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科博で開催中!特別展「毒」で学ぶ毒虫の生態…昆虫研究者インタビュー 「虫嫌いな人にこそ見てほしい」

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都市化にともない、虫嫌いな人が世界的な増加傾向にあると言われています。まして毒を持った虫に関しては“見るのもイヤ”という感情を抱く人は多いと思います。でも、嫌いなものについて知ることで、漠然とした嫌悪感が和らいでいくかもしれません。

現在、東京・上野の国立科学博物館で、自然界や人間社会など、私たちの周りに存在する“毒”に焦点を当てた特別展「毒」が開催されています。

今回は、毒虫エリアの監修を担当した、国立科学博物館の研究員である井手竜也さんに特別展「毒」の見どころや、展示にこめたメッセージについてお聞きしました。

拡大模型「オオスズメバチ」「イラガ」の注目ポイントは?

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特別展「毒」の冒頭では、巨大なオオスズメバチが高い場所からこちらを見下ろし、毒針をこちらに向けています。

約40倍の拡大模型。細部までこだわって作られています

これは、オオスズメバチが攻撃態勢に入ったときの瞬間を切り取った拡大模型です。こちらを見据える複眼がただならぬ威圧感を放っています。

拡大模型の監修を含め、同展覧会の毒虫エリアの監修を担当した井手さんは、以下のように語ります。

「この拡大模型は、パッと見たときのインパクトがありますが、細かいところまでこだわって作りこんでいます。よく見ると細かな毛が生えていたり、普段はじっくりと見ることがない口の内側の部分も見えるようになっています」(以下「」内、井手さん)

ギザギザの口、アンテナのような触角、単眼と複眼。拡大模型だからこそ、細部まで観察できます
毒を注入する鋭い毒針

細部までよく観察すると、スズメバチが昆虫の世界で食物連鎖の上位に君臨する理由が見えてくるかもしれません。

そして、スズメバチの隣に並んでいるのは、日本全土に分布するイラガの幼虫の拡大模型。青葉が茂るころに見かける毛虫です。

100倍の拡大模型は、SFアニメに出てくるキャラクターのよう

「毒の持った生き物を紹介するにあたり、“攻める”と“守る”の2大シンボルとして、スズメバチと、イラガの幼虫を選びました」

イラガの幼虫は“電気虫”とも呼ばれ、ヒトの肌に毒針が刺さって折れたときに毒液成分が注入され、ビリビリとした痛みを感じます。

イラガは、捕食のためではなく、身を守るために毒を利用しています

カラフルな外見から“毒々しい”という印象を抱く人もいるかもしれませんが、イラガの幼虫からヒトを襲ってくることはありません。

触れると痛みを感じる鋭い毒針
「イラガの後ろにそびえ立つ、毒を含むトゲを持つ植物“イラクサ”にも注目して欲しいです」(井手さん)

“攻める”と“守る”のテーマで展示された拡大模型は、後に続く展示をより深く理解するためのヒントが数多く隠されています。色や形、毒を保有する場所をじっくり観察しておくと、後から「そういうことだったのか!」と“伏線回収”ができるようになっているのも、醍醐味だそう。

それでは、数々の展示の一部をちょっとのぞいてみましょう!

「毒をもった虫」の生態を知る!正しい知識で苦手意識を減らそう

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拡大模型の次には、生活圏にいる“毒虫”や、珍しい“毒虫”の標本が展示されています。普段、じっくり見る機会のない毒虫をガラス越しに観察することができます。

一口にスズメバチといっても、さまざまな種類のスズメバチがいます
昆虫を捕食するトビズムカデ

「虫が苦手な人の中には、“虫は毒をもっていそうで怖い”と思っている人が多いのですが、毒を持っている虫は、ほんの一部です。“毒をもっている虫はこんな感じ”というのを知っていれば恐怖が和らぐと思いますし、毒虫の生態を知っていれば対処もできると思います。

今回の展示では、意図的に毒虫ではない虫も混ぜており、隠れテーマとして“虫嫌い”ではなくなって欲しい思いを込めています」

毒を持っている虫は、虫の世界では“マイノリティ”だそう。毒を持つ虫の対処法を知ることで、毒のない虫への嫌悪感がいくらか和らぐかもしれません。

痛みを数値化した「シュミット指数」

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さて、展示の解説の中で井手さんの目がひときわ輝いていたのが、毒虫に刺されたら、どのくらい痛いのかを数値化した“シュミット指数”の展示コーナーです。

