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「家族も大事、あなたも大事」。96歳を迎える日本料理研究家・鈴木登紀子さんが遺していきたいこと

「95歳まで頑張ることができれば本望……と思っていたのだけれど、どうやらパパ(故・清佐さん)は、まだ私にあちらへ来て欲しくないらしいわ(笑)」

“ばぁば”の愛称で親しまれ、『kufura』では動画も人気の日本料理研究家の鈴木登紀子さんが、11月14日に96歳のお誕生日を迎えます。今回は、ばぁばの集大成ともいえる新刊の発売にあたり寄せられたばぁばからのメッセージ動画とともに、明治生まれのばぁばの母・お千代さんから受け継いだ鈴木家伝統の「ライスカレー」のレシピをお届けします。

じゃがいもの切り方ひとつにも、思う心を込めて

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ばぁばがその50年にわたる日本料理研究家人生で、繰り返し繰り返し伝えてきたのは、「食べる人を思いながら丁寧に仕上げたお料理は、空腹とともに相手の心も温かく満たす」ということ。だから、

「お料理する手も気持ちも出し惜しみしないこと。思えば思ってもらえるのよ」

 と語ります。それは、毎回手の込んだ料理を作ることでも、何品も食卓に並べるということではなく、たとえご飯と玉子焼き、おみそ汁だけであっても丁寧に手をかけて、食べる人の心をほぐす、温かく滋味に満ちたものを用意してほしいというばぁばの願い。

「家庭料理の基本は、家族の健康を守り育てること。そのためには、栄養価の高い旬の食材を中心に、たくさん食べてもらえるおいしいお料理に仕立てる必要があります。

とくにお子さんのいるご家庭では、しっかり食べることが大切です。“おふくろの味”をもりもり食べて育った子どもたちは、繊細な味覚をもった元気な大人に成長します。将来、お料理を厭わない子に育ちますよ」(ばぁば)

お千代さんの「ライスカレー」の作り方

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ばぁばの母・お千代さんは近所でも評判の料理上手で、ばぁばは物心つく頃からお千代さんにぴったりとくっつき、お手伝いをしながらお料理を覚えました。

なかでもばぁばが好きだったのは、当時ではハイカラだった“ライスカレー”。

材料が全部スプーンにのるくらい小さく切り揃えられ、もちろんカレールウなどない時代ですから、小麦粉とカレー粉、ウスターソースなど調味料を合わせて作るさらさらのカレーでした。

「以来、わが家で“カレー”といえば、このライスカレーのこと。娘たちもこのカレーのレシピと一緒に嫁ぎましたから、かれこれ100年にわたる鈴木家伝統のレシピです」(ばぁば)

煮込まないのがこのレシピの特徴。下ごしらえでやや手はかかりますが、お鍋に材料が全部入ってからは、あっという間に仕上がります。

【材料】4人分

豚バラ肉 300g

じゃがいも 3個(400g)

にんじん 1本(100g)

玉ねぎ 2個(200g)

水 5カップ

ローリエ 1

カレー粉 大さじ4

水溶き小麦粉 大さじ4(小麦粉大さじ4 : 水大さじ4)

塩 小さじ3

砂糖 大さじ1/2

酢・しょうゆ・ウスターソース・トマトケチャップ 各大さじ1

こしょう 少量

福神漬け・らっきょう・プチトマト 適量

 

【作り方】

(1)豚バラ肉は食べやすい大きさに切る。

(2)じゃがいも、にんじん、玉ねぎは皮をむき、7〜8㎜角のさいころ状に切る。じゃがいもとにんじんは水に放し、ざるに上げて水気を切る。

(3)鍋に(2)を入れ、水を張る。ローリエを加えて強火にかける。煮立ったら豚バラ肉とカレー粉大さじ1を入れ、中弱火にしてアクを引きながら野菜がやわらかくなるまで煮る。

(4)水溶き小麦粉を少しずつ加え、木べらでよく混ぜる。塩・砂糖、酢・しょうゆ・ウスターソース・トマトケチャップ・こしょう・カレー粉大さじ3を入れて、味をみながら調味して混ぜる。

(5)大きめの皿にご飯を盛って(4)をたっぷりかけ、福神漬け、らっきょう、プチトマトなどを添える。

 

新刊にはこの「ライスカレー」のレシピの他、115種の家庭料理メニューや、便利な“ばぁばの合わせ調味料早見表”なども掲載されています。「遺言がわりのばぁばのお小言」(ばぁば)というこの1冊、日々、台所に立つ私たちの強い味方となってくれそうです。

写真撮影/近藤篤

 

【参考】

11月9日発売

『誰もおしえなくなった、料理きほんのき」(小学館)

PROFILE

鈴木登紀子(すずきときこ)

料理研究家。1923年11月に青森県八戸市に生まれる。46才で料理研究家としてデビュー。東京・武蔵野市の自宅で料理教室を主宰するかたわら、テレビ、雑誌等で広く活躍。『きょうの料理』(NHK・Eテレ)への出演は50年を数える。新刊『誰も教えなくなった、料理きほんのき』『ばぁば92年目の隠し味』(ともに小学館)はじめ著書多数。

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