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ウォシュレットなどの「温水洗浄便座」使うor使わない?拭く際に手につく細菌数に大きな差が!正しいお手入れ方法も

今や多くのトイレに導入されている「温水洗浄便座」。「これがないトイレにはもう入れない!」なんていう声も耳にする一方で、「一度も使ったことがない」という人もいて、反応は千差万別。また、特に外出先など不特定多数が使うトイレの場合、「ノズルから出る温水ってキレイなの?」といった衛生面が気になる……という人もいますよね。

そこで今回は、トイレ用品のメーカー7社が会員となって運営されている『日本レストルーム工業会』さんに、温水洗浄便座の「使用率」「衛生面」「お手入れ」などについて詳しく教えていただきました。

ちなみに、よく使われる「ウォシュレット」という名称は『TOTO』の商品名! そのためこの記事では、一般名の「温水洗浄便座」を使用しています。

年齢が上がるほど増える!?「温水洗浄便座の使用率」

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―まずは、温水洗浄便座の使用率を教えてください。みなさん、どれくらい使っているものなんでしょうか?

「まず前提として、温水洗浄便座には、通常の排便時に使用する“おしり洗浄”や、生理時などに局部周辺に付着した汚れを洗い流すための“ビデ洗浄”といった機能があります。

このうち“おしり洗浄”について、我々『日本レストルーム工業会』が2024年1月に、15歳~79歳の男女2,084名に調査したデータでは、自宅での使用率は以下のような結果になりました。(調査対象:富山県・石川県を除く全国)

<男性>
10代:約50% / 30代:約80% / 50代:約80%  

<女性>
10代:約40% / 30代:約50% / 50代:約75%

全体的に男性のほうが使用率が高く、また、年齢が上の世代になるほど多くの方に使っていただいている傾向が見られます。

年齢とともに使用率が増えていることから、“一度使用すると、それ以降、使い続けたくなる人が多い”とも言えそうです」(以下「」内、日本レストルーム工業会)

―男女を平均すると、おおよそ10代では半数弱、30代では3人に2人、50代では4人に3人が温水洗浄便座を使っているのですね。想像していた以上に広まっていると感じました。では、“ビデ洗浄”はいかがでしょうか。

「“ビデ洗浄”は特に女性の生理時などの使用を想定した機能で、局部周辺に付着した汚れを洗い流す用途で使うものです。

〈デリケートゾーンのかゆみ・ムレ・不快感を持つ女性の約2割が、(その対策として)温水洗浄便座を使用している〉

という調査結果があり、一定の認知はされているものの、まだ充分に広まっているとは言えないかもしれません。

例えば生理中にナプキンを交換する際、10~20秒を目安に“ビデ洗浄”で外陰部を軽く洗い、洗浄後にトイレットペーパーで押さえるように優しく拭いていただくと、経血をよりきれいに、肌を傷つけることなく落とすことができます(※1)」

―私自身もそうなのですが、あまりこれまで使ってこなかったという人もきっと多いですよね。局部を清潔・快適な状態に保つ上で役立つ“ビデ洗浄”、今度から使ってみようと思います!

※1 “ビデ洗浄”使用時は、長時間の洗浄や“洗いすぎ”に注意してください。また、膣内の洗浄には使用しないでください。皮膚の常在菌を洗い流してしまい、体内の菌バランスが崩れる恐れがあります。

気になる衛生面。ノズルから出る温水ってキレイなの…?

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―次に、多くの人が関心を寄せる「温水洗浄便座の衛生面」についてうかがいます。まず基本的なところからなのですが、排便時に温水洗浄便座を使う際、温水洗浄のタイミングはトイレットペーパーで拭き取る前と後、どちらがいいのでしょうか。

「基本的に、『日本レストルーム工業会』では

〈排便後、先に“おしり洗浄”をしたあとに、局部についた水滴をトイレットペーパーなどで拭き取る(もしくは乾燥機能で乾かす)〉

という使い方をご紹介しています。“おしり洗浄”でおおむね汚れを落とすことができるので、トイレットペーパーで拭く際は、押さえるように優しく水滴などを拭き取る程度で大丈夫です」

―取材にあたって、『kufura』で温水洗浄便座に関するアンケートを実施したところ、「おしり洗浄」「ビデ洗浄」を使わない理由として「衛生面が気になるから」という回答が多くありました。

特に「1:温水を当てることにより、おしり周りに汚れが広がるのではないか」「2:ノズルから出る温水は果たしてキレイなのか」という点を疑問に感じている人が多かったのですが、それぞれ、どのくらい心配すべきですか?

