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「部長のコンセンサスを…」はなぜNG?「コンセンサス」の使い方と例文を解説【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#39】

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“コンセンサス”という言葉は、どんなときに使われているのでしょうか。ビジネスシーンを想定した使い方や、よくあるNG使用例を解説します。

解説して頂いたのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

辞書に載っている「コンセンサス」の意味とは?

まず最初に国語辞典に掲載されている“コンセンサス”の意味をチェックしてみましょう。

 <デジタル大辞泉>
意見の一致。合意。「社内のコンセンサスを得る」 合意・意気投合

百科事典の『日本大百科全書』(小学館)には、このような意味も書かれています。

<日本大百科全書>
重要問題(外交政策、憲法体系、基幹経済政策など)や、社会の基本的価値に関する広範な同意・受容をいう。システムの目標・目的、目標達成手段・方法、意思決定装置の構成、紛争処理技法・手続、意思決定者の補充方法などに関する広大なコンセンサスの存在は、社会的凝集力を強化・促進する統合力となるが、妥協の精神、限りあるものを分かち合う精神がメンバーやリーダーに備わっていなければ、その形成・維持は困難である。

ちなみに英語の“consensus”は、意見や感情などの一致、統一見解、(大多数の)一致した意見のことを指します。

ビジネス用語として主に使われるのはどの意味?「合意」との違いは?

ビジネスシーンにおいては“コンセンサス”“合意”“関係者の意見の一致”という意味で使われています。

“合意”と“コンセンサス”は、同様の意味を持つ言葉ですが、実際のビジネスシーンでは 少し違った意味で使われる場面もあります。

“合意”は“互いの意見の一致”を意味し、“合意に至った”などと使うように、互いの意思表示が明確となり、結論が出たときによく使われます。それに対し、“コンセンサス”は、部署や組織のメンバーに対して根回しや説得を行うプロセスを経て、皆の合意が確認できている、という状態を表すことが多いです。

ビジネスシーンにおける「合意を得る」と「コンセンサスを得る」の微妙な違いは、日本語の難しさでもあり、さらには、日本のビジネスの難しさを象徴する例だと言えるかもしれません。

ビジネスシーンでは「コンセンサス」はどんなときに使う?「コンセンサス方式」とは?

“コンセンサス”は以下のような場面で使います。

・アイディアや協議事項に対して、関係者や組織のメンバーの賛同を得るとき

・複数の人の意見がまとまったことを報告するとき

仕事を進めていく過程で、関係者の意見が一致したことを報告するときなどに使います。

コンセンサス方式”という言葉もあります。これは、会議で何かを決めるとき、明確な反対が出なければ、全会一致で賛成が得られたとみなすことを指しています。国連などで採用されている決議方法ですが、多数の参加者がいる会議で承認を得ながら進行をする場合に「コンセンサス方式で行います」といった形で使われることがあります。

「コンセンサス」の使い方の注意点は?NG使用例は?

続いて、“コンセンサス”のよくあるNG使用例をご紹介します。

■要注意表現(1):「同意」「許可」と「コンセンサス」を混同している

“コンセンサス”を個人の“同意”や“許可”と混同して使われているケースが見受けられます。“コンセンサス”は複数のメンバー・大多数の関係者の意見がまとまったことを指して使うのが一般的です。

【NG例文】

・納品日の変更について、A部長のコンセンサスは取っているの?

→コンセンサスは組織や、複数のメンバーの意見が一致したことを示す言葉。例文の場合は、“同意”“許可”などの言葉を使う

■要注意表現(2):「コンセンサスをする」

(他者の)コンセンサスを得る”という言い方が一般的で、自分を主語として“コンセンサスをする”という言い方はありません。

自分が主語なら「私は賛成します」「同意します」でいいでしょう。会社によっては「アグリーです」というカタカナ語を使う例も見られます。

【NG例文】

・本件について、コンセンサス致します。

自分を主語として“コンセンサス”を使うことはない

また“合意に達する”という表現はよく使われていますが、“コンセンサスに達する”という表現はあまり使われていません。完全な間違いではないのですが、コンセンサスは、目的達成のために根回しをしている途中過程という印象の強い言葉なので、多少違和感があります。

コンセンサスを得た後に、正式な手続きが待っていることもあります。例えば、”やっとコンセンサスが得られたので、早いうちに契約書の準備をしよう”という使い方も見られます。

「コンセンサス」の例文は?

いくつかの例文を通じて“コンセンサス”の使い方をイメージしてみましょう。

・新プロジェクトについて社内のコンセンサスを得た。

・会議の前に営業部のコンセンサスを得ておいてください。

・まずは、関係者のコンセンサスを得てから次のステップに進みましょう。

・マンションの大規修繕工事には、住人のコンセンサスを得る必要がある。

「コンセンサス」の関連語は?

続いて“コンセンサス”の類義語や、関連語をご紹介します。

(1)「合意」

“合意”は互いの意見が一致すること。

【例文】

・来年度の年俸について繰り返し協議しているが、まだ合意に達していない。

・双方合意の上で、新規の契約が成立した。

(2)「根回し」

交渉や会議などで事がうまく進むように、非公式の場で“合意の形成”をしておくこと。

【例文】

・事前の根回しが功を奏して、コンセンサスを得ることができた。

(3)「アグリーメント」

特定の人・特定の部署などの“同意”を指して使われることがあります。

根回しの過程をイメージさせたり、関係する複数の人物の同意をあらわしたりする“コンセンサス”とは異なり、“アグリーメント”は単に“賛成”や“合意”の意味合いが強くなっています。

【例文】

・送付した見積額について先方のアグリーメントを得られたので、受注の準備をしておいてください。

 

今回は“コンセンサス”の意味を解説して頂きました。

ひょっとしたら「日本語で合意と言えばいいのに」と感じたことがある方もいらっしゃると思います。とはいえ、実際のビジネスシーンでは“合意”と“コンセンサス”が微妙に違った意味で使われる場面も多いようです。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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