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「存じます」正しく使えていますか?「ご存じ」との混同に注意

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ビジネスシーンでよく使われる「存じます」という表現。間違って使われることが多い言葉です。謙譲語と尊敬語の違いを踏まえながら、意味や正しい使い方を覚えておきましょう。

【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#96】では、『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんに、「存じます」について説明していただきます。

「存じます」の意味とは?

存じます」は「思う」「考える」の謙譲語「存ずる(存じる)」に、丁寧語の「ます」をつけた言葉。単に「思います」と言うよりも一段階あらたまった丁寧な表現として「存じます」が使われています。

例えば、「ありがたく存じます」などというときには、「ありがたく思います」と言うよりも丁重な言い方となります。

「存じる」は、へりくだって自分側の動作を表すことで動作の受け手への敬意を示す「謙譲語Ⅰ」ではなく、自分側の動作をより丁重に述べる「丁重語/謙譲語Ⅱ」に分類されます。

「存じます」はどんなシーンで使う?

ビジネスシーンにおいては、以下のような場面で使われています。

(1)目上の相手に考えや予定を伝えるとき

「~しようと思います」という言い方を丁寧に伝える際に、「~したく存じます」という表現を用います。

【例文】

・詳細については、後日あらためてお伝えしたく存じます

(2) 依頼をするとき

話し言葉・書き言葉、いずれの場合にも使われています。「~してください」という直接的な表現に謙虚さを添える表現として高い頻度で使われています。

【例文】

・訂正した請求書をご送付いただきたく存じます

「存じます」の使い方の注意点は?よく見かける間違った使い方

「存じます」の使い方で特に注意したいのは以下の2点です。

(1)「ご存じ」は尊敬語で「存じます」は謙譲語

「存じます」は謙譲語で、基本的に自分を主語にして使う言葉です。一方「ご存じ(である)」は尊敬語で、動作主を敬って使う言葉です。間違いがよく見受けられますのでご注意ください。

【NG例文】

・A課長は、B社の担当者を存じていますか

「存ずる」は謙譲語なので、目上の相手を主語にして使うことはない。この場合は「ご存じですか?」を使う。

(2)「存じ上げる」と「存じます」の使い分け

「存じます」と「存じ上げます」は類似の表現ですが、使われる場面が異なっています。

先述したように「存じます」は思っていること、知っていることを丁寧に表す表現であり、知っている対象に敬意を示していません。一方「存じ上げます」は、目的語となる“知っている人”“知っている物”への敬意を示す際にも使われています。

【NG例文】

・今回、私も同席したいと存じ上げております

単に「思います」の意味で「存じ上げております」を使わない。この場合は「存じます」を用いる。

【OK例文】

・C社のD部長のことは、よく存じ上げております

知っている対象への敬意を示す場合には「存じ上げる」を使う

「存じます」の例文は?

「存じます」の例文を通じて使い方をイメージしていきましょう。

・今回のお気遣い、ありがたく存じます

・一度お試しいただければ幸いに存じます

・ご多忙のことと存じますが、よろしくお願いいたします。

・その方法がよろしいかと存じます

・月曜までにご連絡いただきたく存じます

「存じます」を言い換えると?類語は?

「存じます」と類似の意味がある表現をご紹介します。

(1)「思います」

「思います」は、話し言葉でもよく使われています。「存じます」と比べると、話し手の主観が強調される表現です。

【例文】

・お忙しいかと思いますが、ぜひご参加ください。

(2)「思われます」

「思う」に自発(あるいは受身)の助動詞を付けた形にすることで、自分個人の意見ではなく「一般的にはこういうことだ」というニュアンスを含む表現となります。

【例文】

・今回の件でD社はかなり焦っていると思われます

(3)「拝察します」

目上の相手の事情や心中を推し量ること。相手の事情や、業界の状況に対して、想像が及んでいることを表す言葉です。

【例文】

・経営体制の変更で多忙な日々を送っていることと拝察します(拝察いたします)

(4)「思料します」

“思料(または思量/読み方:しりょう)”は、思いはかること、考えること。法曹界でしばしば使われる言葉です。単に「~と思います」ではなく、事実に基づいた考えであることを示し、客観性を持たせるために使われています。

【例文】

思料した結果、過失があったと判断いたしました。

 

以上、今回は国語講師の吉田裕子さんに「存じます」の使い方を解説していただきました。

混同しやすい言葉とあわせて使い方を覚えておきたいですね。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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