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正解率28%…「失笑」とは笑うこと?笑わないこと?「苦笑」「冷笑」「嘲笑」との違いも解説【間違いやすい日本語#14】

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“失笑”は、意味を間違いやすい日本語の1つ。近年、本来の意味とは異なる意味が定着しつつあることが、ややこしさに拍車をかけています。今回は“失笑”という言葉の解説をお届けします。

“失笑”について解説していただいたのは、『印象が飛躍的にアップする 大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「失笑」の意味とは?

“失笑”(読み方:しっしょう)という言葉は、本来どのような意味なのでしょうか。

  1. こらえ切れず吹き出して笑う
  2. 笑いも出ないくらいあきれる

答えは(1)。笑ってはいけないような場面で、我慢できずに吹きだして笑うことを意味する言葉です。

ところが「国語に関する世論調査」では、20~30代の8割が「2」の「声も出ないくらいあきれる」と回答しています。笑わせようとして、逆にしらけてしまうような場面をイメージする人が多いと推測されます。

“失笑”の“失”はおもに”うっかり“と“失う”の2種類の意味があります。本来は「ついうっかり笑ってしまう」という意味ですが、「笑いを失う」という意味で認識している人が多いようです。

「失笑を買う」は「笑われる?」「しらけさせる?」

「失笑を買う」という慣用句の本来の意味は、「おかしな言動のために人から笑われる」という意味です。しかし、現在は「あきれた言動で、場をしらけさせる」という意味で使われるようになっています。

面白いことを言ったのに、笑わせられなかった場合に「失笑を買った」と自虐的に言う場面も見受けられます。

本来の意味とは異なる意味が浸透し始めており、過渡期にある言葉だといえます。

「失笑」の使い方の注意点は?

“失笑”は、「つい吹きだしてしまう」という意味ですが、実際には「笑いも出ないほどあきれる」と認識している人が多くなっている言葉です。

思わず笑ってしまった状況を説明する際に“失笑”という表現を使うと、真意が伝わらない可能性がありますので、ご注意ください。

【要注意例文】

・さっきの部長のスピーチで失笑しましたよ。

→笑いたかったのか、しらけてしまったのか伝わりにくい。思わず笑ってしまった場合、言い換え表現を使ったほうがベター。

「苦笑」「冷笑」「嘲笑」との違いは?

“失笑”と混同しやすいのが、“苦笑”“冷笑”“嘲笑”の熟語です。

それぞれの意味の違いを確認しておきましょう。

(1)苦笑

【意味】

にがにがしく思いながら、仕方なく笑うこと。苦笑い。自分の状況についても使う表現です。

【例文】

・ミスを指摘されて、思わず苦笑した。

(2)冷笑

【意味】

“冷笑”(読み方:れいしょう)は、あざわらうこと。人のことを見下して笑うこと。悪意を含んだ冷ややかな笑いに対して使われる言葉です。

【例文】

・人の努力を冷笑するのは、あの人の悪い癖だ。

(3)嘲笑

“嘲笑”(読み方:ちょうしょう)は、ばかにしてからかうように笑うこと。笑いものにすること。

【例文】

・あのコメンテーターの間違った発言は、世間の嘲笑の的となった。

「失笑」の例文

続いて“失笑”を使った例文をご紹介します。

【本来の失笑(意味:思わず吹き出すこと)の例文】

・普段ひょうきんな彼がまじめに話すのを見て、失笑してしまった。

・厳粛な式の最中、司会者の言い間違いに失笑した。

・その映画の主人公は、笑ってはいけない場面で笑ってしまう失笑恐怖症を患っていた。

実際には、以下のような文脈で使われることが多くなっています。

【広く使われている失笑(笑いも出ないほどあきれる)の例文】

・見当違いな質問をすると失笑されかねない。

「失笑」の類語は?

“失笑”の言い換え表現をご紹介します。本来の意味で使うと真意が伝わりにくいと感じた場合には、以下のような表現に置き換えてみてください。

(1)「吹きだす」

“吹きだす”は、こらえきれずに笑い出すこと。“吹く”は、内にあったものが外に出てしまうの意。思わず笑ってしまうような場面で使う言葉です。

【例文】

・彼のキョトンとした顔を見て、吹きださずにはいられなかった。

(2)「思わず笑ってしまう」

そうしようと思っていたわけではないけれど、笑ってしまうときによく使われる表現です。日常会話でもよく使われていますよね。

【例文】

・今日のできごとを思い出して、思わず笑ってしまった。

(3)「笑いを誘われる」

笑いの感情が引き起こされること。

【例文】

・2人のテンポよい掛け合いに笑いを誘われた

 

以上、国語講師の吉田裕子さんに“失笑”という言葉について解説していただきました。

相手が“失笑”という言葉を使っていたら、「白ける」「笑う」どちらの意味で使っているのか、文脈から推測する必要がありそうですね。

 

取材・文/北川和子

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【参考】
平成23年度「国語に関する世論調査」の結果の概要 – 文化庁

プロフィール

吉田裕子
吉田裕子

国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。

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