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「留意」を使うシーンは?「注意」との使い分けは?【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#51】

ビジネスシーンでは“留意”と言う言葉をよく耳にします。どのような場面で使われているのでしょうか。今回は“留意”の意味や使い方、よくある誤用例をご紹介します。

解説して頂いたのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「留意」の意味とは?

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留意”の意味は、ある物事を心にとどめておくこと。常に気を付けることです。

「留意」と「注意」の違いは?

“注意”と“留意”の意味は類似していますが、同じ意味ではありません。

注意”は、具体的な物事、特定の対象に神経を集中させること、用心することを意味します。

【例文】

・足元にご注意ください。

対して“留意”は、もう少し漠然としたことに対して継続して意識を向けることを意味する言葉です。

【例文】

・健康に留意してください。

「留意」はどんなシーンで使う?目上の相手にも使える?

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ビジネスシーンにおいては、心に留めておいたほうがいいことを伝えるために使われています。今すぐ何か具体的な問題が生じるような場面ではなく、念のため、気にかけておくような場面で使います。

“気を付ける”や“用心する”よりもマイルドな言い回しで、継続して意識を傾けるように促すときに便利な表現です。「忘れ物をしないよう注意してください」というと、相手に対して失礼になりかねませんが、「持ち物にご留意ください」であれば、使うことができます。

【例文】

・明日は総会ですので、服装にはご留意ください。

目上の相手にも使うことができます。

私生活では「留意」を使う?

“留意”はやや硬めの言葉なので、プライベートの日常会話においては“気に留める”“頭の片隅に入れておく”などの柔らかい表現のほうが伝わりやすいかもしれません。

「留意」の使い方の注意点は?よく見かける間違った使い方

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“留意”を使う際の注意点は2つあります。

(1)今、具体的な行動を望むときには使わない

相手に具体的なリスクを伝えてスピーディな行動を期待するときには別の表現を使います。

【NG例】

・館内の感染症対策には、細心の留意を払ってください。

何か具体的なリスクがある場合には“注意”のほうが適している。また、“細かいことまで注意を払う”という意味を持つ“細心”と“留意”を一緒に使うことはない

(2)目上の相手に使うとき

顧客や上司に対しても、“留意”を使うことはできます。ただし、内容次第では出過ぎた提言をしているように聞こえる可能性があります。

【NG例】

・部下の書類の承認時には、間違いがないかちゃんと留意してください。

相手の職責上やって当たり前のことに対して「留意してください」を使うと、相手のやる気や能力を見くびっているかのようです。相手に違和感を与える恐れがあります。

「留意」の例文は?

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“留意”を使った例文を通じて使い方をイメージしていきましょう。

・消費動向の推移に留意する必要があります。

・今私が述べた点に留意しながら、もう一度資料に目を通して頂けますか?

・この件に関しては口外されませんようご留意願います。

・くれぐれも健康にご留意ください。

・先日ご案内した通り、会議の開始時間が変わりましたので留意ください。

「留意」を言い換えると?類語は?

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続いて“留意”の言い換え表現や類似の表現をご紹介します。

(1)「念頭に置く」

“念頭に置く”は、覚えていて心にかけること。“留意“と類似した表現です。

【例文】

・今回の件を念頭に置いて今後の対応に活かしていきたいと思います。

(2)「含みおく」

ビジネスシーンにおいては、取引先や顧客に対して念のため把握をしておいて欲しいことを伝えるために用います。柔らかい響きなので日常会話の中でも使いやすい言葉です。

【例文】

・悪天候の場合は、納品が遅延することもありますのでお含みおきください

(3)「配慮」

深く考えて心を配ること。心づかい。留意と比べて“気づかい”という意味が強くなります。

【例文】

・各位ご配慮くださいますようお願いします。

・今回は、いろいろとご配慮いただきありがとうございました。

(4)「用心」

悪いことが起こらないように気をつけること。リスクが想定されるときに使う言葉です。

【例文】

・急な変化にはご用心ください。

・あのクライアントには用心しておいたほうがいいよ。

 

以上、今回は国語講師の吉田裕子さんに“留意”の意味や使い方について解説して頂きました。

“留意”と“注意”の意味の違いに留意して、上手に使い分けていきたいですね。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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