「キッチンペーパー」誕生のきっかけは“タオル代わり”
nullトイレットペーパーは1857年に、ティッシュペーパーは1914~1918年の第一次世界大戦下に、いずれもアメリカで開発されたと紹介しましたが(第1回・第2回)、キッチンペーパーの前身となるペーパータオルもアメリカで、1907年頃に開発されたといいます。
「タオルを何度も使うのは不衛生のため、使い捨てできる紙をタオル代わりにしようと開発されたようです」(以下「」内、森脇さん)。
日本では戦後、駐留米軍がペーパータオルを使っていたことから“手を紙で拭く”という概念が伝わり、1957年から国内でペーパータオルの製造が始まったとされています。それが次第に、台ふきんの代わりとしても使われるようになったため、食品を扱うペーパーとしてより安全性を考慮した商品“キッチンペーパー”が別途製品化されたようです。
SDGsの観点からいえば、紙で手などをふいて使い捨てにするのは“もったいない”かもしれません。しかし、衛生面で考えると、そうも言ってはいられないようです。
「大王製紙の実験室で高温多湿の洗面室を再現し、タオルに付着させた菌の増殖を測ったところ、6時間後で約40倍、9時間後で約200倍、12時間後にはなんと約7,500倍にまで達しました。細菌は驚くほどのスピードで増殖しています。
食中毒予防はもちろん、新型コロナウイルスやインフルエンザなど、感染症予防のためにも、調理の時はタオルよりもキッチンペーパーを活用した方がよさそうですね。
「ペーパータオル」と「キッチンペーパー」の違いは?
nullもともと、ペーパータオルから派生して開発されたキッチンペーパー。どんな点が違うのでしょうか?
「ペーパータオルもキッチンペーパーも、一般的なティッシュペーパーよりも吸水性にすぐれていて丈夫ですが、大きな違いは、“食品に使えるかどうか”です。
キッチンペーパーは、野菜を拭くなど食品に直接触れる用途があるため、安全のためにさまざまな規格や検査をクリアする必要があります。ですから、基本的にパルプ100%で作られており、古紙を利用していません。
ペーパータオルには古紙が使われているものもありますが、パルプ100%のものもあります。ただしその場合でも、『食材を扱う用途として作られていない』といった旨の注意書きがされています」
古紙を再利用した紙は、色みをよく見せるため蛍光染料が使われていることが多いそう。こうした染料が含まれた紙は食品衛生上、適していないので、ペーパータオルを選ぶ際も念のため、“蛍光染料使用”の表記がないものを選ぶのがおすすめです。
ペーパータオルの役割は、お手拭きをはじめ、洗面回りやトイレなどのお掃除用であり、一方キッチンペーパーは、野菜や肉、魚の水きり、揚げ物の油きり、フライパンや鍋の油拭き、食器拭き、キッチン回りやレンジ、換気扇の汚れ拭きがその役割。素材などが違うため、それぞれの用途に合わせてきちんと使い分けることが大切です。
水分や油分をたっぷり吸収する秘密は“エンボス加工”に!
nullキッチンペーパーの製造方法は、ティッシュペーパーとほぼ同じですが、加工工程で水や油を吸っても破れないよう、強度が高くなるよう設計されています。
「キッチンペーパーは、台所での使用に特化しているため、一般的なティッシュペーパーに比べて吸水性と吸油性が高いのですが、これはエンボス加工のおかげです。
エンボス(型押し)加工とは、型押しした凸部が向かい合わせになるように重ねてのり付けすること。そうすることで、のりがスポンジの役割をして水や油を吸収しやすくなります。さらに表面の凸凹によって、重なったペーパーの間にすきまができるため、そこに水や油を閉じ込めやすくなるのです」
ちなみに、ただの点描のように見えるエンボス加工ですが、実は、
例えば、『エリエール』のキッチンペーパーには、
「キッチンペーパー」電子レンジで使える?NGな使い方
nullキッチンペーパーは水や油をたっぷり吸っても破れないよう、丈夫な構造になっているため、トイレなどに流してはいけません。トイレットペーパーのように水で紙の繊維がほどけることはないので、うっかり流すとつまりの原因になります。注意しましょう。
その他の注意点は……?
