きっかけは「豆苗」!?
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まずは、「近沢レース店」の仕入れに携わる、「銀座ロフト」の新規MD開発スタッフ、笠原瑞穂さんにお話を伺いました。
「『ロフト』が『近沢レース店』のタオルハンカチを初めて取り扱ったのは、2017年。『銀座ロフト』のオープン時でした。『銀座ロフト』は場所柄、日本全国やさまざまな国のお客様が多いこともあり、“日本全国のいいもの”を集めて店頭に置いています。『近沢レース店』の商品も“日本のいいもの”のひとつとして置いていました。ただ、当時は白地のタオルハンカチのまわりを白いレースで取り囲んだクラシカルなタオルハンカチでした。そのため継続して扱うことはありませんでした」(笠原さん)
しかし「ロフト」のスタッフの1人が買ってきた、ある限定タオルハンカチがきっかけとなり、再度「近沢レース店」とのご縁が生まれたと言います。
「このタオルハンカチがおもしろいと言って見せてくれたのが、『近沢レース店』の“豆苗”のパイピング刺繍が施されたタオルハンカチでした(写真)。これはもう1度取り扱いたい!と再度ご連絡させていただきました。その際に『近沢レース店』さんがタオルハンカチをコミュニケーションツールとして展開しているというお話を伺い、『ロフト』としてもコミュニケーションギフトとしてお客さまに打ち出せると思ったのです」(笠原さん)
創業120年を超える「近沢レース店」の“豆苗タオルハンカチ”が、きっかけになったとは……(笑)。でもとても「ロフト」らしいきっかけなのがおもしろいですよね。
いちばん人気は「タオルハンカチ」。ポーチとレーストートも人気
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そして2023年から再度「ロフト」での取り扱いが始まりました。
「とはいえ『ロフト』全店でお取り扱いをしているわけではないんです。本当にいい商品なので、限られた店舗で愛情を持って丁寧にお取り扱いさせていただいています」(笠原さん)
現在、「銀座ロフト」のほか、渋谷、池袋、梅田、天神の店舗で取り扱いがあるそうです。




いちばん人気は、毎月新しい柄が出る「シーズンタオルハンカチ」。中でも初夏に発売される柄「ビール」は、笠原さんも「お問い合わせやお取り置きのお電話も多く、店頭に出す間もなく即完売してしまい、とくに印象に残っている」と言います。
「春のさくら柄も人気でしたね。また『和レース』シリーズと言われるお相撲さんやおにぎり、お寿司や折り鶴がレースになった定番商品があるのですが、こちらも入荷しては売り切れ、入荷しては売り切れの繰り返しで人気です」(笠原さん)
タオルハンカチ以外の商品の人気はどうなのでしょうか。

「『近沢レース店』をよく知っていらっしゃるお客さまは、『レーストート』(写真)を買って行かれますね。また、中が見える『TPUポーチ(ビニールポーチ)』も人気があります」(笠原さん)
もはやタオルハンカチの人気だけに留まらない「近沢レース店」のアイテム。ただ、私の中では「近沢レース店」というと、昔からのイメージにとらわれているせいか、テーブルクロスなどのインテリア商品やカーディガンや日傘などのアパレルのイメージが強く、ポーチやレーストートに結びつかずにいましたが、今やどんどん“新しい風”が吹き込んでいる様子。
そこで「近沢レース店」創業家の方であり、現在、営業の責任者でもある近澤柳(りゅう)さんにもお話を伺いました。
「お客様の年齢層を下げたい」と模索する日々
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12月の「シーズンタオルハンカチ」は「ロールケーキ」。
近澤さんにお話を伺ってみると、近澤さんが入社した2006年当時は、百貨店中心のビジネスモデルだったと言います。
「かつ当社の商品は百貨店のインテリアフロアに置いてあるので、そこに来るお客様の年齢層は他のフロアに比べるとさらに年齢層が高くなります。とはいえうちもお客様の層を広げないとこの先やっていけなくなくしまう……そこで既存のお客様を大切にしつつも、お客さまの年齢層をどうやって広げるか模索し始めました。
現在人気の『シーズンタオルハンカチ』は、2015年から作っている商品ですが、今のような多彩なカラーリングのものではなく、タオルもレースも白がベースになったものがほとんどでした」(近澤さん)

