「不易流行」の意味とは?「温故知新」との違いとは?
「不易流行」の意味とは?「温故知新」との違いとは?“不易流行”の意味は「変わることのないものと、変化し続けるもの」。転じて、現在の日本語では伝統を踏まえながら新しいものを取り入れていくことを表す際に使われるようになっています。
“不易流行”のルーツは、俳人の松尾芭蕉の理念として、
俳諧には、変わらない“不易”な本質の面と、
現代日本語では、経営理念などの伝統的な本質をふまえながら、
「不易流行」と「温故知新」の違いは?
温故知新は、昔のことを学んで新しい価値観や知識を得ること。
伝統を踏まえながらどんどん新しいものを取り入れていくことを表す不易流行とは、意味が異なっています。
「不易流行」はどんなときに使うといい?
null“不易流行”は、経営理念や座右の銘として使われることのある言葉です。
“不易”を「ビジネスの軸となる変わらない考え方」、“流行”を「時代の変化に合わせて変化していくこと」ととらえ、2つのバランスを上手に両立していくことを目指す際の言葉として使われています。
「不易流行」の例文は?
「不易流行」の例文は?「不易流行」は以下のような文脈で使われています。
・「不易流行」をモットーに、新事業を成功させよう。
・古くからの大企業だが、新しいことにも挑戦している。まさに不易流行だ。
「不易流行」の使い方の注意点は?よく見かける間違った使い方
「不易流行」の使い方の注意点は?よく見かける間違った使い方“不易流行”は、“変わらないこと”“日々移ろっていくこと”の両面を表す言葉です。相反する2つの意味を含む点がこの言葉のユニークなところなのです。しばしば、一方のみの意味で使っている例が見られますが、それは間違いです。
【要注意例文】
・私のふるさとへの思いは、不易流行だ。
・不易流行の自然に圧倒された。
→「ずっと変らない」「悠久の」といった意味で使っているのならNG。
・世の中は常に不易流行だ。
→「常に変化している」という意味で使っているのなら、NG。
「不易流行」を言い換えると?
null“不易流行”は、もともと俳諧の理念。言葉の意味合いが独特なので、類義語や同義語にあたる単語はありません。ビジネスシーンでよく聞かれる連語の中から、似ている言葉をピックアップします。
伝統と革新
長い歴史を経て培われた“伝統”と、古くからの方法などを変えていく“革新”。2つのバランスの重要性を説く際に使われる表現です。
【例文】
・企業にも伝統と革新が求められている。
「不易流行」の対義語はある?
null“不易流行”と正反対の対義語はありません。そもそもこの言葉自体が“変わること”“変わらないこと”の2つの意味を合わせて持っているからです。
“不易流行”とは対の文脈で使われるのが、 “変わること”だけの意味を持つ言葉、“変わらないこと”の意味だけを持つ言葉ではないでしょうか。
そうした言葉をいくつかご紹介します。
(1)「万代不易」(ばんだいふえき)
永久に変わらないこと。他にも「万古不易」「千古不易」といった類義語があります。いずれも、長い間、変わらないことを表します。
【例文】
・人は人を変えることはできない。それは、万代不易の真理である。
(2)「墨守」(ぼくしゅ)
古い習慣やスタイルを頑固に守り続けていること。融通がきかないこと。
【例文】
・組織の不文律を墨守していては、変革を達成することはできない。
今回は“不易流行”という言葉について国語講師の吉田裕子さんに解説していただきました。
企業のホームページの中にもしばしば登場する言葉です。意味を覚えておくと役立つのではないでしょうか。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。