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「トイレットペーパー」シングルとダブルの違いは紙の重ね以外にも!メーカーに聞いた9のトリビア

全3回でお届けしている「ティッシュペーパー」など紙製品にまつわる“意外と知らない活用方法”。2回目となる今回は、「トイレットペーパー」について深堀りします。

「いつからあるのか?」「シングルとダブルではどう違うのか?」「ベストな使用量は?」など、毎日使っているにもかかわらず、改めて聞かれると知らないことばかりではありませんか? 今回も、1979年から販売を開始し、今ではトイレットペーパー市場No.1ブランドとなった『エリエール』を有する総合製紙メーカー『大王製紙』の “紙博士”こと、ファミリーケア・ブランドマーケティング部・森脇哲平さんに、興味深いお話をたっぷり伺いました。

トイレットペーパーはどこ生まれ?いつからあるの?

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ティッシュペーパーは、1914~1918年の第一世界大戦下、戦場での外科治療の際に必要な脱脂綿(コットン)の代用品として、アメリカの会社で開発されましたが、トイレットペーパーの歴史はもっと古いといいます。

「トイレットペーパーが初めて市販されたのは1857年のこと。アメリカのJoseph Gayetty社が発売した『Gayetty’s Medicated Paper』が最初とされています。当時はいまのように紙を巻いたロール状ではなく、ボックスティッシュのように一枚ずつ取るタイプだったとされています。

ロール状のトイレットペーパーは、1890年にアメリカのScott paper社が発売した商品が最初となります。当時の特許などを見るとシングルタイプだったようです。ダブルのトイレットペーパーが発売されたのは1942年のこと。イギリスのSt. Andrew’s Paper Mill社が発売した『ANDREX』が最初でした。当時の広告によると、女性やお子様、敏感肌の方のために開発されたようです」(以下「」内、森脇さん)。

用を足た後に紙で拭くという文化は、6世紀頃の中国ですでにあったとする説があり、日本でも鎌倉時代あたりには、紙で拭く文化はあったとされています。しかし、庶民がトイレットペーパーを使うようになったのは江戸時代に入ってから。古紙を使った「浅草紙」などが用いられていたようです。同じ時期に、海外からロール状のトイレットペーパーも入ってくるようになりましたが、こちらは高価で、全国的に普及はしなかったようです。

日本では1924年(大正13年)に神戸市の島村商会(嶋村商會)が初めてロール状のトイレットペーパーを発売したとされています。その後、上下水道が整備された影響で、1955年(昭和30年)頃からトイレが「汲み取り式」から「水洗式」へと変わり、トイレットペーパーが普及していったとされています。

「しかしなぜ、トイレットペーパーがロール状になったのか、いつだれが開発したのか、といったことは、残念ながらわかっていません。とはいえ、使い勝手の良さ、大量生産のしやすさから、いまの形になったと考えられています」

トイレットペーパーは全世界共通でロール状。この便利な形態が“発明”された過程は謎のようですが、素晴らしいアイディアであることには間違いありません!

どうやってつくられているの?

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ティッシュペーパーの製造工程は大きく分けて3つあり、それが、(1)パルプ工程 (2)製紙工程 (3)加工工程だと、1回目で詳述しました。トイレットペーパーも(2)まではほぼ同様のつくり方ですが、(3)の加工工程がティッシュペーパーとは大きく異なるといいます。

「トイレットペーパーは、100秒以内に水に溶ける(繊維がほどける)ようJIS(日本産業規格)に明記されているため、水でパルプの繊維がほどけやすい加工が施してあります。(2)の製紙工程では、紙に特性を与えるため薬品の調合を行いますが、トイレットペーパーはこのとき、繊維がほどけやすいよう調合されます。鼻をかむときなどに使用する一般的なティッシュペーパーは逆に溶けにくいよう加工される、というわけです。

また、弊社の『エリエール トイレットティシュー』や『Theエリエール トイレットティシュー』に関しては、ふっくらとした柔らかさを実現するため、2種類の柔軟剤も処方しています」

ティッシュペーパーとトイレットペーパーのつくり方で最も異なるのが加工工程。というのも、ティッシュペーパーは、1枚ずつ取り出せるよう箱やパックに詰められますが、トイレットペーパーはロール状にするからです。

ジャンボロール 写真提供:大王製紙
トイレットワインダー 写真提供:大王製紙

「当社の新商品『Theエリエール トイレットティシュー』の加工工程ではまず、幅2.4m、直径1.7m、巻の長さ26kmの「ジャンボロール」と呼ばれる原紙を、トイレットワインダーという巻き取り機でダブル仕様に重ね合わせてトイレットロールにします。

