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「雪辱を果たす」「雪辱を晴らす」どっちが正しい?意味と使い方を解説【間違いやすい日本語#40】

「雪辱」という熟語を掘り下げると、一緒に使う動詞の選び方が見えてきます。

今回は『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんに「雪辱」の意味や使い方について解説していただきました。

「雪辱を果たす」「雪辱を晴らす」どっちが正しい?

「雪辱を果たす」「雪辱を晴らす」どっちが正しい?

雪辱”の意味は、恥や汚名を消し去ること。負けた相手に勝つこと

一度負けた相手に勝利したときに「雪辱を果たす」「雪辱を遂げる」「雪辱する」という形で使うのが一般的です。

しばしば「雪辱を晴らす」という言い回しが見受けられますが、文法的には誤りです。その理由をひもとくために“雪辱”という熟語の構成を掘り下げていきましょう。

「雪辱」の意味は?「雪辱を晴らす」が誤りの理由は?

「雪辱」の意味は?「雪辱を晴らす」が誤りの理由は?

“雪辱”は中国由来の熟語です。

意味は「不名誉な恥を除き払う」こと。「“辱”(意味:恥・不名誉)を“雪ぐ”(意味:すすぐ・除き払う)という成り立ちです。この場合の“”は、天気を表す言葉ではなく“すすぐ”という動詞です。

「雪辱を晴らす」という使い方をすると、“晴らす”(取り除く)と“雪ぐ”(除き払う)の意味が重複し、訳すと「辱を取り除くことを取り除く」となってしまいます。これは「腹痛が痛い」「電車に乗車する」のように、同じ意味の言葉が重なった“重言”であり、日本語の文法的には誤りです。

「雪辱を晴らす」はNG、「屈辱を晴らす」はOKの理由は?

「雪辱を晴らす」はNG「屈辱を晴らす」はOKの理由は?

先述したように「雪辱を晴らす」は文法的に誤りですが、「屈辱(読み方:くつじょく)を晴らす」は誤用ではありません。

屈辱”の意味は、屈服して受ける恥のこと。「屈辱を晴らす」の形で「恥を取り除く」という意味になります。

一方「屈辱を果たす」という言い回しは、誤りです。「雪辱を果たす」「屈辱を晴らす」は混同しやすい表現ですので、注意しましょう。

「~を果たす」と「~を晴らす」の使い分けは?

「~を果たす」と「~を晴らす」の使い分けは?

混同しやすい「~を果たす」と「~を晴らす」ですが、以下の例を見て、使い分け方法をチェックしてきましょう。

【「~を果たす」の例(意味:~を成し遂げる)】

・雪辱を果たす
・責任を果たす
・目的を果たす
・任務を果たす
・当選を果たす

【「~を晴らす」の例(意味:~を取り除く)】

・屈辱を晴らす
・汚名を晴らす
・鬱憤を晴らす
・疑いを晴らす
・恨みを晴らす
・無念を晴らす

「雪辱を果たす」の例文は?

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続いて「雪辱を果たす」を用いた例文をご紹介します。

・次の試合では必ず雪辱を果たしてみせる。

・今回の仕事の成功は、以前の雪辱を果たしたとも言えよう。

・あの映画では、主人公が雪辱を果たす場面がとても印象的だった。

「雪辱を果たす」を言い換えると?類語は?

「雪辱を果たす」を言い換えると?類語は?

「雪辱を果たす」と類似の意味を持つ表現をご紹介します。

(1)「逆襲する」

「逆襲する」は、攻撃されていた者が、反対に攻撃に転じること。

【例文】

・これまで市場で劣勢だったA社が、逆襲する準備を着々と進めている。

(2)「リベンジする」

“リベンジ”は、仕返しのこと。敗戦した相手と再び戦う“雪辱戦”のことを“リベンジマッチ”と呼ぶこともありますね。

【例文】

・虎視眈々とリベンジする機会をうかがっていた。

(3)「捲土重来」

“捲土重来”(読み方:けんどちょうらい/けんどじゅうらい)は、一度負けた者が、勢いを取り戻して反抗すること。

【例文】

・かつて不祥事で評判が地に落ちたA社は、地道な取り組みを継続して捲土重来を期した。

(4)「臥薪嘗胆」

“臥薪嘗胆”(読み方:がしんしょうたん)は、リベンジや大きな目的を果たすために、長い間の苦労に耐えること。

【例文】

・何年にも及ぶ臥薪嘗胆を経て、雪辱を果たした。

 

以上、国語講師の吉田裕子さんに「雪辱を果たす」の意味や使い方について解説していただきました。

スポーツやビジネスのシーンでよく使われる言葉ですので、正しい使い方を覚えておきましょう。

 

取材・文/北川和子

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吉田裕子
吉田裕子

国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。

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