2022年に登場した“今までの近沢らしくない”、“将棋”デザインのタオルハンカチ。
そんな中、いちばん最初に“今までの近沢らしくない”タオルハンカチが登場します。それが2022年4月に販売された“将棋”デザインのタオルハンカチでした。近澤さん個人の認識では、周りに将棋をさす女性があまりいなかったこともあり、そんなに売れないだろうと思っていたと言います。ところがその予想は見事にはずれ、発売当日、オンラインショップは数分で完売。翌日から始まった直営店舗での販売もほぼ1日で完売してしまいました。
「当時は社内からも、“近沢レース店ぽくないと思うお客様もいらっしゃるのでは?”という声も上がりました。でもここで“従来の近沢レース”から脱却しないと先がないかもしれない。だからターゲットをきちんと絞り、“ささる人にささる個性的な商品を作ろう”と舵を切ったんです。“将棋”は、その最初のきっかけになりましたね」(近澤さん)

「舵を切る」、そう決めてから、次々に斬新な「シーズンタオルハンカチ」が誕生。中でもいちばん印象に残っているモチーフをお聞きすると、やはり「ロフト」の笠原さんと同じく、「ビール」とのお答え。
「将棋以降、模索しながらさまざまなモチーフを出してきましたが、やはり『ビール』は印象に残っています。2021年8月から出し始めたモチーフですが、初期の頃はジョッキに入ったビールと一緒に『ハッピーアワー』という文字を刺繍していたんです。それを社長である兄が、この文字を『とりあえず』、にしてはどうか』というアイディアを出したのです。
案の定“近沢レース店らしくない”という意見も出ました。しかし兄が、“これでいってみよう!”と最終決定を出し、挑戦したんです。これが当たり、まさに“瞬殺”という言葉がぴったりのアイテムになりました。ここ最近は毎年5~6月に販売しているのですが(今後も毎年この時期に必ず販売するわけではありません)、『X』などには買えなくて『私の夏は終わった……』とまで書いてくださるお客様もいるほどの人気商品です」(近澤さん)

今年なんとか1つ買えた、「ビール」のエコバッグ。よ~くみると「とりあえず」の文字が。
確かに「ビール」はもはや幻の商品……。私も今年何とか、最後の1つだったエコバッグは入手できましたが、そのほかの商品はもはや目にすることも叶わないうちに完売していました(笑)。
お安すぎませんか?お値段設定
ここで“創業家の人”である近澤さんにどうしても聞きたかったことがあります。「近沢レース店」のタオルハンカチのお値段は大体1,600~1,800円。国内ブランドということもあるかもしれませんが、これだけ細かい刺繍が施されているのにお値段、安すぎませんか……?
「わたくしどもは原価率から出す価格と、市場価格の両方からを考えて価格設定をさせていただいています。また、そもそもレースの商品というのはギフト需要が多く、ギフトマーケットで育ってきた企業なので、ギフトにするとき差し上げやすい金額というのもすごく考えています」(近澤さん)
確かに3,000円近いタオルハンカチはなかなか買えませんが、1,000円代だと自分にも人にも、“ちょっと奮発”くらいの気持ちで買えますものね。
おうちで洗濯OK!
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そしてもう1つお聞きしたかったのが、お手入れ。せっかく気に入った柄のハンカチを買っても洗濯して、レース部分がほつれてきちゃったらどうしよう!? と心配になりますよね。
「ご安心ください。ネットに入れて家庭用洗濯機で洗っていただいて大丈夫です。“デイリーユースできないものを販売しても、お客様にご愛顧いただけない”、これはずっと弊社がこだわっていることで、タオルハンカチにしてもレーストートにしても、お洗濯がラクな素材をこだわって選んで作っています」(近澤さん)
なんとレーストートもお洗濯してしまって、大丈夫とのこと! これでますます安心してお買い物できますね。
レーストートとポーチの魅力
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さて、ここからは近澤さんに人気商品の魅力についてお聞きしました。まず、「ロフト」でも“近沢通の人”が買って行くと言う「レーストート」。
「エコバッグ自体は2006年以前から作っていて人気だったのですが、強度の問題があり、生地の上にレース刺繍を施したものを販売していたんです。でもやはりうちは“レース屋”ですから、“オールレース”で作れないものかと開発に取りかかりました。かなり苦労したのですが、2010年、耐荷重約10kgの現在の『レーストート』が完成しました。
また、昔はロットも多くて、何年かに1回くらいしかモデルチェンジができなかったんです。それが最近になってロットをこなせるようになり、シーズンごとにさまざまなデザインを出せるようになりました」(近澤さん)

