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「表題の件」と「標題の件」どっちが正しい?意味と使い方を解説

「表題の件」は、ビジネスメールが使われるようになってから急速に広がった表現です。

【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#84】では、「表題の件」という言葉について掘り下げていきます。

解説していただいのは、『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「表題の件」はどんな意味で使われている?「標題」でもいい?

「表題の件」はどんな意味で使われている?「標題」でもいい?

表題(ひょうだい)”の意味を皆さんのお手持ちの国語辞典で調べると、書物の名講演や演劇の題目などと記されていると思います。

インターネットが普及してからは、“表題”がメールの件名を指して使われる場面が増加しました。「表題の件」は、メールの件名について言及するときの表現として、ビジネスシーンに定着しつつあります。

“表題”は“標題”と表記されることもあります。

「表題の件」はどんな場面で使う?

「表題の件」はどんな場面で使う?

「表題の件」は、ビジネスメールの中で使われている表現です。

メールの件名に要件を端的に記し、本文の中で詳細を述べる際に使われています。

職場や業界の雰囲気によっても異なると思いますが、業務連絡であれば、件名の中に必要事項を端的に記し、本文で同じ言葉の繰り返しを避けて「表題の件、よろしくお願いします」などと記す場合もあるでしょう。

「表題の件」の使い方の注意点は?目上の相手に使っていい?

「表題の件」の使い方の注意点は?目上の相手に使っていい?

「表題の件」を使う際の注意点は、以下の2点です。

(1)目上の相手に対する使い方は組織や業界によって異なる

「表題の件」はメールの中で頻出する表現ですが、ビジネスメールの歴史は浅いため、使い方のルールは確立されていません。

目上の相手に気軽に使ってよいかどうかは、現時点では「企業や組織によって異なる」というのが実情です

例えば、メールの件名に要点を表記して、「表題の件、よろしくお願いします」という使い方をよく目にします。効率化を重要視する組織・業界であれば、相手のポジションに関わらずそうした使い方が一般的になっている場合もあるでしょう。

一方、目上の相手に対するメールの中では、「表題の件」と略さずに丁寧に説明するように指導されている現場もあるかもしれません。

(2)「表題の件」を「標題の件」と表記することもある

“表題”は“標題”とも表記します。辞書によっては「“表題”は書物に、“標題”は演説や作品に」と使い分けるという説明もあります。

ビジネスシーンのメールの件名については「表題の件」という表現が広く使われていますが、「標題の件」と表記しても間違いではありません。

「表題の件」の例文は?

「表題の件」の例文は?

「表題の件」の例文をご紹介します。

表題の件について、ご相談があります。

表題の件につきまして資料を添付いたしました。

表題の件の詳細をお知らせいたします。

・さて、表題の件について1件ご相談がございます。

「表題の件」を言い換えると?類語は?

「表題の件」を言い換えると?類語は?

「表題の件」の類似の意味を含む表現や言い換え表現をご紹介します。

(1)「掲題の件(けいだいのけん)」

「掲題の件」という表現もメールの普及に合わせてビジネスシーンで広がっていった表現です。「表題の件」と同様に、メールの件名について本文で言及する際に用いられています。

【例文】

掲題の件ですが、詳細につきましては添付の資料をご覧ください。

(2)「前述(ぜんじゅつ)」「先述(せんじゅつ)」「上述(じょうじゅつ)」

メールの中で1度述べたことをもう一度伝える際、繰り返しを避けるために使います。

【例文】

前述した通り、当日は弊社の技術担当者も同行いたしますので、よろしくお願いいたします。

上述の理由により、原料の調達が遅延しております。

 

今回は、国語講師の吉田裕子さんに「表題の件」という言葉の使い方を解説していただきました。

「表題の件」という言葉をインターネットで検索すると、記事ごとに内容のバラつきが見られます。比較的新しい表現ですので、使い方の正解・不正解を定義するのは、難しい点があることも覚えておきましょう。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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