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「陳腐」の正しい意味は?「ばかげている」という意味はある?【間違いやすい日本語#9】

“陳腐”は、ネガティブな意味を持つ単語です。間違った文脈で使うことのないよう、正しい意味を覚えておきましょう。

“陳腐”について解説していただいたのは、『印象が飛躍的にアップする 大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「陳腐」の意味とは?

「陳腐」の意味とは?

“陳腐”(読み方:ちんぷ)は、時代遅れありふれていて平凡つまらないといった意味があります。

“陳”は古い、“腐”はくさるの意。目新しさがなく古臭い様子を表す際に使われています。

「陳腐」の使い方の注意点は?「ばかげている」という意味はある?

「陳腐」の使い方の注意点は?「ばかげている」という意味はある?

“陳腐”の使い方の注意点は以下の3点です。

(1)「陳腐」には「ばかげている」の意味はない

“陳腐”は、“ありきたり”“時代遅れ”という意味ですが、しばしば“ばかげている”という意味で使っていると思われるケースがあります。

過去に国語辞典の『大辞泉』(小学館)が行った『ことばの総泉挙』では、2割超の人が「ばかげている」という意味を選択していました。

【要注意例文】

・カッとなって会社を辞めるなんて陳腐なことをしたものだ。

→“ばかげた”という意味で使っているのなら、間違い。

(2)「陳腐」と「チープ」を混同しない

また、チープ(安っぽい)と陳腐は音感が似ており、2つの言葉を混同している人もいます。以下のような使い方をしないように注意しましょう。

【要注意例文】

・その服の素材は陳腐だからやめたほうがいいと思うよ。

→“チープ”(安っぽい)の意味で使っているなら、間違い。

(3)目の前の相手に対して使うときには要注意

“陳腐”は、自分とある程度距離感のある対象を批評する際や、自虐的な文脈で使われる言葉です。侮蔑的なニュアンスを含むので、目の前の人に直接使うとか、身近な相手に使うとかいう場合には、使い方に注意が必要です。率直に意見を言い合う雰囲気・状況のときだけにした方が安心です。

「陳腐」の例文は?

「陳腐」の例文は?

“陳腐”を使った例文をご紹介します。

陳腐な台詞にはうんざりした。

陳腐な言葉ですが、本当に感動しました。

・私たちでは、陳腐なアイディアしか出てこなかった。

「陳腐」を言い換えると?類語は?

「陳腐」を言い換えると?類語は?

続いて“陳腐”の類語をご紹介します。

(1)「ありきたり」

ありふれていること。陳腐であること。

【例文】

ありきたりの品質では、顧客を満足させることはできない。

(2)「ありふれた」

平凡でどこにでもあること。珍しくないこと。

【例文】

ありふれた話だが、いざ自分の身に降りかかると平常心ではいられなかった。

(3)「古ぼけた」

古くなって色あせること。古くなった物に対して使うことの多い言葉です。

【例文】

古ぼけた価値観をアップデートするために、講座を受講した。

(4)「平凡な」

ごくふつうで、特に優れたところがないこと。

【例文】

平凡な発想しかできない自分にうんざりした。

(5)「手垢のついた」

“手垢のついた”(読み方:てあかのついた)は、多くの人に使い回されたこと。

【例文】

手垢のついた言い回しを多用しては、聴衆の心をつかむことはできない。

(6)「クリシェ」

使い古された陳腐な常套句(決まり文句)のこと。英語では“cliche”。

【例文】

・その映画はクリシェが満載だが、映像の迫力に圧倒された。

「陳腐」の対義語は?

「陳腐」の対義語は?

“陳腐”の対の意味を含む言葉をご紹介します。

(1)「斬新な」

“斬新”(読み方:ざんしん)は、きわだって新しいこと。目新しいこと。

【例文】

・失敗をいとわない斬新なチャレンジが組織を活性化させる。

(2)「革新的な」

“革新的”(読み方:かくしんてき)は、制度や組織を新しく変えるようなこと。

【例文】

革新的な取り組みで、業界の注目を集めている。

(3)「画期的な」

“画期的”(読み方:かっきてき)は、新しく時代を区切るほど、めざましいこと。

【例文】

・彼女は画期的なアイディアで、参加者をうならせた。

(4)「定番」

“陳腐”が目新しさがなく古臭いというネガティブを持つのに対し、“定番”は、流行などに関わりなく決まりきった型でも一定の評価を集めていること。

【例文】

・このジャンルは目新しいものよりも、定番商品の評価が高い。

 

今回は、国語講師の吉田裕子さんに“陳腐”という言葉について解説いただきました。

ネガティブな意味を持つ言葉なので、正しい意味を踏まえておきたいですね。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)。東京大学卒業。

【参考】

ことばの総泉挙 – 大辞泉

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