断裁機(ログソー) 写真提供:大王製紙

このトイレットロールをログソーという機械で既定の寸法に裁断し、1本のジャンボロールから20個のトイレットペーパーをつくります。1日に多いときで28万ロールを製造しており、その重さは最大約30トンになります(長さなどの数字は、いずれも『Theエリエール トイレットティシュー』の場合。製品によって仕様は異なります)。その後、高精度検査装置で不備がないか検査後、出荷します」

このようにして、大王製紙では現在、年間約17億ロールものトイレットペーパーを生産しているのだそうですよ。

どっちがお得?シングルとダブルの違い

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さてここからはいよいよ、トイレットペーパーにまつわる豆知識を紹介していきます。

まずは、多くの人が気になっているだろう、シングルとダブルの違いから。どちらのコスパがよいのか、気になるところですが……。

「シングルは、ダブルと比べて1ロールあたり約2倍の長さになっています。また、1枚の紙でダブルと同程度の丈夫さが求められるため、1枚あたりで見るとダブルよりもシングルの方が丈夫で破れにくい特殊構造になっています。ダブルは2枚重ねのため、紙同士の間に空気が入り、シングルより厚くやわらかいのが特長です。

日本国内での販売金額で比較すると、シングルが約3割、ダブルが6割以上と、圧倒的にダブルが売れています。地域別でみると、北海道、関西、中国、四国地方はシングルの売り上げが多く、そのほかの地域ではダブルの人気が高いようです。

ちなみに、世界的に見るとシングルのトイレットペーパーは少なく、24枚重ねのものが一般的です。日本では薄くやわらかいトイレットペーパーが好まれる傾向にあることから、シングルやダブルが多いのですが、アメリカやヨーロッパなどでは、厚みのある商品が好まれるようです」

シングルの長さがダブルの2倍、ということは、コスパ的にはどちらも変わらないということに。1枚でもしっかり丈夫なシングルか、ふんわりと柔らかいダブルか、使用感で選べばいいようです。

ふっくら柔らかいのはエンボス加工のおかげ

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大王製紙の『エリエール』ブランドのトイレットペーパーをはじめ、一部のトイレットペーパーには、表面に凸凹した模様が入っているものがあります。これは何故なのでしょうか?

「弊社の場合、エンボス(型押し)加工によって、表面に凹凸をつけ、吸水力と肌触りのよさを高めているんです。

1枚ずつエンボス加工を施したら、型押しした凸部が向かい合わせになるように重ねてのり付けします。そうすることで、のりがスポンジの役割をしてより水を吸収します。また、表面に凸凹があることで、重なったペーパーの間にすきまができるため、水分を吸収しやすくなるのです。

そのほか、エンボス加工をすることで、紙があたかも揉まれたようになるため、紙自体がやわらかくなりますし、ペーパーが肌に接触する面積が小さくなり、その分摩擦が減って肌触りがよくなります」

点描のように見えるエンボス加工ですが、実は花柄などの模様になっており、これは各メーカーでデザインが違うのだとか。違いを見比べてみるのもおもしろいかもしれませんね。

古紙(リサイクル)で造ったトイレットペーパーとの違い

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再生紙からつくられた製品は、ピュアパルプ製品と比べてほんのり薄墨色で見た目にも分かりやすい。

トイレットペーパーには、古紙を活用したものもありますが、一般的な商品とどう違うのでしょうか?

「トイレットペーパーは、新聞や雑誌などを回収して再利用した古紙商品と、一度も紙になっていない原料(ピュアパルプ)を使用した商品の2つに大別されます。

古紙をリサイクルしたものは、一度紙になったものを溶かしてつくり直すので、紙の繊維が短くなります。それをまた固めると紙の密度が薄くなり、紙が硬くなって肌触りが落ちます。その代わり、価格は少々リーズナブルに。日本の資源再生技術は高いため、現在古紙の輸出需要が増えています。

一方、ピュアパルプを原料とした商品は、リサイクル紙より値段が高いのですが、吸水性や肌触りがよいため国内での人気が高く、2022年度はピュアパルプ商品の構成比が約60%になりました」

SDGsの観点で言うと、再生紙を使った方がいいのかもしれませんが、吸水性が高ければ使用量も少なくて済みますし、手触りなどの満足度も踏まえて、ピュアパルプ製を選んでもいいのかもしれませんね。

表と裏はある?

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シングルユーザーさん、巻き方はどっち?

