家では「使う派」「使わない派」がほぼ半々!
null詳しい解説の前に、まずは温水洗浄便座の使用状況から見ていきましょう。今回『kufura』では20代~50代の女性157人に、温水洗浄便座に関するアンケートを実施しました。調査の結果、温水洗浄の機能の「自宅での使用率」は約50%という結果になりました。
【温水洗浄便座は使いますか?】
〈自宅〉
使う・・・48.4%
使わない・・・51.6%
わずかに「使わない」が上回っていますが、こうもキッパリと二分されるとは!
「使わない」の内訳としては、「温水洗浄便座はあるが使わない」が24.2%、「そもそも自宅に温水洗浄便座がない」という人が27.4%でした。この27.4%の中に「もし自宅に温水洗浄便座があったら使う」という人がいると考えると、潜在的な「使う派」はもっと多いかもしれません。
性別や年齢によっても使用率は変わってくるようで、以前の記事でご紹介した「日本レストルーム工業会」の調査では、30代女性の自宅での“おしり洗浄”の使用率が約50%だったのに比べ、30代男性では約80%と高くなっていました。
続いて外出先での使用についてです。
〈外出先〉
使う・・・33.1%
使わない・・・66.9%
「外出先で温水洗浄便座を使う」と答えた人は33.1%で、「自宅で温水洗浄便座を使う」の48.4%と比べ、およそ3分の2ほどに減っています。
その理由として、「会社や宿泊先のホテルなど、掃除が行き届いたトイレ以外では使わない」「不特定多数の人が使っているトイレでは、温水洗浄は使いたくない」など、衛生面を気にする意見が多くありました。
知らないことだらけ!?「温水洗浄便座」の正しい使い方
nullここからはアンケート結果を踏まえ、福山先生に、温水洗浄便座の使用について詳しくうかがっていきます。
―トイレって、とてもプライベートな場所だけに、これまで他人と温水洗浄便座を「使う」「使わない」といった話をしたことがありませんでした。だからこそ、本当にこの使い方で合っているの?という疑問もあります。
「たしかに、隣に座っている人が“温水洗浄”の機能を使う人かどうかなんて、知らないし聞こうとも思わないですよね。例え家族でも、誰が使っているか知っている人は少ないのでは? 結局、“使う” “使わない”は、個人の判断次第なんだと思います。
今や多くのトイレに備わっている機能でありながら、使い方を誰かと話題にすることもなければ、学校の授業で教わることもない。なんだか、謎に包まれた存在ですよね」(以下「」内、福山先生)
―本当にそうですね。この記事が、その謎の一端を明らかにするものになりますように!
【大便の場合】お腹がゆるい時は、洗浄前に紙で拭き取りを
null―今回のアンケートでは「使う派」「使わない派」共に、衛生面を心配する声が特に目立ちました。先生から見た、それぞれの用途ごとの「清潔に使用するための注意点」とはどんなものでしょうか?
まずはメインの用途とも言える、排便時について教えてください。
「肛門周りの洗浄のために“おしり洗浄”機能を使うのはもちろんOKです。先にトイレットペーパーで拭いてから“おしり洗浄”をしても、拭く前に“おしり洗浄”をしても、どちらでも問題ありません。
ただ、スルリと排出される健康的な便であれば、実は肛門周りへの便の付着はほとんどないんですね。健康的な排便が出来ているのなら、必ずしも洗浄機能を使わず、紙での拭き取りだけでも良いと思います。
水圧を強くしすぎないように注意し、局部内に直接水流が当たるような使い方をするのは避けましょう」
―お腹がゆるい時の「おしり洗浄」の使用はいかがでしょうか?
「下痢や便がゆるい場合の使用は注意が必要です。肛門周りに便の汚れが付着したままの状態で温水を当ててしまうと、汚れが広がりやすく、加えてお尻に当たった水が便器に落下する際に、そこでもまた汚れが飛び散る心配も。
そのため、お腹がゆるい際に温水洗浄便座を使う場合は、使用前後の拭き取りをしっかりとするようにしてください。拭き取りが不十分だと、特に女性の場合は、肛門と近い位置にある膣や尿道に汚れが広がり、膣炎や膀胱炎を起こすリスクもあります」
―アンケートでは、「排便を促すために温水を当てている人がいる」といったコメントもありました。こちらの使い方はいかがでしょうか……?