トイレットペーパーを4枚重ね(平均的な使い方)にしても、糞便中の微生物の一部はトイレットペーパーの隙間を通過して、手まで到達するんだそう! ですが“おしり洗浄”をすることで、細菌の数は激減します。(イラストは日本レストルーム工業会「トイレナビ※2」より)

「まず、“むしろ汚れが広がってしまうのではないか”という疑問に関しては、排便後におしりをトイレットペーパーで拭いた時に手に付着する細菌数を比較した調査が参考になりそうです。

その結果は、“おしり洗浄”を使用する場合と使用しない場合で、手に付く菌の数が

・人工便と模型を用いた試験:1万分の1以下
・実際の排便後の調査:約10分の1

にそれぞれ低下したというもの。調査方法によって結果に差はありますが、トイレットペーパーだけで拭く場合よりも、“おしり洗浄”をしたあとに拭いた方が衛生的であるという点は同じでした(※2)。

ただし、どちらにしても菌がまったく付着しないわけではないので、使用後にはしっかり手を洗いましょう」

―この研究結果から考えるなら、衛生面を気にする方こそ、むしろ温水洗浄便座を使った方がいいとも言えますね。

では、ノズルから出る温水の衛生面についてはいかがでしょうか。特に公衆トイレなど、公共の場所の温水洗浄便座の場合、「誰が使ったかわからない」という点が気になる方もいるようです。

こちらについても、当工業会で委託した研究があります。

大学のキャンパスに設置されている、127台の温水洗浄便座を対象に行った実験なのですが、結果は

〈ノズルから出る温水(=吐水)の水質は水道水並み〉

というもので、ノズルの自動洗浄によって、世界で一番厳しいといわれる日本の水道水の水質基準をクリアするレベルの衛生性が維持されていました(※3)。吐水だけでなく、ノズルそのものの衛生性に関しても、メーカー各社が日々様々な技術を生み出し商品化しています。

※2 参考 https://www.sanitary-net.com/trend/expert/study07-1.html
※3 参考 https://www.sanitary-net.com/trend/expert/study08-1.html

「ちょこちょこお掃除」「念入りお掃除」の合わせ技で衛生状態をキープ

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清掃時には、自動でノズルがのびるタイプ(「ノズルそうじ」ボタンまたはリモコン操作)のほか、手動で引き出すタイプもあります。商品によって方法が異なるので、取扱説明書をチェックしましょう。

―ノズル自体に衛生面をキープする技術が搭載されているとのことですが、お掃除をこまめにすることも大切ですよね。お掃除に関して何かポイントはありますか?

“温水洗浄便座”を含め、トイレ環境を清潔に保ちかつ長持ちさせるためには日頃のお手入れが不可欠です。

一般住宅向けのトイレのお掃除のコツは、“キレイな箇所”から“汚れる箇所”の順に清掃すること。便座や“温水洗浄便座”のカバー部分といった比較的汚れが少ない部分を先に、次に便器の裏側やノズルのお掃除をすることで、汚れを広げること少なく、効率の良いお掃除ができます。

便器の内側は、普段は柄のついたスポンジで水洗い清掃。念入りに掃除する際は、トイレ用中性洗剤を使います。

便器の内側以外は、トイレ用中性洗剤は使いません。汚れがひどい場合には薄めた台所用中性洗剤を含ませてかたく絞った布で拭き、仕上げに水拭きをして洗剤成分を除去します。(温水洗浄便座で水流を噴出する“洗浄ノズル”部分の出し方・戻し方をはじめ、製品ごとに清掃時の注意事項が異なるため、取扱説明書を必ずお読みください。)

詳しくは、日本レストルーム工業会のホームページに掲載している「トイレのお掃除方法」(https://www.sanitary-net.com/clean/)をご覧ください。日頃の簡易的なお掃除と、汚れが気になるときの念入りなお掃除に分けて、詳しいやり方を紹介しています。

―毎日使うトイレだからこそ、「温水洗浄便座」機能の使用の有無にかかわらず、しっかりお掃除をしていく必要がありますね。

最後に、この記事を読んでいる読者さんに向けて一言、メッセージをお願いします。

「温水洗浄便座の一般世帯での普及率は今では80%以上にまで成長し、ノズルや洗浄水の清潔性や省エネ性なども日々進化しています。

手が汚れた際、紙で拭くだけでは汚れをしっかり落とすことはできませんよね? みなさん水やお湯で手を洗うと思います。おしりも同じです。

みなさんが日々過ごすトイレでの時間をより快適で衛生的なものにするために、ぜひ温水洗浄便座を役立てていただけたらと思います」

 

いかがだったでしょうか、みなさんの「温水洗浄便座」に関する不安は解消されましたか?

近日公開予定の別の記事では、婦人科医の福山千代子先生に2回に渡って「温水洗浄便座のOKな使い方・NGな使い方」をうかがいます。ぜひ、そちらもあわせてお読みください。

 

※リンクの最終参照日はすべて2024年6月1日です。


【取材協力】

一般社団法人 日本レストルーム工業会

トイレ周りに関する製品を製造しているメーカー7社が会員となって運営されている団体。製品の安全性の確立や正しい使い方を発信する活動をしている。

トイレナビ(日本レストルーム工業会)

三上 六花
三上 六花

三上 六花(みかみ ろっか)。ライター。

美容ジャーナリストのアシスタントを経て独立。持ち前の旺盛な好奇心をアンテナに美容ワールドを探索中。

映画と漫画をこよなく愛し、帰宅後は隙あらば即エンタメタイムの多趣味人。週に15番組ほど聴く、生粋のラジオリスナー。

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