有給の定義は?入社後いつから取れる?パートでも取れる?条件を解説
null皆さんは、“有給”の意味や定義をご存じですか? 社会人経験が長い方もおさらいのつもりでチェックしておきましょう。
“有給”は、“年次有給休暇”の略。
一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために付与される休暇を指します。取得しても賃金が減額されない休暇です。
有給休暇が付与される要件は2つあります。
(1)雇い入れの日から6カ月経過していること
(2)その期間の全労働日の8割以上出勤したこと
これらの要件を満たした労働者は、業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区分なく年次有給休暇が与えられます。
スポットの有給を取得する際の注意点は?理由はどう伝える?
null続いて、1日の有給休暇を取得するときのマナーについてです。
1日の有給休暇を取得する際には仕事が少ない日、予定がない日を選び、早めに申請をします。職場のルールや雰囲気にもよりますが、できれば1週間以上前に申請するのが望ましいでしょう。
申請後には、上司と相談したうえで、有給休暇の日の業務を事前に同僚に引き継ぎしておきます。
有給取得の理由は何と伝える?
有給休暇取得の理由については「私用のため」「通院のため」「子どもの行事のため」などと、簡略でもいいので正直に伝えましょう。避けたいのは、事実ではない理由を伝えること。何かのキッカケで後になってその理由が事実でないことが周囲にわかってしまった場合、信頼関係に悪影響をきたす可能性があるので注意しましょう。
まとまった休みを取る際の注意点
null夏季休暇や家族の都合により、まとまった休みを取得する際には、上司との相談、休暇スケジュールの調整、業務の引継ぎが必要となります。
連続した休みを取る場合、会社のルールに従い、1カ月以上前におおまかな日程を上司と相談します。同じ部課のメンバーで順番に有給休暇を取る場合には、事前にお互いのスケジュール調整をして、仕事量の調整をするケースもあるでしょう。
休暇スケジュールを決める際には重要な会議や打ち合わせがある日や繁忙期を避け、実際の日付が決まったら、それ以後、新たな用事を入れないようにします。
休み前には、休暇中の業務を代理の担当者に引き継いだうえで、取引先に休暇のスケジュールと代理の社員の名前をメールや電話などを通じて伝えておくとよいでしょう。
業種や職場の雰囲気によっては、まとまった休みをとりにくい職場もあると思われます。周囲の様子を見ながら、早めの段階から伝えておくことが大切です。
子どもが体調不良に…「有給の当日申請時」に心がけたいこと
null先ほど、有給の日程を“事前に伝えること”が大切だとお伝えしましたが、育児や介護などによってケアする家族がいる場合には、自分の都合だけで有給の取得日を決められないケースもあると思います。
会社の社内規定で当日の有給申請が認められている場合、職場のルールに沿って電話やメールで連絡をして有給取得の意図を伝え、同僚にその日のやるはずだった仕事の内容を伝えます。
後日、フォローをしてくれた同僚にはお礼とお詫びの気持ちを伝えましょう。
有給が余ったときはどうなる?買い取ってもらえる?
null有給休暇は、発生の日から2年間で消滅します。与えられた有給を全て使うことができないまま有効期限を迎えてしまうケースも多くあります。
「余った有給を買い取ってもらうことはできないか」という疑問を抱く人が多いようですが、社内でそうした制度がなければ、労働者から雇用者に有給を買い取るように求めることはできません。
そもそも、労働基準法では労働者に有給を与えるのは企業側の義務。本来与えるべき休暇を金銭と交換するのは、法律違反となることもあります。
そうはいっても、企業によっては余ってしまった有給を任意で買い取るケースも見受けられます。
退職時の有給消化はOK?
null退職の間際に余った有給を“消化する”のは法律的には可能ですし、労働者の権利でもあります。有給消化のために、最終出社日と退職日が異なるケースは珍しくありません。
退職前の有給消化を望む場合には直属の上司と相談し、最終出社日と引継ぎスケジュールを調整する必要があります。
「休むのは悪いこと」は古い?「有給」の考え方の変化
null最後に、有給を取り巻く状況についてお伝えします。
職場によっては「休みにくい」「休むことに罪悪感がある」という声も聞かれますが、有給を取り巻く状況は急速に変化しています。
2019年には“働き方改革”の一環で労働基準法が改正され、全ての企業は年次有給休暇付与日数が10日以上の労働者に対して毎年5日、年次有給休暇を確実に取得させる必要が生じています。
これにより、従業員に与えられた有給を積極的に使わせる企業も増加しているようです。
休みやすい雰囲気を作り、休み中に“しっかり休む”ために、普段から社員間で業務の整理や情報のシェアを心がけ、誰かが休んでも業務が進むための土台作りが重要となっています。
部長、課長管理職でも有給取得はできる?
職場で管理職としての地位についている場合、「管理職だから休みにくい」というケースも多くあるようです。
労働者であれば、管理職にも有給休暇をとる権利があります。上司が有給休暇を積極的に取らなければ部下も休みにくくなってしまいます。部課内の休みを取りやすい雰囲気づくりのためにも、適宜有給を取得することは今後ますます重要になっていくでしょう。
今回は、北條久美子さんに有給申請のマナーについてうかがいました。
仕事の状況や職場の雰囲気を配慮しながら、与えられた有給を上手に活用していきたいものです。
【取材協力】
北條 久美子
東京外国語大学を卒業し、ウェディング司会・研修講師を経て、2007年 エイベックスグループホールディングス株式会社人事部にて教育担当に。2010年にキャリアカウンセラー・研修講師として独立。全国の企業や大学などで年間 約2,500人へビジネスマナーやコミュニケーション、キャリアの研修・セミナ―を行い、顧問として企業の人財育成や教育体型の構築にも携わる。現在はライフスタイリストとしてワーク(仕事)寄りだった人生を、生きること=ライフにシフト。睡眠マネジメントやマインドフルネスなどをワークに取り入れ、自分らしく、かつ生き方(ライフスタイル)を美しくすることを自らも目指し、それを広める場作りに力を入れる。著書に『ビジネスマナーの解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『働き方のセブンマナー』(講談社)ほか。
【参考】