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「なので」を言い換えるなら?ビジネスシーンでも使える丁寧な言い方は【オトナ女子の言葉選び#13】

話し言葉でよく使われている“なので”という言葉が、書き言葉には適さない場面もあります。正しい言葉遣いが求められる場面に備えて、いくつかの言い換え表現を覚えておきましょう。

今回は『思いが伝わる語彙学』(KADOKAWA)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんに“なので”の言い換え表現について教えていただきました。

「なので」の意味は?

「なので」の意味は?

“なので”は、前の文や句で述べたことが後ろに述べることの理由や原因であることを表す言葉です。「雨なので、傘をさす」というように、連語で使います。

本来“なので”は、一語で文節を構成できる接続詞ではありません。断定の助動詞“な”の連体形(または形容動詞の連体形活用語尾)+理由を表す接続助詞から成り立ち、自立語について使う付属語です。

ところが、近年は、会話の中で自立語の接続詞として使われるケースが増えており、一部の辞書でもこのような使い方を掲載し始めています。現在、日常会話の中で「雨が降っている。なので、傘をさす」という使い方は、広く受け入れられています。

「なので」を言い換える必要があるシーンとは?言い換えの注意点は?

「なので」を言い換える必要があるシーンとは?言い換えの注意点は?

話し言葉では、“なので”が接続詞として広く使われています。しかし、上記に述べたような理由により、書き言葉で“なので”が接続詞として使われていると、違和感を覚える人は少なくありません。

目上の相手へのメールや、かしこまった文章の中では、“なので”を接続詞として使うのは避けたほうがいいでしょう。たとえば、以下のような書き言葉の中では、別の言葉に言い換えます。

【こんなときは、言い換える!】

◆例:(ビジネスメールで)在庫が不足しております。なので、通常より納期が長くなっています。

→ビジネスメールでは“なので”を接続詞として用いるのは適さない。“そのため”などに言い換えたほうがよい。

話し言葉の「なので」をどう言い換える?

話し言葉の「なので」をどう言い換える?

続いて、“なので”の言い換え表現をご紹介します。まず、話し言葉の中で使える順接の接続詞からご紹介します。

【だから】

前に述べたことが、後に述べることの理由になることを表す接続詞。日常会話でよく使われている言葉です。“だから”の由来は、“なので”と同様に断定の助動詞“だ”+接続助詞“から”です。現在は、接続詞の意味が強くなっています。

◆例文:今日はぐっすり寝た。だから、体調がとても良い。

【そういうわけで】

“そういう理由で”の意。前の事柄を受けて、類似の表現に“そんなわけで”“そのようなわけで”など。

◆例文:総務部のコピー機が修理中です。そういうわけで、本日は総務部もこのコピー機を使います。

【それで】

前意に述べたことが、後に述べることの理由になることを表す接続詞。口語的な表現です。

◆例文:うっかり、社員証を忘れた。それで、入館に時間がかかってしまった。

【そのため】

前の文を受けて、次の事柄を導く語。

◆例文:資格取得の勉強ができませんでした。そのため、合格する自信がありません。

ビジネスシーンで「なので」を丁寧に言い換えるなら?

ビジネスシーンで「なので」を丁寧に言い換えるなら?

かしこまった場面や、ビジネスメールの中でも使える“なので”の言い換え表現をご紹介します。

【したがって(従って)】

前に述べた事柄の結果として、後の事柄が起こることを表す言葉です。“従いまして”という形で使われることもあります。

◆例文:原材料が高騰しております。したがって、商品の値上げを検討する段階に差し掛かっています。

【つきましては】【ついては】

“したがって”“それゆえ”の意。前の文を受けて、使う接続詞。“ついては”を丁寧に言うときに“つきましては”という形で使います。

◆例文:本日、電車が遅延しております。つきましては、開始時間を以下のように変更いたしますので、ご確認のほどお願い申し上げます。

【それゆえ】

前に述べたことを理由にして、次の事柄を導く接続詞です。

◆例文:部長は、若い頃に大きな失敗を経験したという。それゆえ、若手社員の失敗には寛大だ。

【よって】

前の文に述べたことを理由として、次の事柄を導く接続詞です。

◆例文:貴殿は、優秀な成績をおさめました。よってここにその成績を称え表彰いたします。

「話し言葉」と「書き言葉」の使い分け

「話し言葉」と「書き言葉」の使い分け

日本語には、話し言葉では許容されているものの、書き言葉では厳しい眼差しが向けられる言葉遣いがあります。

以下のような表現は、日常会話では広く使われているものの、書き言葉では、文法的に正しい言い方をしたほうがいいこともあります。

【書き言葉では、言い換えた方がいい表現とは?】

◆例:昨日は、珍しいメニューを食べれて楽しかったです。

→正しくは“食べられて

◆例:すごいびっくりしました。

文法的に正しくは“すごく”。“とても”“大変”“実に”などのほうがよい

◆例:先輩みたく仕事ができません。

→正しくは“みたいに”“のように”など

◆例:やっぱ頼りになりますね。

→“やはり”“思った通り”など

今回、ご紹介した“なので”も、日常会話ではとても便利な表現ですが、書き言葉では別の言葉を選ぶよう、心がけたいですね。

 

取材・文/北川和子

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吉田裕子
吉田裕子

国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。

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