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「太る人」はだいたい睡眠不足!痩せたいなら夜更かしを今すぐやめて

ダイエットをしているのに全く痩せない……それって、実はダイエットに効果のない行動をとっているからかもしれません。書籍『これをやめれば痩せられる』(東洋経済新報社刊)の著者で医学博士の奥田昌子先生に、痩せられない原因のひとつを教えていただきました。

夜更かしがやめられない

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「寝ていない人ほど肥満度が高い」という研究結果をご存じでしょうか。睡眠時間が8時間から6時間、5時間と短くなるにつれて、肥満の国際尺度である体格指数(BMI)が上がります。

スナック菓子を食べながらオンラインゲームをして、夜更かししている光景が目に浮かびますが、何も食べなかったとしても、遅くまで起きているだけで太るとしたら、どうしますか?

経済協力開発機構(OECD)が、加盟する33の先進国を対象に、平均睡眠時間を比較した調査があります。2021年のデータによると、睡眠時間がもっとも短かったのが日本で、1日あたり平均7時間22分でした。2番目に短い韓国は7時間51分ですから、30分くらい差をつけられています。中国は睡眠時間が南アフリカに次いで2番目に長く、9時間2分。米国は3位で8時間51分でした。

男女別にみると、日本人女性は日本人男性より13分短く、子どもに限って比較すると、加盟国でもっとも短かったのは、やはり、日本の子どもたちだったのです。

これには高齢化も関係しています。シニア世代は眠りが浅く、夜中に目を覚ます傾向があるため、高齢化が進んだ日本は国民の平均睡眠時間が短くなりがちです。しかしながら、子どもたちまで寝ていないとなると、高齢化だけでは説明できません。

大人も子どもも忙しすぎるのは事実です。世界を混乱させた感染症の収束と、労働政策の変化に伴う人手不足で、1人あたりの仕事量が増えています。女性は仕事に加えて、どうしても家事や育児、介護の負担が男性より大きくなりがちです。子どもたちも、いったん帰宅してから習いごとに出かける例が目立ちます。

日本人女性の睡眠時間の短さは世界随一。

インターネットが睡眠を阻む

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しかし、なんといっても大きいのが、インターネット機器の普及でしょう。総務省情報通信政策研究所の「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によれば、1060代の全年代で、平日のインターネット利用時間が、テレビの試聴時間を初めて上回りました。メールの送受信、ウェブサイトの閲覧、動画サイトの視聴、オンラインゲームの利用などを合わせた時間です。

インターネットの総利用時間は、2016年に平日の1日平均で約1時間40分だったのが、2020年には約2時間48分になっています。テレビの試聴時間がほとんど変わっていないことを考えると、インターネットの利用時間が長くなれば、睡眠時間を削るしかなくなります。

睡眠時間が短いと太りやすい

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問題は、睡眠時間が短いと太りやすいことです。約1,020人を対象に、米国の大学が2005年に実施した調査によれば、7〜9時間眠る人と比べて、5時間睡眠の人は肥満率が50パーセント高く、4時間以下の人は73パーセントも高かったそうです。なぜこんなことが起きるのかというと、食欲を調節するホルモンの分泌量が変化するからです。

睡眠時間が短いと、食欲を高めるグレリンというホルモンが増え、その逆に、満腹感を生み出して食欲を抑えるレプチンというホルモンが減ります。グレリンはおもに胃で作られるホルモンで、血糖値が下がったり、胃が空っぽになったりすると分泌されて食欲を刺激します。

一方、脂肪細胞で作られるレプチンは食欲にブレーキをかけています。先に取り上げたアディポネクチンと同じく、脂肪自身が「痩せる物質」を作っているのは、脂肪の量を適切な範囲で維持するためのしくみです。体というのは、じつによくできていますね。

しかしながら、睡眠不足になるとグレリンが増えて食欲が高まる一方、レプチンが減るために、食べても、食べても満腹感が得られません。こうして、食欲に火がつきます。

糖分の多い食べ物を好むようになるなど、睡眠不足はダイエットにとってもいいことありません。

寝る1時間前はネットから離れて

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インターネットの利用で睡眠不足になるのは、ブルーライトの問題もありそうです。スマホやPC、液晶テレビなどの画面から出る青い光は、波長が短く、強いエネルギーを持っています。そのため、浴び続けると視力障害が起きるといわれた時期がありました。

その後の研究で、ブルーライトはそこまで有害ではないという主張が強くなっていますが、ベッドに入る直前まで画面をみつめていると、目がさえて寝つきが悪くなったり、眠りの質が低下して、夜中に目が覚めたりするおそれがあります。就寝する1時間前にはオフにして、部屋の照明も暗めにしてください。

ベッドの中までスマホを持ち込んではだめ。

まとめ

デブ行動……スマホ片手に寝る直前までネットサーフィン

痩せる行動……寝る1時間前はネットを見ない

奥田昌子先生。

【教えてくれた人】

奥田昌子先生

医学博士/内科医。京都大学大学院医学研究科修了。京都大学博士(医学)。博士課程にて基礎研究に従事。生命とは何か、健康とは何かを考えるなかで予防医学の理念にひかれ、健診ならびに人間ドック実施機関でのべ30万人以上の診察/診療にあたる。航空会社産業医を兼務し、ストレス対応を含む総合診療を続けている。著書に『これをやめれば痩せられる』(東洋経済新報社)、『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』(講談社ブルーバックス)、『内臓脂肪を最速で落とす』(幻冬舎新書)などがある。

『これをやめれば痩せられる』(東洋経済新報社)

『これをやめれば痩せられる』(東洋経済新報社)

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