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そうは問屋が「卸さないor許さない」どっちが正しい?意味と例文を解説【間違いやすい日本語#41】

慣用句の「そうは問屋が……」に続く言葉は「卸さない(おろさない)」と「許さない(ゆるさない)」どっちが正解?

今回は『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんに間違いやすい慣用句の意味や使い方について解説していただきました。

「そうは問屋が卸さない」「そうは問屋が許さない」どっちが正しい?

「そうは問屋が卸さない」「そうは問屋が許さない」どっちが正しい?

皆さんは「そんなに思いどおりにならない」ことを伝える際、どちらの表現を使いますか?

  1. そうは問屋が許さない(ゆるさない)
  2. そうは問屋が卸さない(おろさない)

正解は「2」の「そうは問屋が卸さない」です。

つまり「そうは問屋が許さない」は誤り。

その理由を掘り下げていきます。

「そうは問屋が卸さない」の意味や語源は?

「そうは問屋が卸さない」の意味や語源は?

「そうは問屋が卸さない(読み方:そうは とんやが おろさない)」は、そんなに安い値段では問屋が卸売りをしてくれないという意味から転じて、「物事が思い通りになるわけではない」の意味で使われるようになりました。

問屋”は、生産者から商品を仕入れて小売店に売る役割の店や人のこと。“卸す”とは、問屋が仕入れた商品を小売店に売り渡すことです。

小売店にとっては問屋からできるだけ安い価格で購入することが望ましいのですが、問屋はこちらの思い通りの安い値段では品物を卸してくれない、問屋としても商売をしているわけですから元値を割ってまで売るわけにはいかないというのがもともとの意味です。

「そうは問屋が卸さない」の注意点は?

「そうは問屋が卸さない」の注意点は?

“問屋”という単語は“といや”と読むこともありますが、「そうは問屋が卸さない」と慣用句として使う際には“とんや”と読むのが一般的です。

また、「そうは問屋が卸さない」という言い回しは、現代日本語では慣用句として定着しており、国語辞典にも掲載されています。しかし、慣用句として使われるようになったのは近代以降だと言われており、明治期の文献には「そうは問屋が許さない」という表現も見られるようです。

「そうは問屋が許さない」を「そんなに筋が通らないことは、許されない」という意味で使っている人が多いと推測されますが、現代日本語では「そうは問屋が卸さない」と言う表現が定着していますので、留意しましょう。

「そうは問屋が卸さない」の例文は?

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「そうは問屋が卸さない」の例文をご紹介します。

・あの人はいつも調子がいいことばかり言っているが、そうは問屋が卸さない

・自分だけ楽をしようとしてもそうは問屋が卸さない

・3,000円の商品を2,000円にまけてくれだなんて、そうは問屋が卸さない

・顧客が大幅な値下げを要求してきたが、昨今の資源高を踏まえればそうは問屋が卸さない

・A社は我田引水の契約内容を提案してきたが、そうは問屋が卸さないという感じだ。

「そうは問屋が卸さない」を言い換えると?類似の表現は?

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「そうは問屋が卸さない」と類似の意味を含む言い回しをご紹介します。

(1)「筋が通らない」

「筋(読み方:すじ)が通らない」物事の道理が通らないこと。無茶な要求など、物事の筋道から外れた事柄に対して使います。

【例文】

・そんな無茶な要求は、筋が通らない

(2)「無茶」

“無茶”(読み方:むちゃ)は、道理に合わないこと。

【例文】

・明日までに納品してくれといっても、それは無茶です。

(3)「そんなに甘くない」

物事に対する見通しや判断が安易である場合、見通し通りにいかないことをけん制するために使う表現です。

【例文】

・この問題を簡単に考えているようだが、そんなに甘くない

(4)「理不尽だ」

弱い立場の人間に対し、道理に合わない要求を無理に押し通そうとする様子をいいます。

【例文】

経済力に物を言わせて、隣国に理不尽な条件を突きつけている。

 

以上、国語講師の吉田裕子さんに「そうは問屋が卸さない」の意味や使い方についてお届けしました。

筋が通らない誰かのふるまいについて言及するとき、語感やニュアンスで「そうは問屋が許さない」という表現を使っていた方もいるかもしれませんが、正しい言い回しは「そうは問屋が卸さない」です。覚えておきたいですね。

 

取材・文/北川和子

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吉田裕子
吉田裕子

国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。

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