状は、アルコールやアルコール代謝物であるアセトアルデヒドが体内に残っていることによって引き起こされると考えられています。

例えば、吐き気は血中のアセトアルデヒドなどの濃度が一定値を超えると、身体が緊急事態と判断して危険信号を発し、そうしたシグナルが嘔吐中枢へと伝えられることで起こるといわれています」(以下、「」内、浅部先生)

基本的に、二日酔いはお酒を飲みすぎると起こりやすくなります。また、アルコールの吸収速度にも関係してくるようです。

「胃が空っぽの状態で酒を飲むと、腸からのアルコール吸収が早くなるため、二日酔いになるリスクが増します。酒を飲む前に何かを食べておき、アルコールの吸収速度を緩やかにすれば、リスクが減ります。

おすすめはたんぱく質と脂質が胃に長時間留まるチーズです。また、飲んでいる最中はたんぱく質、ビタミンB1、食物繊維がおすすめです。例えば、豚肉、納豆、お浸し、サラダ、きんぴらごぼう、切干大根などのおつまみを選ぶようにしましょう。」

下痢や便がゆるくなる場合の原因と対策

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二日酔いの症状には、吐き気や頭痛の他にもさまざまなものがあります。中でも下痢になった場合、何が原因なのでしょうか。

「下痢は、二日酔いに限らず、お酒を飲んだときになる人がいます。腸が弱い人、腸が動きやすい人は特に起こしやすくなります。

ただ、お酒を飲んで下痢が続くことはないでしょう。下痢になったとしても数回程度で済み、実際は下痢までいかず、便がやわらかくなる程度の方も多いと思います。お酒は毒性ある異物です。下痢は“身体によくないものだから、出しちゃおう”とお酒を早く出そうとしている証拠です。

頭痛や吐き気、下痢を含めた二日酔いの諸症状は、基本的にアルコールや、アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドを体が分解するまでおさまりません。そのために、水分や必要な栄養を摂取することが対策になります。

水分は自分が欲するよりも気持ち多めに飲みましょう。下痢の場合、脱水症状を防ぐ意味でも飲んでおくといいです。また二日酔いのときは、タンパク質(アミノ酸)、ビタミンが不足しがちで、特にビタミンB群が不足していることが多いので、サプリメントなどで身体に補ってあげてもいいですね。

ただ、いずれの症状も、原因は二日酔いだけとは限りませんので、長引くようであれば専門医に診てもらってください。」

アルコールで逆流性食道炎になることはあるの?

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アルコール 逆流性食道炎

ところで、アルコール摂取で逆流性食道炎になるという話も耳にしますが、本当なのでしょうか。

「逆流性食道炎とは、普通は、胃酸が多く出すぎて逆流しやすい状態である場合や、太っている人が、食後すぐ横になるなどの姿勢が原因になる場合に起こる、慢性の病気です。ですから、アルコール摂取で一時的になるものではありません。

ただ、アルコールを摂取した後に吐いた場合、胃酸を含む胃液を吐くことになるので、食道を傷めることはあります。その場合、吐いたことが原因で食道炎になることがあり、喉が痛い、気持ち悪いといった症状が出ます。ただ、これは普通、一時的なもので、自然に治ります」

 

いかがでしたでしょうか。二日酔いで下痢や食道の傷みなどの症状に悩まされている場合、それが二日酔いによるものとは一概にはい言えないため、長引くようなら専門医を受診しましょう。


【取材協力・監修】

浅部伸一

東京大学医学部卒業後、東大病院、虎の門病院等で研修。国立がん研究センター、自治医科大学、米スクリプス研究所を経て、自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科准教授。現在は、アッヴィ合同会社勤務。肝臓専門医。ジャパン・サケ・アソシエーション理事。『酒好き医師が教える 最高の飲み方』(日経BP社)監修。

 

取材・文/石原亜香利

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