似ているようでも違う?「リフレッシュ」と「リラックス」の違い
null笹島さんが所属する『味の素AGF』開発研究所では男女300人を対象に、ストレスを与える前後で飲みたいと思うコーヒーおよび、コーヒーを飲んだことで起こった感情の変化を観察。その結果、以下の研究結果が導き出されたそうです。
- アイスコーヒー・・・リフレッシュ効果
ストレスを感じていない平常時および、ストレスを感じている時に飲用すると好ましい。
- 深煎りのホットコーヒー・・・リフレッシュ効果
ストレスを感じている時に飲用すると好ましい。
- エチオピアコーヒー(ホット)・・・リラックス効果
ストレスを感じていない平常時に飲用すると好ましい。
- カフェオレ(ホット)・・・リラックス効果
ストレスを感じていない平常時および、ストレスを感じている時に飲用すると好ましい。

ざっくり言えば、コーヒーの飲み方によって「リラックス効果」もしくは「リフレッシュ効果」が享受されるということ。しかしながら、リラックスとリフレッシュ、意味合いとしてはかなり似ているような気がしますが、具体的にはどう違うのでしょうか?
「リラックスとリフレッシュの違いについては、こちらの『ラッセルの円環モデル』をもとに定義しています。人間の感情の動きを円環状に配置したもので、横軸が右にいけばいくほど快感が高まる感情、左にいくほど不快な感情を表します。縦軸は上にいくほど心の動きがある感情で、下にいくほど落ち着いた感情を示しているのです。リラックスもリフレッシュも心地よい感情なので右側に属するものですが、その時に心の動きが活発なものをリフレッシュ、落ち着いたものをリラックスとAGFでは定義しています」(以下「」内、笹島さん)

笹島さんのお話をもとに分かりやすく例えれば、ストレスを感じている時に「気分転換に運動しよう」「お出かけしよう」といった行動をすることでストレスが緩和されることをリフレッシュ。落ち着いた状態でゆったりしながらストレスが緩和されるのがリラックスとなります。

コーヒーを飲むシチュエーションに置き換えると、例えば仕事で煮詰まっている時に「ちょっとカフェでも行こう」と場所を変える。そこでアイスコーヒーや深煎りのホットコーヒーを飲むと、リフレッシュ効果が高まる可能性があるといえます。
一方、何気ない日常で特にストレスを感じていないタイミングで飲用するのにオススメなのは、カフェオレとホットのエチオビアコーヒーといえるようです。これによって、知らず知らずのうちにリラックスできることが期待されます。
ストレス緩和できる“深煎り”と“エチオピア”とは?
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ちなみに“深煎り”とは、一体どんなコーヒーなのでしょうか?
「長い時間かけてコーヒー豆を焙煎したものが深煎りで、豆の色が濃くてコーヒーの苦味とコクが深いのが特徴です。“フレンチロースト”や“イタリアンロースト”と表記されていることが多いですね」
もともとコーヒーの生豆は淡い緑色で、青っぽい匂いがします。焙煎という工程を経ることではじめて皆さんが連想する、あのコーヒーの色、味、そして香りが生まれるのです。焙煎が進むと豆の色が茶色を帯び始め、薄茶色(浅煎り)から茶褐色(中煎り)、さらに黒褐色(深煎り)まで変化します。浅煎り・中煎り・深煎りそれぞれで美味しさの特徴は異なりますが、ストレス緩和のリフレッシュ効果を得たいなら、深煎りを選ぶのがよさそうです。
またリラックス効果が得られるコーヒー豆・エチオピアの特徴についても伺いました。
「甘くてフルーティーな香りが非常に強いコーヒーで、多くの喫茶店で楽しむことができるメジャーな品種です。特定の地域や農園で生産されたコーヒー豆のみを使用するシングルオリジンでは『モカ』、他のオリジンとブレンドされたものは『モカブレンド』と呼ばれています」
“炭酸コーヒー”は快感が高まるけど……
nullちなみに今回の調査ではほかにもエチオピアと並ぶメジャーな品種であるコロンビアの浅煎りと中煎り、さらにはアイスコーヒーを炭酸で割った「炭酸コーヒー」も調査対象だったそうです。しかしそれらは残念ながらストレス緩和の効果は大きくなかったといいます。
「炭酸コーヒーによって心は活動的になりますが、快い感情の方向への動きは確認できませんでした。 快感情方向への動きは嗜好と相関があることが確認されているため、炭酸コーヒーが好き!という方にはリフレッシュの効果が期待できるかもしれません」
リフレッシュやリラックス効果には、快い感情への変化と、心を活動的にしたり落ち着かせたりする効果があり、その2つの軸がストレス解消には必要なのが面白いですね。
これから寒くなる季節、疲れやストレスを感じたらぜひ今回の調査結果を参考に、コーヒーを選んでみることをおすすめします!

笹島祐子さん
【取材協力】
『味の素AGF』開発研究所 笹島祐子さん
『味の素AGF』開発研究所の技術開発部 基盤技術開発グループのグループ⾧として、美味しいコーヒーのための味や香りを研究。さらにコーヒーによるココロの変化解明の研究に従事している。
東京都出身、千葉県在住。短大の春休みより某編集部のライター見習いになり、気が付いたら2022年にフリーライター歴25年を迎えていた。現在は雑誌『DIME』(小学館)、『LDK』(晋遊舎)などで取材・執筆を行うほか、『kufura』などWEB媒体にも携わる。
執筆ジャンルは、アウトドアや子育てなどさまざま。フードコーディネーターの資格も持つ。













