気温が高くなる梅雨時期〜9月は「食中毒」に要注意!
null農林水産省によると、細菌による食中毒にかかる人が多く出るのは、梅雨時期〜9月頃。湿度や気温が高くなり、細菌が育ちやすい環境になるためです。
今年は梅雨明けが予想以上に早く、6月下旬から真夏並の猛暑日が続き、すでに6月28日には愛知県や三重県で、今年初の「食中毒警報」が発令されました。岐阜県では例年より21日も早い発令とのことで、同県では食中毒の発症も増えてきています。
食中毒は、なぜ起こる?
食中毒を起こす細菌は、土の中や水、人や動物の皮膚や腸の中にも存在しており、特別な菌ではありません。そのため、生産や調理の途中で付いてしまったり、家庭で料理したものを常温で長時間放置しておくと増えてしまったりします。
そういった食中毒を起こす原因となる細菌などが付いた食べ物を食べることで、下痢や腹痛、発熱、吐き気などの症状が出る病気を「食中毒」と呼んでいます。食中毒の原因によって、病気の症状や発症するまでの時間は様々で、ときには命に関わる場合もあります。特に「O-157」などは毒性が強く、死に至ることもあるので、猛暑時は特に身を引き締めなければなりませんね。
つまり、食中毒はとても身近な存在であるということ。どこの家庭でも発症する可能性があります。家族を守るためにも、日々食中毒への注意が必要なんですね!
食中毒を起こす細菌やウイルスを知り、対策法をマスター!
null暑くなると飲食店だけでなく、家庭内での食中毒が気になるところ。
そこで、食中毒対策のキホンとして、農林水産省や厚生労働省のHPを参考に、食中毒を起こす主な細菌とウイルスをまずは覚えておきましょう。
また、細菌やウイルスだけでなく、近頃世間を騒がしている食中毒の原因となる寄生虫「アニサキス」も要注意。
でも、しっかり加熱をすれば大丈夫。原因となる細菌やウイルス、寄生虫を死滅させる正しい対策法をしっかりマスターすることが重要なんです。
■アニサキス
アニサキスは寄生虫(線虫)の一種で、その幼虫は長さ2〜3cm、幅は0.5〜1mmほどで、少し太めの白い糸のように見えるそう。アニサキス幼虫はさば、あじ、さんま、かつお、いわし、鮭、いかなどの魚介類に寄生し、寄生した魚介類を生で食べることで、アニサキス幼虫が胃や腸の壁を刺入して食中毒を引き起こします。アニサキスは寄生虫なので、目に見えるのが他の細菌やウイルスとは異なるところ。目視でしっかり確認すれば防ぐことができるんですね。
【注意する食材】刺身など、生の魚介類。
【症状】食後十数時間〜数日後に激しい腹痛や嘔吐などの症状が出る。
【対策法】
・新鮮な魚を選び、1尾で購入した場合は速やかに内臓を取り除く。
・内臓は生で食べない。
・目視で確認してアニサキス幼虫を除去する。
・冷凍や加熱で死滅させる。−20℃で24時間以上冷凍するか、70℃以上で加熱、もしくは60℃の場合は1分加熱する。
※食酢で処理しても、塩漬け、しょうゆやわさびで食しても、アニサキス幼虫は死滅しない。
■サルモネラ菌
十分に加熱していない卵、肉、魚などが原因で、乾燥に強く、熱に弱いのが特徴です。こう聞くと、日々よく使う卵も含まれているため、不安感が高まります。夏場はシンプルに生食を避けるのもひとつの手ですね。
【注意する食材】生卵、オムレツ、牛肉のたたき、レバ刺しなど。
【症状】食後6〜48時間で吐き気、腹痛、下痢、発熱、頭痛などの症状が出る。
【対策法】
・75℃以上で1分以上加熱する。
※内閣府食品安全委員会の資料によると、サルモネラ属菌の加熱抵抗性は菌株や含まれる食品などの条件によって必ずしも同一ではありませんが、ほとんどのサルモネラ属菌は 60℃ 15分の加熱で殺菌されるそうです。
■黄色ブドウ球菌
人の皮膚、鼻や口の中にいる菌で、傷やニキビなどを触った手で食べ物を触ると危険。この菌が作る毒素は強く、一度毒素ができてしまうと、加熱しても食中毒を防ぎにくいのが特徴です。素手で握るおにぎりなどが原因となるため、とても身近に起こりえますよね。手指に傷があるときはラップで握るなどの対策は必須です!