軽やかな透け感が魅力のメッシュポーチは、年3~4回、新しいデザインを出している安定の人気商品。
ポーチは現在、メッシュポーチと「TPUポーチ」があります。
「当店はインテリアファブリックで商売をしてたので、カーテン生地やテーブルクロスの生地をポーチなどの小物類に転用して販売してきました。ポーチの歴史は意外と長いんです。メッシュポーチも15年ほど前から作らせていただいています。メッシュ素材はレースに通ずるエアリー感があるので、レースと非常に相性が良く、うちのお客さまにもずっと人気です。中国で製造しているのですが、とくにここ5年くらいはクオリティがより安定してきました」(近澤さん)

納得のいくクオリティになるまで15年もの時間がかかった「TPUポーチ」。
「TPUポーチ」については、今の形になるまでさまざまな問題があり、ここまで来るのに相当苦労したと言います。
「いわゆるクリア感が魅力のビニールポーチのことですが、実は15年ほど前から何度も何度も挑戦して作っていたんです。しかし汚れや濁りなどの問題があり、なかなか納得がいく商品ができない。でも今年になってやっと納得できるものが出来上がり、ほっとしています」(近澤さん)
メッシュポーチも「TPUポーチ」も、レースの部分は貼っているのではなく、きちんと縫い付けてあるところも日本ブランドらしい丁寧さを感じられます。
確実に買える方法~4月と10月、年2回がチャンス~
null最後に近澤さんに、あまりにも昨今、お目当ての商品が買えないので、どうにかして買う方法はないか伺ってみました。
「実は弊社は7年以上前から、先行受注販売というシステムを行っているんです。毎年4月にその年の秋冬、そして10月に翌年の春夏商品を発表しているのですが、その際、先行受注を受け付けているんです。オンラインの場合はオールコンプリート(半年間に出る「シーズンタオルハンカチ」24枚。ただしシーズンによって枚数の変動はあり)になってしまいますが、横浜の本店と百貨店などにある各直営店舗でしたら1枚からでも予約可能です。まだまだ欲しいお客さまに欲しい商品が届いていない状態なだけに、ぜひこのシステムを知っていただければと思います」(近澤さん)
“オールコンプリート”ではない場合、確かにお店に行く手間はかかるけれど、あるのかないのかわからない状態で買いに行ったり、夏など暑い中、並んで買ったりする必要がなくなるので、すごくいいシステムだと思います。どうしてもほしいものがある人は、ぜひこの“先行受注”を利用してみてください。10月はもう終わってしまったので、来年の4月がチャンスです。ぜひ今から、スケジュールに書き込んでおいてくださいね。
編集者・フードジャーナリスト。多くの料理本や暮らしの本、キャンプ本を手がける。自著に子どものごはん作りの闘いを描いた『闘う!母ごはん』、『素晴らしきお菓子缶の世界』(共に光文社)がある。 プライベートでは猫2匹&犬1匹と小学生、大学生の女の子の母。ハワイじゃなくてグアムラバー/スターウォーズマニア/アダム・ドライバーファン。Instagram