痛みを数値化した研究は、人を笑わせ考えさせる研究に与えられる「イグ・ノーベル賞」を受賞しました

“シュミット指数”とは、ジャスティン・シュミット博士というツワモノが、たくさんのハチ・アリに自ら刺され、それぞれの痛みを数値化したもの。

痛みレベル最強の“レベル4”を言語化すると、“目が眩むほどにすさまじい電撃的な痛み。泡風呂に入浴中、通電しているヘアドライヤーを浴槽に投げ込まれて感電したみたいな痛み”。

想像もできない痛みですが、展示されている痛みレベル4のタランチュラホークは、なんと、井手さんが採集したものだそう。

「タランチュラホークを見つけたときには、うれしかったです」(井手さん)

展示しているのは、以前、僕が海外で採集したタランチュラホークです。バタバタという羽音がして見つけたときには、とてもうれしかったです。小型の個体でしたが、持っていた容器にピッタリで、ちょうどよいサイズを見つけたな、と思いました(笑)」

刺されたら“目がくらむほど”の痛みをもたらすハチを見つけて“こわい”よりも“うれしい!”が先立つ井手さんもまたツワモノでした。

展示の中には、シュミット指数レベル4以上の痛みをもたらす虫もひそんでいるそう。

鉄砲で撃たれたような痛み”とも表現される虫の正体は、館内で貸し出ししている音声ガイドで解説されているとのことです。

進化、生存戦略…見終わった後には「虫」がちょっと好きに

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毒虫の展示の後半には、昆虫の進化や生存戦略にまつわる展示が続きます。

例えば、わたしたちの身近にいる、ナナホシテントウ。天敵に襲われると、毒成分を含む黄色の汁を放出して敵を撃退します。ナナホシテントウは、自分に毒があることを周囲に伝える“警告色”をしており、防御に役立てていると言われています。

そんなナナホシテントウの身近には、そっくりさんがいます。“クロボシツツハムシ”という昆虫です。

毒をもった生物同士が似る「ミューラー擬態」と、毒をもっていない生物が毒を持っている生物に似る「ベイツ擬態」があります

クロボシツツハムシは毒をもっていませんが、ナナホシテントウに“擬態”することで、身を守っていると考えられています。

「毒をもっていないものが、毒を持っているものに擬態することで、警告色の効果を得ようとしているケースです」

警告色の“威”を借りて、自分を守るクロボシツツハムシ。自分を強く見せようとする戦略に、えも言われぬ親近感を抱いてしまいました。

ちなみに、特別展「毒」のショップでは、『テントウムシグミ』(10個入、648円・税込)が販売中。

ナナホシテントウがプリントされたグミの中に、“レアキャラ”としてクロボシツツハムシのグミが混ざっているのだとか。井手さんによれば「もしクロボシツツハムシが入っていたらラッキーですよ」とのこと。

もしかしたら「クロボシツツハムシ」が入っているかも

特別展「毒」では、昆虫が地球上で生き残るための進化の軌跡にも触れることができます。

「昆虫にかぎらず、ひろく“虫”を展示しています。なかなかじっくり見る機会はないと思うので、毒を持った虫について知ることで、虫への恐怖感を和らげてほしい」と語る井手さん。

全て見終えた後には、「みんな、がんばって生きているんだなぁ」という感慨と余韻を楽しむことができる展示内容です。

多くの虫が地上から姿を消す冬、家族や友人と足を運んで毒虫の生態に迫ってみてはいかがでしょうか。

 

写真撮影/辺見真也

【取材協力】

井手竜也

国立科学博物館 動物研究部 陸生無脊椎動物研究グループ 研究員

【展覧会情報】

展覧会名:特別展「毒」

会期:開催中~2023年2月19日(日)

休館日:月曜日

※ただし、2月13日(月)は開館

開館時間:午前9時~午後5時(入場は午後4時30分まで)

     土曜日のみ午後7時まで開館(入場は午後630分まで)

会場:国立科学博物館(東京・上野公園)

入場料:一般・大学生2,000円、小・中・高校生600円、未就学児は無料

※ 日時指定予約が必要

※ 最新情報は公式HPでご確認ください

https://www.dokuten.jp/

プロフィール

北川和子
北川和子

自治体HP、プレスリリース、コラム、広告制作などWEBを中心に幅広いジャンルで執筆中。『kufura』では夫婦・親子のアンケート記事やビジネスマナーの取材記事を担当している。3児の母で、子ども乗せ自転車の累計走行距離は約2万キロ。地域の末端から家族と社会について日々考察を重ねている。

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