【注意する食材】おにぎり、お弁当、巻き寿司、調理パンなど。
【症状】食後30分〜6時間で吐き気、腹痛などの症状が出る。
【対策法】
・手指の洗浄・消毒を十分に行う。
・食品は10℃以下で保存し、菌が増えるのを防ぐ。
・傷のある手で食べ物を直接触らない。
■腸炎ビブリオ菌
生の魚や貝などの魚介類が原因で、塩分のあるところで増える菌のため、真水や熱に弱いのが特徴です。殺菌=熱湯のイメージがありますが、真水で死滅するというのを知っておくと、家庭でも対策しやすいですね。冷蔵による保管を徹底し、調理器具の洗浄や消毒を併せて行うと、より安心です。
【注意する食材】刺身、寿司など。
【症状】食後4〜96時間で激しい下痢や腹痛などの症状が出る。
【対策】
・夏季の魚介類の生食は十分注意し、わずかな時間でも冷蔵庫でできれば4℃以下に保存すること。
・調理前に真水でよく洗い、菌を洗い流す。
・75℃以上で1分以上加熱する。
・魚介類に使った調理器具はよく洗浄・消毒して二次汚染を防ぐ。
■カンピロバクター
十分に加熱されていない肉(特に鶏肉)、生野菜や飲料水などが原因で、乾燥に弱く、加熱すれば菌は死滅します。特に鶏肉に多い菌ですが、鶏肉は火の通りが早いので、周りが焼けていると油断してしまうため、食中毒対策が疎かになってしまいがち。夏場は鶏肉こそ、しっかり中まで加熱するよう気をつけてください。
【注意する食材】十分に火が通っていない鶏肉、十分に洗っていない野菜、井戸水や湧き水など。
【症状】食後2〜7日で下痢、発熱、吐き気、腹痛、筋肉痛などの症状が出る。
【対策法】
・75℃以上で1分以上加熱する。
・小児ではイヌやネコなどペットからの感染にも注意。
■腸管出血性大腸菌(O-157、O-111など)
十分に加熱されていない肉や生野菜などが原因。O-157やO-111などの種類があり、十分に加熱すれば防ぐことができます。カイワレ大根による集団感染など、過去のO-157の被害を覚えているかたも多いのではないでしょうか? 深刻な状況では死に至ることもある恐ろしい食中毒で、肉だけでなく野菜も要注意です。
【注意する食材】十分に加熱されていない肉、よく洗っていない野菜、井戸水や湧き水など。
【症状】食後12〜60時間で激しい腹痛、下痢、血が混ざった下痢などの症状が出て、症状が重いと死に至ることもある。
【対策法】・75℃以上で1分以上加熱する。
■ノロウイルス
牡蠣などの二枚貝を生や十分加熱しないで食べることなどが原因で、熱に弱く、よく冬場に耳にすることの多いウイルスです。食中毒になった人の便や吐瀉物から感染することもあるので、触った場合は石鹸でよく洗うことも感染を防ぐ大事なポイントに。
【注意する食材】十分に加熱されていない牡蠣、アサリ、シジミなど。
【症状】食後1〜2日で吐き気、激しい下痢、腹痛などの症状が出る。
【対策法】・85〜90℃で90秒以上加熱する。
・発症者の便や吐瀉物から感染しないよう、触った場合は石鹸でよく洗う。
■E型肝炎ウイルス
加熱不足の豚などの肉や内臓が原因で、海外では生水や生ものから感染する場合も。熱に弱いのが特徴で、注意すべきは豚肉。特に豚レバーは加熱処理がマストです!
【注意する食材】十分に火が通っていない豚の肉やレバーなど。
【症状】ほとんど症状は出ないが、一部の人は感染から平均6週間経つとだるくなったり、皮膚が黄色くなったり、発熱したりする。
【対策法】・生食を避け、中心まで十分に加熱する。
・食材の調理時に皮膚の傷からウイルスが体内へ入らないように注意する。
3原則は「つけない」「増やさない」「やっつける」
null厚生労働省によると、食中毒予防の三原則は「つけない」「増やさない」「やっつける」。家庭でもできる食中毒対策として、この3つの徹底を呼びかけています。
この3つを知ると、目に見えないはずの細菌やウイルスの弱点や防ぎ方が自然と見えてくる気がします。どれも家庭で行えることばかりで難しいことはありません。ぜひ今日から、調理をする際の意識を変えてみてください。
・つけない→手洗い、調理器具の洗浄や消毒など。
・増やさない→菌が繁殖しない適切な温度で保管する。調理後はすぐ食べる。
・やっつける→できるだけ生で食べるのを避ける。加熱殺菌する。
買い物から調理まで、家庭の食中毒は予防できる!
nullさらに家庭でできる食中毒対策について、管理栄養士の沼津りえさんに教えてもらいました。以下は沼津さんが普段から気をつけている、実際に行っている対策法ばかり。ぜひ今日から参考にしてみてください。
■肉や魚は買い物から注意せよ!
