「奇特」の使い方、正しいのはどっち?
「奇特」の使い方、正しいのはどっち?“奇特”の正しい意味はどちらだと思いますか?
- 優れて他と違って感心なこと
- 奇妙で珍しいこと
正解は「1」。
文化庁が過去に行った『国語に関する世論調査』では、正解率が49.9%と半数を切っており、間違いやすい日本語の1つだと言えます。
「奇特」の意味は?
「奇特」の意味は?“奇特”(読み方:きとく)の意味は、行いや心がけが特にすぐれていて感心なこと。殊勝であること。普通はしないような善行や努力をしている人をほめる際に使う表現です。
“奇才”“奇術”などの言葉から、普通とは異なる変わっている様子を連想する方がいるようですが、“奇特”の“奇”には「素晴らしい」の意味も含まれています。
「奇特」の注意点は?
「奇特」の注意点は?“奇特”という言葉を使ったり、解釈したりするうえで注意する点は2つ。
(1)「変わっている人」の意味では使わない
しばしば“奇特”という言葉が、“風変わりな”“マニアックな”という皮肉めいたニュアンスで使われているケースがあります。本来は、優れた心がけや言動について使う言葉です。以下のような使い方は間違いです。
【NG例文】
・彼は、誰にも理解されないような、奇特な趣味を持っている。
→「とても変わった」などの意味で使うのは誤り。
(2)目の前の相手に対するほめ言葉で使う際には注意
“奇特”は、第三者をほめるときに使うことが多い言葉です。
直接面と向かって相手に「あなたは奇特ですね」という言い方をした場合、相手との関係性によっては、上の立場から評価しているような印象を与える可能性があります。
【要注意例文】
・部長って、思っていたより奇特な方なんですね。
→心がけや人物を評価する言葉なので、目上の相手に直接使うのは避けたほうが良い場合もある。
「奇特」の例文は?
null“奇特”を用いた例文をご紹介します。
・彼のように奇特な方は滅多にいない。
・隣人は率先して近所の掃除をしてくれる奇特な人だ。
・毎朝ゴミを拾うとは、奇特な心がけですね。
「奇特」を言い換えると?類語は?
「奇特」を言い換えると?類語は?“奇特”の類似の意味を持つ言葉をご紹介します。
(1)「殊勝」
“殊勝”(読み方:しゅしょう)は、心がけや行動が感心な様子。
【例文】
・その選手の殊勝な心がけはメディアから絶賛されている。
(2)「健気」
“健気”(読み方:けなげ)は、殊勝な様子。こころがけがよいこと。年少者や力の弱い者が困難に立ち向かうために立派にふるまう様子を表すことが多い言葉です。
【例文】
・困難に直面してもくじけない主人公の健気さが視聴者の胸を打った。
(3)「感心」
心を動かされるほど立派である様子。
【例文】
・部内の郵便物配布の仕事を進んで行うとは、感心な心がけですね。
(4)「立派」
“立派”(読み方:りっぱ)は、とてもすぐれている様子。幅広いシーン使われている言葉です。
【例文】
・先輩の立派な心がけを私も真似したいと思います。
「奇妙で変わっている」の類似の表現は?
null“奇特”の意味を「奇妙で変わっている」と勘違いしている人がいます。「奇妙で変わっている」と類似の表現を集めましたので、参考にしてみてください。
(1)「珍妙」
“珍妙”(読み方:ちんみょう)は、珍しくて変わっていること。変わっていておもしろみのある物を形容するさいに使います。
【例文】
・そのアーティストの珍妙なパフォーマンスは、観衆に大きな印象を残した。
(2)「珍奇」
“珍奇”(読み方:ちんき)とは、珍しく変わっていること。
【例文】
・彼は、珍奇な動物をこよなく愛している。
(3)「風変わり」
“風変わり”は、おもむき・性格・行動などが普通とはちがっていること。
【例文】
・ずいぶん風変わりな趣味を持っているんですね。
(4)「エキセントリック」
風変わりな様子を表すカタカナ語。
【例文】
・彼は一見エキセントリックに見えますが、常識を踏まえています。
以上、国語講師の吉田裕子さんに“奇特”の意味を解説していただきました。
“奇特”は、素晴らしい心がけや人物に対して使う言葉であることを踏まえておきたいですね。
取材・文/北川和子
国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。