「紆余曲折」の意味とは?
null“紆余曲折”の読み方は“うよ きょくせつ”。
曲がりくねっていること、事情が込み入っていることを意味する言葉です。
“紆余”が道が曲がりくねっていること、“曲折”が折れ曲がって変化が多いことを示すことから、曲がりくねった道を苦労しながら進むような様子を表します。
ビジネスシーンでは「紆余曲折」はどんなときに使う?
nullビジネスシーンにおいては、プロジェクトなどを振り返って総括する際、途中に経験したさまざまな苦労を一言でまとめるときに使うことがあります。書き言葉でも話し言葉でも使われています。
「紆余曲折を経る」「紆余曲折がある」といった形で使うのが一般的です。
【例文】
・紆余曲折を経て、ようやくこの日を迎えることができました。
「紆余曲折」の使い方の注意点は?「試行錯誤」との違いは?
nullパソコンやスマートフォンで“紆余曲折”と入力する際には正しく変換されると思いますが、手書きの際には間違いやすい漢字です。
“迂余曲折”“紆余曲節”などと書き間違えないように注意しましょう。
試行錯誤との違いは?
“紆余曲折”は、過去を振り返る際に使われることが多い言葉です。例えば「紆余曲折を経てがんばります」というような未来の意思表示をする際に使われることはほとんどありません。
対して“試行錯誤”は成功と失敗を繰り返しながらも積極的に工夫をしていきたいと意志表示をする際にも使うことができます。
【「試行錯誤」例文】
・試行錯誤を重ねて改善に導きたいと思います。
【「紆余曲折」例文】
・紆余曲折ありましたが、なんとか改善することができました。
「紆余曲折」の例文は?
null“紆余曲折”を使った例文を通じて使い方をイメージしていきましょう。
・紆余曲折のある道のりだったが、大成功を収めることができた。
・紆余曲折を経て現在の収益を確保できるようになりました。
・紆余曲折の末、素晴らしい実績を残すことができました。
「紆余曲折」を言い換えると?類語は?
null続いて、“紆余曲折”と類似した表現をご紹介します。
(1)「悪戦苦闘」
困難を乗り越えるために厳しい状況の中で努力をすること。“紆余曲折”は込み入った事情を指すのに対し、“悪戦苦闘”は困難にうちかつために“努力する”というニュアンスが含まれています。
【例文】
・悪戦苦闘の末、最悪の状況を脱することができた。
(2)「二転三転」
情勢・態度などが時とともに何度も変わることの意。変化が多くスムーズにはいかないことを指して使われています。
【例文】
・二転三転しましたが、ついに結論が出ました。
(3)「難航する」
物事が順調に進まずに苦労すること。今後の見通しを指して使うこともあります。
【例文】
・捜査は難航することが予想されています。
(4)「一進一退」
進んだり後戻りしたりすること。なかなか順調には進まないことを指して使われます。
【例文】
・一進一退を繰り返して、ようやく合意の形成に至った。
「紆余曲折」の対義語は?
null“紆余曲折”の対義語(対の意味を持つ言葉)には以下のような言葉があります。
(1)「順調」
物事が滞りなく進むこと。日常会話でもよく使われる言葉です。
【例文】
・プロジェクトは順調に進んでいます。
(2)「順風満帆」
追い風を帆いっぱいに受けて船が順調に進むことから、物事が順調に進むさまを指します。
【例文】
・彼のキャリアは順風満帆に見えた。
(3)「つつがない」
病気や災害がなく、平穏無事であること。
【例文】
・私はつつがなく日々を暮らしております。
(4)「破竹の勢い」
勢いが激しく、とどめることができないこと。紆余曲折は曲がりくねって遠回りをしている言葉ですが、まっすぐに勢いよく伸びていく様子を指して使います。
【例文】
・あの新興企業の売り上げは、破竹の勢いで伸びている。
以上、今回は国語講師の吉田裕子さんに“紆余曲折”という言葉を掘り下げて頂きました。
“紆余曲折”と類似した表現もありますが、意味が少しずつ異なっていることがおわかり頂けたと思います。さまざまな場面で登場する言葉なので、使い方を覚えておきましょう。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。