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「畏敬の念」の意味と使い方は?間違いやすい点を解説します

“畏敬の念”はどのような感情なのでしょうか。“尊敬”との違いは? 【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#90】では、“畏敬の念”の意味や使い方、注意点などを掘り下げていきます。

“畏敬の念”について解説していただいたのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「畏敬の念」の意味とは?

「畏敬の念」の意味とは?

畏敬の念(いけい の ねん)”とは、畏れ多く(おそれおおく)思うほどに相手を敬う気持ち

崇高な存在、偉大な存在、神秘的な存在に対する畏れ敬う気持ちを表すときに使われる表現です

人物だけでなく、圧倒的な自然や神秘的な現象などに対しても使われています。

「畏敬」と「尊敬」の違いは?

“畏敬”は、近寄りがたいほどに偉大な対象に対して抱く感情。“尊敬”は、人の人格や行動を優れたものとして敬う感情。

身近な対象にも“尊敬の念”を抱くことはありますが、“畏敬の念“は、偉大な存在に対して抱く感情を表します

英語でも“畏敬”は“awe”、“尊敬”は“respect”と使い分けます。

「畏敬の念」はどんなときに使うといい?

「畏敬の念」はどんなときに使うといい?

“畏敬の念”は、圧倒的な存在である人物を畏れ敬う気持ちを表す際に使います。

偉大な存在の人物を紹介するときや、ほめたたえるときにも使われることがあります。

自分が属する組織内の人物について言うとしたら、経営陣や年齢差のある上司、上司の上司など、やや距離のある“畏れ多い存在”に対してでしょう。

「畏敬の念」の使い方の注意点は?よく見かける間違った使い方

「畏敬の念」の使い方の注意点は?よく見かける間違った使い方

“畏敬の念”の使い方の注意点は、以下の2点です。

(1)「畏怖(いふ)」と「畏敬(いけい)」の違いに注意

“畏怖”と“畏敬”は、字の並びは類似していますが、意味は異なります。“畏怖”は、おそれおののくこと。ただただ圧倒されて、固まってしまうようなイメージを伴います。

“畏敬”は、偉大な相手を敬う気持ちを表します。

(2)身近な対象にはあまり使わない

“畏敬の念”は、先述したように偉大な対象を畏れ、敬う気持ち。

身近な相手に対して使うことはあまりありません。以下のような場面では、別の表現におきかえるほうがいいでしょう。

【要注意例文】

・いつも嫌な顔をせず電話応対をする同期の田中さんに畏敬の念を抱いている。

→身近な相手に使うと仰々しい印象を与えるので、この場合は別の表現を使った方がよい。

「畏敬の念」の例文は?

「畏敬の念」の例文は?

“畏敬の念”の例文を通じて使い方をイメージしていきましょう。

・先代の社長の先見の明には畏敬の念を感じずにはいられない。

・彼女の人並外れた才能を目の当りにして、畏敬の念に打たれた。

・彼は、畏敬の念をもって山を見上げた。

・その分野の大家と呼ばれる教授に畏敬の念を抱いている。

「畏敬の念」の言い換え表現や類語は?

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“畏敬の念”と類似の意味を含む言葉をご紹介します。

(1)「崇拝(すうはい)」

“崇拝”は、あがめ敬うこと。宗教的なものに対しても使う言葉です。

【例文】

・その歴史的な人物は、生誕地で現在も崇拝されている。

(2)「敬愛の念」

“敬愛”は、敬い親しみの心を持つこと。身近な相手に対しても使うことができます。

【例文】

敬愛の念をもって恩師をお迎えした。

(3)「敬服」

“敬服”は、感心して敬い従おうとする気持ちを抱くこと。

【例文】

・部長の根回しの巧みさに敬服した。

(4)「仰ぎ見る(あおぎみる)」「仰ぐ(あおぐ)」

“仰ぎ見る”は、立場が上の物者を敬うこと。

【例文】

・私が師と仰ぎ見るA先輩は、社内で随一のスペシャリストだ。

「畏敬の念」の対義語はある?

「畏敬の念」の対義語はある?

“畏敬の念”の正反対の意味を持つ対義語にあたる言葉はありませんが、対の意味を含む言葉をご紹介します。

(1)「軽侮の念(けいぶ の ねん)」

“軽侮”は、文字通り軽く見て、侮ること。

【例文】

・上司のあのふるまいに軽侮の念を抱いた。

(2)「軽蔑(けいべつ)」

“軽蔑”は、劣ったものとして軽んじて見下すこと。

【例文】

・あまりの怒りに軽蔑の表情を隠せなかった。

(3)「こばかにする」

人を見くびって、軽蔑するような態度をとること。

【例文】

・彼の人をこばかにしたような態度は、いつか誰かの逆鱗に触れるだろう。

 

以上、国語講師の吉田裕子さんに“畏敬の念”という言葉について解説していただきました。

圧倒的な存在に対して抱く“畏敬の念”という感情。尊敬とは重みが異なりますので、ご注意ください。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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