「排便を促す目的での使用は避けたほうが良いでしょう。
温水を当てなければ便が出ない、というのは自然な排便とは言えません。最初は弱い水圧で済んでいたとしても、刺激に物足りなさを覚えるようになり、水圧を弱から中、強と上げていくうちに、温水を当てることありきでの排便に陥ってしまう恐れがあります。
あわせて、本来の用途と違う使い方をすることで、ノズルが汚れたり故障したりする懸念もあります」
―自分では良かれと思っていた使い方でも、膣炎や膀胱炎の原因になる可能性があるとは……。今一度、自分の使い方を見直してみる必要がありそうですね。
感染症の罹患時に、ノズルがウイルスの隠れ家になることも
「ノズル汚れに関連してもう1つ、ノロウイルスなどの感染症に罹患している際の使用についても注意が必要です。
ノロウイルスの場合、便を通しても感染するので、温水洗浄便座を使用することによって便中に含まれるウイルスが周囲に飛散し、感染が拡大してしまう恐れがあります。また、ノズル部分がウイルスの隠れ家となることも考えられます。
自分だけでなく、家族の誰かが感染症にかかっている際には、温水洗浄の機能は使わないことがベターです」
―『kufura』読者には、子育て中の方も多くいます。お子さん自身が「おしり洗浄」機能を使うことはあまりないかもしれませんが、子どもが持って帰ってきた胃腸炎などが家族内に広がるケースも多いですよね。
「感染症にかかった際、便座や床、壁の消毒には意識がいきますが、ノズルは見落としがちです。家庭内でノロウイルスなどが発生した場合は、使い捨ての手袋とマスクでしっかりと防御した上で、ノズル部分も入念に次亜塩素酸ナトリウム液を用いて消毒することをおすすめします」
【小用の場合】温水洗浄の使用は避けて!膀胱炎の原因にも
null―続いて、排尿時の「おしり洗浄」や「ビデ洗浄」の使用についてうかがいます。
「結論から言うと、排尿後の使用は推奨できません。
尿と聞くと汚いイメージがあるかもしれませんが、正常な尿は、実は膀胱から尿道を出るまでは全くの無菌状態なんです。ですが、排尿後に外陰部に温水を当てることで、逆に外陰部の汚れが水流に乗って流れ込んでしまい、上行感染を引き起こす恐れがあります。
実際に、排尿時に“おしり洗浄”や“ビデ洗浄”を使っている人の方が膀胱炎になりやすいというデータもあるんです」
―そんなリスクがあるとは! 今回のアンケートでも、「排尿後に温水洗浄を使うことがある」と答えた人が約1割ほどいました。この使い方をしている人は要注意ですね。
今回は「排便・排尿時」の温水洗浄便座の使用についてうかがいました。後編では、特に女性は知っておきたい「ビデ洗浄」の使い方について、引き続き福山先生にうかがいます。
【取材協力】
福山千代子(ふくやま ちよこ)先生
「MET BEAUTY CLINIC(東京・表参道)」理事長・院長。日本産科婦人科学会 産婦人科専門医。
20年以上にわたり女性特有の身体の悩みや不調に向き合い、更年期障害をはじめ、月経痛や月経前症候群(PMS)などの治療も積極的に行っている。
「NANO SHAKE SOAP」(ナノシェイクソープ)
2024年3月に発売した、福山先生が監修を手がけたデリケートゾーン洗浄用のソープ。容器をシェイクさせて発生する濃密泡「ナノバブル」(“フェムケア業界初”の特許取得)で、摩擦レスに優しく洗い上げます。かゆみやにおい、乾燥やムレ、黒ずみといった繊細な悩みをまとめてケアします。
内容量:140ml
価格:7,700円(税込)
ご使用量・ご使用期間の目安:1日1回2プッシュのご使用で約4カ月間
三上 六花(みかみ ろっか)。ライター。
美容ジャーナリストのアシスタントを経て独立。持ち前の旺盛な好奇心をアンテナに美容ワールドを探索中。
映画と漫画をこよなく愛し、帰宅後は隙あらば即エンタメタイムの多趣味人。週に15番組ほど聴く、生粋のラジオリスナー。