「やりとり」の意味は?言い換えるときの注意点は?
「やりとり」の意味は?言い換えるときの注意点は?“やりとり”(漢字表記:遣り取り)の意味は、物をとり交わすこと、言葉の受け答えをすること。
物の売買や交換、言葉の受け答えなど、双方向性のある物事に対して広く使われており、ビジネスシーンでも頻出する言葉です。
一方、注意点もあります。
“やりとり”の一語でさまざまな場面を表すことができるため、言葉の解釈が聞き手に委ねられることもあるという点です。
ちょっとした交流から、厳しい条件交渉まで、すべて全部“やりとり”という言葉を使って伝えることができるので、どんな意味を表しているのか、聞き手は文脈から推察する必要があります。
相手と共有している情報や常識が多ければ“やりとり”の一言で報告や指示の内容が伝わるかもしれません。一方、若手の社員や社外の相手には正しく伝わらない可能性もあります。
“やりとり”が使われている場面を想定しながら、言い換え表現をチェックしていきましょう。
「やりとり」はこう言い換える!場面ごとの言い換え表現
「やりとり」はこう言い換える!場面ごとの言い換え表現想定される“やりとり”の使い方と、言い換え表現をチェックしていきましょう。
(1)コミュニケーションについて述べるとき
人や部署間のコミュニケーションを表す“やりとり”の言い換え表現です。
◆例文:これからは現場と本社のやりとりをもっと活発にする必要があります。
【言い換え表現】交流、コミュニケーション、情報交換
◆例文:今は取引をしていないのですが、D社とは年賀状のやりとりが続いています。
【言い換え表現】往来、交換
(2)面識の有無について述べるとき
面識があり、連絡を取り合っている関係性を表す“やりとり”の言い換え表現です。
◆例文:確か、AさんはB社のCさんとやりとりがあったと思います。
【言い換え表現】面識がある、連絡を取っている、知り合い、付き合いがある
(3)話し合いについて述べるとき
具体的な条件面の話し合いなどを表す“やりとり”の言い換え表現です。議論などの単語を用いるよりも婉曲的で、生々しさや厳しさをぼかすことができます。
◆例文:この件については、調達部とやりとりをして決めてください。
【言い換え表現】交渉、折衝、意見の交換
(4)いきさつについて述べるとき
交渉やプロジェクトの進行の流れについて言います。
◆例文:これまでのやりとりを踏まえまして、いったん問題点をまとめました。
【言い換え表現】連絡の内容、経緯
◆例文:その日、E社の営業担当とどんなやりとりがあったか、クリアにしてください。
【言い換え表現】話し合い、議論、交渉、いきさつ
(5)議論について言及するとき
会議などでの議論で、飛び交う発言を指します。
◆例文:会議では、緊迫したやりとりが続きました。
【言い換え表現】議論、話し合い、意見の応酬、ディスカッション
あいまいな言葉を言い換える
あいまいな言葉を言い換える日本語は、あいまいな表現を用いて、具体な言及を避けることがあります。
例えば“すみません”という1語は、お礼、謝罪、呼びかけなどを包含した言葉です。聞き手は、相手の話し方や文脈から真意を“くみとる”ことが求められています。
“やりとり”も、さまざまな意味を包含したあいまいな言葉の1つです。同じ社内文化を共有している相手は真意を察してくれるかもしれませんが、そうしたケースばかりではありません。
具体的な事実が求められているときには、あいまいな表現を避け、その場にあった言葉を選ぶように心掛けたいものです。
取材・文/北川和子
国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。