「わざわざ」の意味は?言い換えるときの注意点は?
null“わざわざ”は、2つの意味がある副詞です。
- 何かのついでではなく、それ自体を目的として足を運んだり、手間暇をかけたりする様子。ねぎらいや感謝を示す際に「わざわざ来てくれてありがとう」というような形で使います。
- しなくてもいいことをわざと実行すること。行為者を非難するようなトーンで「わざわざみんなの前で注意をするなんて、配慮がない」といった形で使います。
このように、ポジティブな文脈、ネガティブな文脈、いずれのケースでも使われています。
そのため、たとえ感謝の気持ちを示すために「わざわざ来たんですね」と伝えた場合、相手との関係性、場の雰囲気、伝え方によっては、「来なくてもいいのに“わざわざ”来た」というように受け取られる可能性もあります。
こうしたコミュニケーションの齟齬を防ぐために、“わざわざ”の言い換え表現をいくつか用意しておくといいでしょう。
カジュアルな言い換え表現や、かしこまった場面での言い換え表現をご紹介します。
「わざわざ」をカジュアルに、シンプルに言い換えるなら?
「わざわざを」カジュアルに、シンプルに言い換えるなら?まず日常会話における“わざわざ”の言い換え表現をご紹介します。
【せっかく】
“せっかく”は、相手の行為が大きな価値があるという気持ちをこめて使います。その価値を生かせなかった場合は「せっかく~のに」という逆説の形で用います。
◆例文(1):せっかく来ていただいたので、部長の鈴木も呼んで参ります。
◆例文(2):せっかく誘ってくださったのに、参加できずすみません。
【お手間をおかけしました】
時間や労力をかけてもらったことに対して、感謝やねぎらいの気持ちをこめて使います。
◆例文:再送していただき、お手間をおかけしました。
【お手を煩わせて】
“煩わせる”(読み方:わずらわせる)は、相手に面倒をかけること。お礼やお詫びの言葉とともに使います。
◆例文:お忙しい中、お手を煩わせて申し訳ありませんでした。
かしこまった場やビジネスシーンで「わざわざ」を言い換えるなら?
かしこまった場やビジネスシーンで「わざわざ」を言い換えるなら?続いて、かしこまった場面での“わざわざ”の言い換え表現をご紹介します。
【ご丁寧に】
手厚く親切な行為に感謝を示す際に使います。
◆例文:ご丁寧に郵送してくださり、ありがとうございました。
【ご足労いただき】
“ご足労“(読み方:ごそくろう)は、足を運んでもらうこと。「わざわざ来てくれて」のかしこまった言い方です。
◆例文:本日はお足元の悪い中、ご足労いただきありがとうございます。
【遠路はるばる】
「遠路(読み方:えんろ)はるばる」は、時間や労力をかけて来てもらった相手に対して使います。
◆例文:この度は遠路はるばるおいでいただき、恐れ入ります。
【ご来臨】
“来臨”(読み方:らいりん)ある場所に来ることの尊敬語です。おもに書き言葉の中で使われている表現です。
◆例文:ご来臨を賜り、大変光栄です。
上記以外にも、「○○さんにご連絡いただけるとは光栄です」「弊社のことまで気遣っていただき、恐れ入ります」のように、しっかりお礼を伝えることで、結果として「わざわざ」のニュアンスを伝えることもできるでしょう。
「感謝」を相手にしっかり伝えるコツは?
「感謝」を相手にしっかり伝えるコツは?感謝を伝えるときには、相手の手間を想像しながら、気持ちを込めて伝えることが大切です。
冒頭で“わざわざ”の2つの意味をお伝えしましたが、“わざわざ”を使うときには、“お忙しい中”“ご多忙の中”などの、ねぎらいの一言を添えることで、相手への感謝が伝わりやすくなります。
また、今回ご紹介したような言い換え表現の熟語に“もらう”
「ありがとうございます」という言葉自体が、「めったにない」という意味を含むことをふまえつつ、相手が貴重な時間や手間をかけてくれたことを意識して、語彙力を活用していきましょう。
取材・文/北川和子
国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。