割下のいらない「関西風」が小林家の定番
null小林家では毎年年始に作るという「すき焼き」。新年をお祝いするごちそうです。関東出身のまさみさんは、昔は割下を作って煮込む「関東風」で作っていたそうですが、最近は割下を使わず、牛肉を焼きながら作る「関西風」が定番になっていると話します。
「だし、しょうゆ、みりん、砂糖、酒などを混ぜて作る割下を関西風は使いません。牛肉を焼きながら、鍋の中で直接調味していくのでだしが不要でお手軽なんです。だから食卓で焼きながら作れます。それが気に入って、最近は関西風で作るようになりました」(まさみさん)
さらに小林家では、北海道出身のまさるさんが地元でよく食べていた「たきたき」という料理をよく作るそう。こちらは関東風のすき焼きと味付けや作り方はほぼ一緒。大きな違いは、使うのが牛肉ではなく「豚肉」とのこと。
「俺が北海道にいた頃は牛肉なんてほとんどなかったよね。だから、すき焼きと同じなんだけど、豚肉で作るんだ。それを“たきたき”って呼んでいたよ。“よし、たきたきやるか〜!”って、それはよく食べていたね」(まさるさん)
手軽にフライパンで作れて、豚肉を使う「たきたき」はとっても優秀。小林家ではこちらが普段のおかずとしては定番のため、すき焼きを作るのは年に1〜2回ほど。だからこそ、「こだわりがある」と、まさみさん。早速、作り方をチェックしましょう。
【材料】(2〜3人分)
牛すき焼き用肉・・・200〜300g
焼き麩・・・4枚
白滝・・・1/2袋
春菊・・・1/2束
長ねぎ・・・大1本
焼き豆腐・・・1/2丁
しいたけ・・・4枚
サラダ油・・・大さじ1
砂糖・・・大さじ3
みりん・・・100ml
酒・・・100ml
しょうゆ・・・70ml
卵・・・2〜3個
【作り方】
(1)焼き麩を水で戻す
小林家のこだわりポイントは、必ず「焼き麩」を入れること。
まず、水を張ったボウルに麩を入れて戻します。麩が軽くて浮いてくるので、皿などをのせて沈め、10分ほど置きます。やわらかくなったら水気を絞っておきましょう。
「麩を入れると甘じょっぱい汁をたっぷり吸って、とってもおいしい! 今回は車麩を使用しますが、好みのものでOK。小町麩、すき焼き麩など、やわらかいタイプの麩を使ってください」(まさみさん)
(2)白滝をゆでる
白滝はゆでて霜降りし、ザルにあげて、冷めたらざく切りにします。
(3)野菜と焼き豆腐を切る
春菊は葉を摘み、茎は食べやすく切ります。長ねぎは2cm幅の斜め切りに、焼き豆腐は4等分に切ります。
(4)しいたけは「花切り」にする
しいたけは石突きを取り、軸を切って「花切り」にします。包丁を斜めに傾けて真ん中に切れ目を入れ、真ん中で重なるように切れ目を3本入れます。軸や切り取った部分は捨てずに、一緒に鍋に入れてください。
(5)長ねぎを焼く
牛肉を焼く前に、まずは長ねぎを焼いて甘味を出します。鍋にサラダ油を強めの中火で熱し、長ねぎを焼きます。油を全体になじませて広げ、途中で返しながら、こんがりと焼き付けて一度取り出しましょう。
「鍋はすき焼き鍋や土鍋を使います。通常の土鍋は、煮たり炊いたりするのに使うもの。我が家の土鍋はステーキなど肉も焼ける土鍋なのですが、家庭の土鍋が焼いたり炒めたりしても平気かどうか必ずチェックしてから使ってください。難しい場合は、フライパンで作れますよ」(まさみさん)
(6)牛肉を焼く
いよいよ牛肉を焼きます。牛肉を入れたらすぐにいじらず、牛肉が焼けてはがれるまで、そのまま置いておきます。肉の色が変わったら砂糖を入れ、ある程度焼けたらひっくり返します。
「砂糖を一緒に入れて焼くのが関西風で、砂糖がカラメルみたいに焦げるくらいがおいしい。今回は、牛肉は肩の部分を使用しました。肩肉は値段もお手頃で赤身と脂身のバランスがいい! 牛肉は好みの部位を楽しんでくださいね」(まさみさん)
(7)調味料を入れる
みりん、酒、しょうゆを入れ、牛肉を端に寄せて煮立たせます。
(8)具材を入れる
関西風は煮汁が少ないので、水気のある具材から入れていきましょう。焼き豆腐、白滝、焼いた長ねぎ、しいたけを入れます。煮汁を吸う麩は最後に入れ、すぐに火が通る春菊は食べるときに入れてください。
(9)できあがり!
具材に火が通ったら、溶き卵につけながら食べましょう。煮汁が煮詰まってきたら、水を適量足しながら調整してください。
まず牛肉から味わってみると、牛肉の旨味と相まって甘じょっぱい味がしっかり! 焼いた香ばしい風味も加わって、煮て作る関東風とはひと味違ったおいしさです。じっくり焼き付けた長ねぎも甘くて美味。さらに焼き麩を噛み締めると、煮汁がジュワ〜ッ。旨味をたっぷり吸ってシミシミになり、小林家のスタメンに抜擢されているのにも納得です。
すき焼きは、年末年始の家族が集まるときに、みんなでワイワイ鍋を囲むのに最適。ぜひ、今年は「関西風」を楽しんでみてはいかがでしょうか?
取材・文/岸綾香
【取材協力】
小林まさみ
料理研究家。結婚後、会社勤めをしながら調理師学校に通い、料理研究家を目指し、料理愛好家 平野レミさんのアシスタントなどを経て、独立。誰でも作りやすく、家庭的なアイディアあふれるレシピにファンが多く、テレビや雑誌、書籍、企業のレシピ開発、料理教室など、幅広く活躍。自身のオンラインショップ『台所用品と食「暮らしの仲間」』では、おすすめの台所用品や各地から厳選した食材、小林まさるの瓶詰め『まさる漬け』などを販売。料理本は『切りおき』(小学館)など著書多数。Instagram@kobayashimasami.masaru
小林まさる
昭和8年生まれ。小林まさみの義父。定年後70才から小林まさみの調理アシスタントを務める。78才でシニア料理研究家として活躍。長年料理をしてきた経験から、冷蔵庫の中にある食材でパパッと作るアイディア満点の家庭料理やおつまみが得意。著書に『人生は棚からぼたもち!』(東洋経済新報社)など。88才からスタートした公式YouTube『小林まさる88チャンネル』も好評。