「足をすくわれる」の意味とは?
「足をすくわれる」の意味とは?相手のすきにつけ入り、相手を失敗や負けに導くことを「足をすくう」と言います。「足をすくわれる」と受身の形で使うときには、何かを試みているときに不意をついて邪魔をされる様子を表します。
“すくう”の漢字表記は“掬う”。水などを手ですくうという意味の動詞で、下から上にすばやく持ち上げて、横にはらう動作を表すこともあります。相撲では“すくい上げ”“小股すくい”といった技があり、いずれも素早く技をかけて相手を倒す技です。
「足をすくわれる」ではなく「足下をすくわれる」を使ってもいい?
「足をすくわれる」ではなく「足下をすくわれる」を使ってもいい?「足をすくわれる」は、成功や前進の邪魔をされるときの慣用句です。近年は「足下(読み方:あしもと)をすくわれる」という言い回しも広く使われていますが、本来は誤用です。
おそらく「足下を見られる/足下につけこまれる(意味:弱みにつけこまれること)」「足下に火が付く(意味:危険が迫る)」など、“足下”を用いた慣用句・ことわざと混同しているケースも含まれていると推測されます。
また、「足下をすくう」は本来は誤用とされていますが、その正否には諸説あります。
「“足下”(足元・足許)は、立っている足の下を指し、“すくう”ことはできないから誤り」という主張がある一方で、「足下は大まかに足の下のほうを指すからあながち間違いではない」という声もあります。中には「“足下をすくう”と言う表現が過去の文献で使われていた」という声もあります。
こうした事柄を踏まえると、誤用とされる「足下をすくう」という表現を使っている人がいても、失敗をあげつらって「足をすくう」必要はないかもしれません。
「足をすくわれる」の例文は?
null「足すくわれる」の例文をご紹介します。
・油断をしていると足をすくわれることになる。
・足をすくわれないように注意しよう。
・今まで親切にしてきた部下に足をすくわれる。
「足をすくわれる」を言い換えると?類語は?
「足をすくわれる」を言い換えると?類語は?「足をすくわれる」と類似の意味を持つ言葉をご紹介します。
(1)「寝首をかかれる」
「寝首(読み方:ねくび)をかく」は、相手が油断しているすきに卑怯な方法で相手を陥れること。わなや策略によって、好ましくない状態に陥れられたときに使う表現です。
【例文】
・だしぬけの発表だったので、寝首をかかれた気分だった。
(2)「小股をすくわれる」
「小股(読み方:こまた)をすくう」は、相手のすきをついて自分の利益を計ること。
【例文】
・出世頭の彼に小股をすくわれた同僚は数多くいるとの噂だ。
(3)「足を引っ張られる」
「足を引っ張る」は、成功や前進を妨げること。悪意がない行為に対しても使うことがあります。
【例文】
・古い組織なので、斬新なアイディアを打ち出す社員は足を引っ張られる傾向がある。
(4)「飼犬に手を噛まれる」
「飼犬(読み方:かいいぬ)に手を噛まれる」は、面倒を見てきた者にひどく裏切られることのたとえ。部下や後輩など、かわいがってきた人に裏切られたときに使う表現です。
【例文】
・信頼していた部下が何も相談せずに競合他社に転職して、飼犬に手を噛まれたような気分だった。
(5)「不意をつかれる」
「不意をつかれる(突かれる)」は、予想外のことを仕掛けられること。「不意を食らう」「不意を討たれる」といった表現をする場合もあります。
【例文】
・不意を突かれる形で、敵対的買収の第一報が入ってきた。
以上、国語講師の吉田裕子さんに「足をすくわれる」という言葉の使い方をご紹介いただきました。
「すくう」の動作の意味とあわせて、使い方を覚えておきましょう。
取材・文/北川和子
国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。