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「的を射る」の意味と使い方は?「的を得る」は誤用?【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#61】

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的確に要点をつかむことを「的を射る」という慣用句で表すことがあります。同様の意味で「的を得る」という表現も使われています。いったい、どちらの言い方が正しいのでしょうか。今回は「的を射る」の意味や、言い換え表現、類義語・対義語についての解説をお届けします。

解説していただいたのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「的を射る」の意味とは?

的を射る(まと を いる)」は、物事の肝心な点を確実にとらえることの意。

“的”は、弓を“射る”際の目標のこと。弓が的に見事に命中する様子から「物事の核心や要点を的確にとらえる」という意味で使われるようになりました。

「的を射る」と「的を得る」はどちらが正解?論調に変化も…

「的を射る」と「的を得る」を混同している人は少なくないようです。

結論から言うと、これまでは「的を射る」が正しいとされてきましたが、「的を得る」も1つの慣用句として認められつつあります。

文化庁が平成24年度に実施した「国語に関する世論調査」によれば、「物事の肝腎な点を確実に捉えること」を意味する言葉として「的を射る」を選択した回答者の割合が5割、「的を得る」と回答した人は4割。回答結果は拮抗していました。

時代の移り変わりとともに、慣用句「的を射る」から「的に向かって弓を射る」映像を連想する人が減ったことも、この回答に影響していることでしょう。「射る」よりも、「命中する」「期待通りの結果を得る」という印象のほうが強くなり、「当を得る」との混同もあって、誤用とされていた「的を得る」も広く使われるようになっているのです。

このような風潮を踏まえ、最近では「的を得る」という言葉を慣用句として追加した国語辞典も見受けられます。

「的を射る」はどんな場面で使う?

ビジネスシーンにおいて、会議や打ち合わせなどの場面で、アイディアや指摘が的確であることを「的を射ている」という言葉で表すことがあります。

「的を射ていない」と否定形で用いることで、相手の指摘や考察のピントがずれていると批判することもあります。

「的を射る」の注意点は?目上の相手にも使える?

「的を射る」という言葉は、相手の発言やアイディアを上の立場から批評しているような印象を与える恐れがあります。そのため、目上の相手に対して「的を射る」という表現を使わない方が良い場面もあります。

【要注意表現】

・私も同じことを思っていました。部長の指摘はズバリ的を射ていますよ。

→上記のような使い方は“上から目線”のような印象を与えることもある。相手との関係性によっては「おっしゃる通りだと思います」などの表現に置き換えた方がよい。

「的を射る」の例文は?

「的を射る」の例文を通じて使い方をイメージしてみましょう。

・A氏の指摘は的を射ていると思う。

・取引先の的を射ない言動を残念に思った。

・本人は反発しているが、的を射た忠告であることは誰の目にも明らかだ。

「的を射る」を言い換えると?類語は?

続いて「的を射る」の類語や言い換え表現をご紹介します。

(1)「核心をつく」

物事の本質的な部分を指摘すること。「核心に触れる」などの言い方もあります。しばしば「核心をつく」と「的を射る」を混同して「的をつく」という誤用も見受けられますのでご注意を。

【例文】

・先日のレポートは問題点の核心をついている

(2)「正鵠(せいこく)を射る」「正鵠を得る」

「的を射る」の類義語。“正鵠(せいこく)”とは、的の中心の黒ぼしのことで「正鵠を射る」は、物事の核心をつくこと。「正鵠を射る」「正鵠を得る」いずれの慣用句も使用可能です。主に書き言葉で使われる表現です。

【例文】

・部長のその指摘は正鵠を射ている

(3)「当を得る」

「当を得る」とは、理にかなっていて適切であること。「的を射る」とは少々意味が異なりますが、混同しやすい表現なので、覚えておきましょう。

【例文】

・一見、当を得たような対策に見えますが、私は違和感を覚えます、

(4)「いい得て妙」

じつにうまく言い当てていること、巧みに言い表していること。

【例文】

・その例えは、いい得て妙だ。

「的を射る」の対義語は?

「的を外す」

「的を射る」と対の意味を持つ対義語には、「要点を外す」という意味がある「的を外す」などがあります。名詞で「的外れ」とも言います。

【例文】

・彼女の推測は、的を外れています。

 

今回は国語講師の吉田裕子さんに「的を射る」という言葉について解説して頂きました。

「的を射る」と「的を得る」は、言葉が時の流れとともに少しずつ変化していることがわかる貴重な例だと思います。

語源とともに覚えておきたいですね。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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