「キッチンペーパーは落し蓋等としても活用できますが、長時間の加熱はしないでください。可燃物ですから、燃える可能性があります。
同様に、電子レンジにも要注意。基本的には使えませんが、中には“使える”と表記があるものも。そういう商品でもレンジ機能のみを使用し、オーブン機能は使わないこと。燃える場合があります。
また、熱した油などをふき取った際は、充分に冷ました上でゴミとして捨ててください」
吸水性、吸油性が高く、丈夫なものの、紙なので熱には弱い……。メリットとデメリットをしっかり覚えて活用しましょう。
「ロールタイプ」と「シートタイプ」の使い分け方は?
nullキッチンペーパーには、「ロールタイプ」と「シートタイプ」がありますが、どちらも品質や使い方は変わりません。ただし、利便性に少し違いがあるようです。
「ロールタイプの場合、素早くたくさん巻き取れるので、大量にこぼした液体を拭き取る際は便利です。また、トイレットペーパーと同様、巻きの密度を変えれば、1.4倍巻き、2倍巻き、2.4倍巻き(当社の場合/当社比)と、直径はそのままに大容量にできるので、面倒な取替え回数が少なくて済み、かさばる買い物頻度を減らせるのも利点です。
一方、シートタイプはロールタイプと違って、最初から一枚ずつ切り離されてパッケージされているので、料理の合間でも片手でサッと取り出しやすい(大王製紙独自の取り出し口形状※特許出願中)のが特徴です。当社製品の場合、通常のロールタイプ4本分(50カット)と同じ枚数が2パックに収められているので、コンパクトに収納できます。フィルム包装のため、濡れたり汚れたりしにくいのもメリットといえます」
シチュエーションに合わせて使い分けるといいかもしれませんね。
フェイスマスクや加湿器に!? キッチン以外での便利な活用法
null“キッチン”と銘打っているため、キッチン以外の用途には使えない……と思いきや、そんなことはないようです。
「もともと“タオルの代わり”として誕生しているので、顔を拭いたり、濡れた髪を拭くなど、フェイシャルタオルとしてお使いいただくこともあるようです。また、吸水性が高いため、化粧水や美容液をたっぷりしみこませれば、手作りのフェイスマスクにもなります」
ほかにも、濡らしたキッチンペーパーを数枚重ねて部屋に置いておけば、お手軽な加湿器になりますし、コーヒーフィルターの代わりにもなるようです。
さて、いかがでしたか? 毎日のように使っているものの、意外と知らないことも多かったのではないでしょうか? 加工技術の進化で、最近では、無漂白でより安全性を高めたキッチンペーパーや、パッケージに抗菌フィルムを採用し、より衛生的に使えるペーパータオルなどが続々開発されています。ぜひ、用途を見極め、幅広く活用してみてください。
【教えてくれた人】
森脇哲平さん
大王製紙株式会社
グローバルマーケティング本部
ファミリーケア・ブランドマーケティング部
主にトイレットペーパー、ティシュー、キッチンペーパーなどにおいて、「エリエール」をはじめとする各ブランドの提供価値を高めるため、商品のコンセプト・企画立案から、パッケージ開発・商品開発・プロモーション展開までのブランド戦略を一貫して管理・実行している。
エディター/ライター。大学卒業後、出版社に勤務し、その後、フリーの記者として主に週刊誌の編集・執筆に携わる。歴史や美術をはじめ、マネー・車・健康・ペット・スピリチュアル・夫婦関係・シニアライフスタイルといった多岐にわたる女性向け実用情報を手掛ける。1児を持つシングルマザーで、趣味は漫画・アニメ鑑賞、神社巡り。