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「吃驚」の意味は?「びっくり」と読むこともある?

“吃驚”という言葉を検索すると、“びっくり”という読み方が目に入ると思います。こうした読み方は、どんな場面で使われる言葉なのでしょうか。今回は“吃驚”という言葉について掘り下げていきます。

【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#99】では、『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんに“吃驚”について解説していただきます。

「吃驚」の意味とは「驚くこと」。どう読むのが正解?

「吃驚」の意味とは「驚くこと」。どう読むのが正解?

“吃驚(喫驚)”の読み方は“きっきょう”。“驚くこと”を意味する文章語です。

しばしば“びっくり”と読ませるケースもありますが、後から漢字を当てはめた“当て字”です。現代日本語において“びっくり”を“吃驚”とつづるのは、文学作品やコミックなどに限られており、ふりがなを振ってある場合がほとんどです

漢字の知識のある読み手なら“吃驚”を“びっくり”と読むことができるかもしれませんが実際のビジネスメールや手紙の中では、“びっくり”はひらがなでつづるのが一般的です。

「吃驚」の使い方の注意点は?

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“吃驚”の使い方の注意点は、以下の2つ。

(1)一般的な文章では“びっくり”をひらがなでつづる

先述したように“吃驚”の一般的な読み方は“きっきょう”です。

お手持ちのパソコンやスマートフォンで“びっくり”を漢字変換すると“吃驚”が変換候補としてあがってくると思いますが、読み手にとっては難読な漢字なので、ひらがなでつづります。

【要注意例文】

・今朝の突然の電話で吃驚して目を覚ましました。

“びっくり”の読み方で使っているのなら、ひらがなに直した方がよい

(2)“吃驚(きっきょう)”は、対話の相手の驚きを指すことは少ない

“吃驚(きっきょう)”と読む場合、こちら側の驚きや第三者の驚きをかしこまった文章語で表すために使います。対話している相手の驚きを指して使うことはほとんどありません。目上の相手についても同様です。

【要注意例文】

・今回の件では、さぞ吃驚(きっきょう)されたことと思います。

相手を主語にして“吃驚(きっきょう)”使うことはほとんどない。例文の場合は「さぞ驚かれたことと思います」などの表現がベター。

「吃驚」を使った例文は?

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“吃驚(きっきょう)”を使った例文をご紹介します。話し言葉で使われることはありませんが、書き言葉の中で目にすることがあるかもしれません。

【「吃驚(きっきょう)」の例文】

・彼の退職の意向を耳にはさみ、吃驚した。

・予想外の影響の広がりに吃驚しています。

【「吃驚(びっくり)」の例文】

続いて、“吃驚”に“びっくり”という読み方を当てている文章の一例をご紹介します。

吃驚して、狼狽して、遂に憤然となッて……(二葉亭四迷『浮雲』より)

最近では大人気コミックの『鬼滅の刃』の中でも“吃驚”に“びっくり”とふりがなが振られている場面がありました。

「吃驚」を言い換えると?例文は?

「吃驚」を言い換えると?例文は?

続いて“吃驚”の類似表現をご紹介します。

(1)「驚愕」

“驚愕(読み方:きょうがく)”は、非常に驚くこと。思いもよらなかった事態が起きたときに使われています。

【例文】

驚愕の事実が判明した。

(2)「驚嘆」

“驚嘆(読み方:きょうたん)”は、驚いて感心すること。ポジティブな文脈で使われることの多い言葉です。卓抜したスキルや、素晴らしいものを目の当りにしたときにも使われています。

【例文】

・新入社員が担当した図面のあまりの精巧さに誰もが驚嘆した。

(3)「唖然」

“唖然(読み方:あぜん)”は、びっくりして開いた口がふさがらない様子。あきれた様子を表す際に使います。

【例文】

・クレーム報告に対するA社の言い分に唖然とした。

(4)「度肝を抜かれる」

“度肝(読み方:どぎも)を抜く”は、ひどく驚かすこと。多くは“度肝を抜かれる”と受け身の形で使われます。

【例文】

・彼の秀でたスキルに度肝を抜かれた

(5)「寝耳に水」

“寝耳(読み方:ねみみ)に水”は、思いがけないことが起こって驚くこと。

【例文】

・今回の人事異動は、寝耳に水だった。

 

以上、“吃驚”の読み方や、類似表現についてお届けしました。

“吃驚”には“きっきょう”と“びっくり”の2つの読み方があります。“びっくり”と読む場面は限定的ですが、今後、どこかで目にする場面もあるかもしれませんので覚えておくと役立つかもしれません。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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