「不文律」の意味とは?対義語は?
null“不文律”とは、具体的な文章にはされていないものの、暗黙のうちに組織の中で守られている決まりやルールのことです。
“不文”は文章に記されていないこと、“律”は決まりを意味しています。文章の形式で示されている“成文律”の対義語です。
「不文律」の使い方は?どんなときに使われている?
null“不文律”は、以下のような場面で使われることがあります。
(1)ビジネス上の慣習などを指して
契約書で取り決めていないようなビジネス上の慣習や業界の暗黙のルールなどを指して“不文律”という言葉を使うことがあります。
【例文】
・業界の不文律を破ったことで急成長した企業もある。
(2)組織の中の“暗黙の了解”に言及するとき
規則には書かれていないものの、
【例文】
・当社にはまだ「長時間労働をいとわない人が高く評価される」という不文律があるように感じます。
「不文律」の使い方の注意点は?よく見かける間違った使い方は?
null“不文律”という言葉を使う際の注意点は、以下のようなものがあります。
(1)マニュアルや就業規則に書かれていることは「不文律」ではない
先述したように“不文律”は非公式なルールや組織で引き継がれている慣習のこと。既に明文化されているルールのことではありません。
【要注意例文】
・残業する場合には、申請をするのが不文律です。
→就業規則に明記されている場合は、“不文律”ではない。
(2)「タブー」「禁止事項」と同義ではない
“不文律”
【NG例文】
・課長を飛ばして部長にいきなり報告するのは不文律だよ。
→”やってはいけないこと”の意味では使わない。「まずは課長に報告をするのが不文律だよ」という使い方なら可。
「不文律」の例文は?
null例文を通じて“不文律”の使い方をイメージしてみましょう。
・業界の不文律を破る勇気はありませんでした。
・新入社員にとっては不文律を把握するのは難しい。
・長年の不文律を解消した社長に敬意を表したい。
「不文律」の類語は?言い換え表現は?
null続いて“不文律”の類語や言い換え表現をご紹介します。
(1)「暗黙の了解」
公にはされていないけれど、当事者の間で理解・承認されていること。“不文律”よりも耳にする機会が多い表現です。
【例文】
・両者の間には暗黙の了解があるようです。
(2)「紳士協定」
正式な手続きは踏まずに互いの良心に基づいて結ぶ取り決めのこと。国家間の取り決めで使われていた言葉でしたが、組織間の取り決めにおいても使われることもあります。
【例文】
・A社との紳士協定により互いの重要顧客へのアプローチを避けている。
(3)「不文法」
法律用語。文書によって制定されることなく成立した法や規律のこと。
【例文】
・海外には、慣習に従う不文法が重視されている国もある。
以上、今回は国語講師の吉田裕子さんに“不文律”の意味や使い方を解説して頂きました。
“不文律” は、しばしば重要な局面で登場することがある言葉なので、正しい意味を把握しておきたいものです。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。