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「心許ない」の読み方や意味は?「心細い」との違いも解説【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#76】

“心許ない”は、社会人になると耳にする機会が増える言葉の1つです。どんな場面で使われているのでしょうか。

今回は“心許ない”の意味や使い方について掘り下げていきます。

解説していただいたのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「心許ない」の意味は?

「心許ない」の意味は?

心許ない”の読み方は“こころもとない”。

現代日本語では、頼りなくて不安なさまを表しています。

“心許ない”は古くから使われており、気持ちが落ち着かない様子を表す言葉でした。

楽しみなことが待ち遠しくてソワソワとするようなポジティブな意味でも使われていましたが、現代日本語ではもっぱら不安な気持ちを表すために使われています

ビジネスシーンで「心許ない」はどんなときに使う?例文は?

ビジネスシーンで「心許ない」はどんなときに使う?例文は?

“心許ない”は、ビジネスシーンにおいては以下のような場面で使われています。

(1)現在の状況に対して不安を示すとき

プロジェクトや作業などをすすめていくにあたり、確実性や安定感が少ない状況を表すときに使います。仕事の現場では、自分の“心細い”気持ちを表すだけでなく、客観的な視点から使うことの多い言葉です。

【例文】

・大切なプレゼンを担当するのは新人だけでは心許ないので、フォローが必要だ。

・現状の人員配置で間に合うかどうか心許ないので、再検討をお願いします。

・1人の証言だけでは心許ないので、事実確認が必要です。

(2)誘いを断るとき

社内外のつきあいの誘いを受けたときには「無理」とははっきりと断りづらいものです。遠回しに誘いを断る際に、「ふところが心許ない」「財布が心許ない」といった表現が使われることがあります。

【例文】

・お誘いはうれしいのですが、給料日前でふところが心許ないので、また誘ってください。

私生活においても、心の置き所がなく不安に思うさまを“心許ない”という言葉で表すことがあります。

「心許ない」の使い方の注意点は?

「心許ない」の使い方の注意点は?

“心許ない”は、話し言葉でも書き言葉でも使われる言葉です。

メールなど、書き言葉の中で使う場合には、心もとない”と表記したほうが相手にとって読みやすいかもしれません。

「心許ない」を言い換えると?類語は?

「心許ない」を言い換えると?類語は?

“心許ない”と類似の意味を含む言葉をご紹介します。

(1)「おぼつかない」

“覚束ない(おぼつかない)”は、“はっきりしない”の意。ものごとがうまく進むかどうかはっきりしないとき、頼りない様子を表すときに使われています。

【例文】

・こんな営業計画では、黒字化どころか赤字額の削減さえおぼつかない

・足元がおぼつかない

(2)「心細い」

頼るものが少なく安心感に欠ける場合に使われています。自分自身の気持ちを表すときにもよく使われる言葉です。

【例文】

・自分と同じ立場の社員が1人もおらず、心細いです。

(3)「頼りない」

人に安心感を与えない様子を表すときに使います。

【例文】

・彼は人柄はいいが、少し頼りない

(4)「危なっかしい」

失敗しそうで心もとない様子を表します。

【例文】

・新入社員のAさんの電話対応は少々危なっかしいけれど、注意深く見守るしかないね。

「心許ない」の対義語は?

「心許ない」の対義語は?

“心許ない”の対の意味を含む言葉をご紹介します。

(1)「心強い」

頼りにできるものがあって安心感があるさまを表します。

【例文】

・御社に協力をいただけるとは、とても心強いです。

(2)「頼もしい」

頼りになりそうな様子のこと。まかせておいて安心な様子を表すときに使われています。

【例文】

・彼女は、常に臨機応変な対応ができるので、わが社にとって頼もしい存在です。

(3)「盤石(ばんじゃく)」

“大きな岩”という意味を持ち、揺らぐことのない安定感のある様子を表すときに使います。

【例文】

・A社は、いくつもの対策を講じて盤石な体制を築いた。

 

今回は、国語講師の吉田裕子さんに“心許ない”の意味や使い方について解説していただきました。

「心配だ」「不安だ」という直接的な表現と比べて、やや古風で婉曲的な表現ですので、使い方を覚えておくと役立つのではないでしょうか。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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