いつ始める?引継ぎ前に覚えておきたい「引き継ぎ開始のタイミング」
nullまず最初に覚えておきたいのが、直属の上司や人事部に退職の意思を伝えたら、すぐに業務を引き継ぎ……というわけにはいかない、ということです。どのタイミングで同僚・取引先に退職について知らせるのか、上司と相談をして決めることが大切です。
引き継ぎ開始は、同僚や取引先に退職について伝えた後
退職を公にしたら、仕事を引き継ぐ相手と引き継ぎスケジュールを調整していきます。この際、最終出社日から逆算して、引き継ぎにどの程度の期間を要するのかあらかじめ概算しておくといいでしょう。
引き継ぎの手順は?
null実際の引き継ぎは、以下のような流れで行います。
(1) 業務のリストアップ
自分がこれまでどんな仕事をしていたのか、1つずつリストアップしていきます。一覧表を作って、自分の業務を“棚卸し”していきましょう。自分が担当していた業務を誰に引き継ぐのかについても上司と相談して決めていきます。
(2)引き継ぎ資料作成
自分の業務の流れを書面で残していきます。顧客別、案件別にわかりやすくまとめられていると、後任の業務が円滑になります。既存のマニュアルがあれば、更新の必要性を確認し、適宜更新しましょう。
(3)引き継ぎのスケジュール調整
新しい担当者が決まったら、引き継ぎのための打ち合わせや会議のスケジュールを調整します。
(4)業務の説明
作成した資料を用いて、引き継ぐ相手に内容を説明します。
(5)必要に応じて取引先に新担当者を紹介
営業やサービス業など、取引先の担当がある職種では、訪問して挨拶をするケースも。現在は、新型コロナウイルスの影響により、オンライン会議や電話・メールで新担当者を紹介するケースも増えているようです。
業種別の「引き継ぎポイント」
null引き継ぎの内容は、職種、職場、職場内でのポジションによっても異なりますが、業種ごとに必ずおさえておきたいのは、以下のポイントです。
【営業職】
通常業務の引き継ぎに加え、“見込み顧客”と“既存顧客”を書類でリスト化して渡す。取引先ごとの対応方法、担当者の雰囲気を後任に伝えておく。
【事務職】
日常業務の引き継ぎ。繁忙期や決算期など、年間スケジュールについても説明。やり取りが多い社内の担当者や取引先の雰囲気を伝えておくとよい。
【サービス業】
日常業務の引き継ぎ。顧客対応の留意点などを共有。
【技術職】
日常業務の引き継ぎ。会社の業務を通じて自分が得たノウハウや知識を書類で残しておく。トラブル時の対応法についても記しておく。
【管理職】
社内外に精通しており責任も伴うので、各所への挨拶は徹底を。取引先や客先への丁寧な挨拶、そして、後任の紹介は力を入れたいポイント。定例で参加している会議や、管轄しているプロジェクトなどの進捗も共有し、立ち位置や注意すべきポイントも引き継ぐ。ルーティン、デイリー・マンスリー・四半期・半期などで行っていたことを順序立てて時系列に伝えることが望ましい。
どのような職種でも大切な「人の引き継ぎ」
先述した通り、必要となる引き継ぎの内容は、職種によって異なります。引き継ぎ時には、業務の流れを伝えることも大切ですが、“人間関係”の引き継ぎも重要です。
後任が新しい職務に慣れるよう、仕事でやり取りすることの多い人の仕事の仕方や雰囲気について伝えておくといいでしょう。
引き継ぎ時の取引先への挨拶のポイントは?メールの場合は?
null引き継ぎ時には、退職の挨拶のために取引先に訪問し、新担当者を紹介する場合もあります。直接挨拶する場合には、退職を公にした時点でスケジュールを調整します。
最近では、新型コロナウイルスの影響で、メールや電話、オンライン会議での後任紹介の機会も増えています。その場合、後任となる同僚について、印象に残るような言葉を添えて紹介すると、人間関係のスムーズな引き継ぎにも役立ちます。
【例文】
・後任は、鈴木花子という者が担当いたします。緻密なデータ分析が得意で、部署での信頼が厚いので、お役に立てると思います。
今回は、北條久美子さんに退職時の引き継ぎのマナーについて解説して頂きました。
これまで共に働いた同僚との縁をつなぐためにも、退職時の引き継ぎは重要な仕事です。
自分にとっては慣れた仕事でも、後任にとっては初めての仕事かもしれません。引き継がれるほうの立場にたった丁寧な引き継ぎを心がけたいものです。
【取材協力】
北條 久美子
東京外国語大学を卒業し、ウェディング司会・研修講師を経て、2007年 エイベックスグループホールディングス株式会社人事部にて教育担当に。2010年にキャリアカウンセラー・研修講師として独立。全国の企業や大学などで年間 約2,500人へビジネスマナーやコミュニケーション、キャリアの研修・セミナ―を行い、顧問として企業の人財育成や教育体型の構築にも携わる。現在はライフスタイリストとしてワーク(仕事)寄りだった人生を、生きること=ライフにシフト。睡眠マネジメントやマインドフルネスなどをワークに取り入れ、自分らしく、かつ生き方(ライフスタイル)を美しくすることを自らも目指し、それを広める場作りに力を入れる。著書に『ビジネスマナーの解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『働き方のセブンマナー』(講談社)ほか。