「食中毒対策は、買い物のときから始まっています。肉や魚などの生鮮食品コーナーには必ず最後に立ち寄るようにしています。肉や魚は最後にカゴに入れて、できるだけ常温で持ち歩かないこと。
さらに、カゴの中でも生野菜の近くには置かないようにして、菌を付けない工夫を。持ち帰る途中に肉や魚から汁が出て、野菜など他の食材に付かないよう、肉や魚は個別にビニール袋に入れるのもマストです!」
■肉や魚は冷蔵庫の中で置き場所を決める
「冷蔵庫の中では、肉や魚の置き場所を決めています。こうすることで細菌がいるかもしれないエリアをできるだけ狭め、肉や魚を使用する際は注意して出し入れするようにしています」
■解凍するときは冷蔵庫で
「冷凍した食材は室温で戻した方が早いですが、暑い時期は必ず冷蔵庫で解凍しましょう。または電子レンジを使って解凍してください」
■魚は真水で、肉は熱湯で殺菌
「魚に付着している細菌は、塩分のあるところで増えるため、真水で洗うと死滅します。なので、魚は使う前に真水でしっかり洗います。
逆に肉は熱湯で対策を。まな板は肉、魚、野菜と分けており、肉を切ったまな板は1日の最後に熱湯をかけて殺菌しています。まな板を分けるのが難しい場合は、野菜→肉の順で切るなど作業の順番を工夫してみて」
■アニサキスが心配な人は加熱は必須
「最近は海水温の上昇からアニサキスが増えているように感じます。刺身で食べたいところですが、どうしても気になる人は、やはり加熱するしかありません」
■卵はボウルや器のフチで割らないこと
「意外と見落としがちなのが卵を割るとき。卵の殻に細菌が付いている可能性もあるので、ボウルや茶碗のフチなどでコンコンと割るのは避けています。ボウルの外側で叩いて割ったり、清潔な作業台などに打ち付けて割るといいですね。割った後は手を洗うのも忘れずに」
■菜箸は生肉用を分けて使う
「調理中だけでなく、バーベキューや焼肉店などでもそうですが、生肉を触る箸は必ず分けてください。唐揚げを揚げるときなど、肉を入れる箸と、揚がってから取り出す箸は別のものを使用しています」
■75℃で1分以上、中心部まで火を通す
「厚生労働省は、食中毒対策として中心部が75℃で1分以上加熱することを推奨しています。気をつけたいのは、唐揚げやハンバーグなど一見外側はおいしそうに焼けて見えるもの。中はまだレアということもあるので、中心部までしっかり火を通してくださいね」
■調理器具の除菌・殺菌も徹底を!
「菌の温床になりやすいふきんは、絞って置きっぱなしにしないで、必ず干します。汚れが気になるときは市販の台所用漂白剤に浸け、ふきんは基本、毎日洗濯機で洗っていますね。水分があると菌が増えてしまうので、スポンジもしっかり絞って干しておくと◎。
包丁やまな板は1日の最後に熱湯をかけて殺菌を。意外と忘れがちなのがまな板の裏側。裏側もしっかり殺菌してくださいね」
細菌やウイルスは目に見えないですが、沼津さんが普段から行っているのは、まさに「つけない」「増やさない」「やっつける」の3原則でした。これを意識すると、自然と対策法が見えてきますね。
これからますます暑くなる季節、自分自身と家族の健康を守るためにも、家庭で行える食中毒対策を今日から始めてみてください。
取材協力/管理栄養士・沼津りえ 取材・文/岸綾香
【参考】
出典/厚生労働省「健康・医療 食中毒」
農林水産省「食中毒から身を守るには」
農林水産省「食中毒の原因と種類」
参考資料/内閣府食品安全委員会
https://www.fsc.go.jp/visual/kikanshi/k_index.data/anzen50_P08.pdf
東京都福祉保健局
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/oushoku.html
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/tyouen.html
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/campylo.html
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/hev.html