トイレットペーパーには表と裏があり、それは特にシングルだとわかりやすいといいます。そして使用する際は、表を意識した方がよいのだとか。

「紙を抄く(作る)ときなどに表裏ができてしまいます。ザラザラした面が裏側となり、特にシングルの場合、裏側が内を向くように巻いてあります。トイレットペーパーを使うとき、裏側を外に向けてたたむ人が約20%いるという調査結果があるのですが(大王製紙調べ)、できれば表側が肌にあたるようにして使っていただく方が、より心地良くお使いいただけます」

一般的なダブルのトイレットペーパーの場合、裏側同士を重ね合わせているため、巻いてあるどちらの面を使っても表側が使えます。表裏がわかりづらい、なるべく表をきちんと使いたい場合はダブルを選ぶといいかもしれません。

ベストな使用量の目安があった!NGな保管場所も

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おすすめのトイレットペーパーの使用量。

トイレットペーパーはどれくらいの量を使っていますか? 中には、ぐるぐると手に巻いて、かなりの量を使う人もいるようですが……。

「トイレットペーパーの使用量に決まりはありませんが、衛生面から考えると、汚れや排泄物が直接手につかないよう、充分な厚さが出るように重ねるのがおすすめです。たとえば、温水洗浄便座などを使う場合、ダブルで5枚(切れ目で1枚)、シングルで10枚程重ねると、水分をしっかり吸い取りながら、手も汚さないとされています。

近年増えつつある節水タイプのトイレは、一度に大量のトイレットペーパーを流すと、詰まることがあるので、節水タイプのトイレをお使いであれば、どのくらいの使用量が推奨されているのか、説明書などを一度ご確認いただくのがおすすめです」

トイレットペーパーを折りたたんで使う際の適量を教えてもらいましたが、くしゃくしゃに丸めて使うのはよくないのでしょうか?

「弊社の調査によると、そういう方も約3割程度いらっしゃいますが、これも間違いではありません。トイレットペーパーを丸めることで、よりふんわりと空気が含まれ、使い心地がよくなるからです」

そのほか、NGな使い方はあるのでしょうか?

「保管場所には気をつけていただきたいですね。トイレの棚などに保管する分にはいいですが、浴室近くは湿度が高いのでおすすめできません。一度濡れたトイレットペーパーは、乾かせばまた使えるものの、紙質が硬くなってゴワゴワし、肌触りが悪くなります。そうならないよう、湿気が低い場所での保管を心がけてほしいですね。ユニットバスの場合、できれば室外の物置などに保管した方がいいでしょう」

いま人気が高まっているのは「長巻タイプ」

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トイレットペーパーとひと口に言っても、香りや絵柄がついたもの、消臭タイプ、シャワートイレ用タイプなど、現在はさまざまな商品が開発・発売されています。中でも近年人気が高いのが“長巻タイプ”だといいます。

通常巻きのトイレットペーパーの長さは、一般的にシングルで60m以下、ダブルで30m以下なのに対、長巻はその1.5倍~3倍巻などとなり、シングルで61~180m、ダブルで31~90mもあります。

長巻タイプは交換回数や収納スペースが減らせて助かる!

使用者にとっては交換や購入の手間が減らせ、販売者にとっては、多くの商品が陳列できる、物流業者にとっては、効率的に輸送できるなど、各方面に大きなメリットがあることから、ここ数年ニーズが高まっています。2018年度は市場全体の16.9%のシェアだったのに対し、2022年度には37.5%と、わずか5年で2倍以上に伸長しました。

弊社では業界に先駆け1997年に1.5倍巻商品『エリエール トイレットティシュー コンパクト』を発売。以降、順調に売り上げを伸ばしています」

防災の備蓄用にも重宝する長巻タイプ。あまりにもペーパーが長いと、ペーパーホルダーに収まらないような気がしますが、そこは大丈夫! 長くても密度を濃くして巻いたり、厚みを工夫したりして、直径がそれほど変わらないようにしているそうですよ。

生活者の悩みに対応した商品も続々登場

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シリーズ最高品質の「The エリエール トイレットティシュー」。柔軟剤を従来の2倍量配合し、驚くほどふんわり! シャワートイレ専用製品と同等レベルのやぶれにくさで、使い心地も抜群。芯から香るフローラルソープの香りに癒されます。

最も人気の高いトイレットペーパーは標準的なタイプだといいますが、次に人気なのが、先に挙げた長巻タイプ、次いでシャワートイレ用タイプ、そして、消臭タイプが人気のようです。それぞれどのように使い分けたらよいのでしょうか。

「一般家庭における温水洗浄機能付き便座(シャワートイレ)の普及率は2020年に80%を突破しました(内閣府 「消費動向調査」より)。それを踏まえて当社で調査を行ったところ、シャワートイレ使用時の悩みとして『拭きとるときにペーパーが破れる』『ペーパーが肌に貼りつく』『何度も拭きとるなどしてたくさん使ってしまう』などの意見が。

そこで、ふんわりと厚みがあって吸水性が高く、水にぬれても破れにくい丈夫なシャワートイレ専用トイレットペーパーを開発。ゴシゴシ拭くのではなく、ポンポンと当てるだけで水分を吸い取り、水に溶けるポケットティッシュよりも溶けにくい丈夫さを実現しました」

シャワートイレの洗浄機能をよく活用する方にはおすすめと言えます。

「トイレの悩みでもう一つ多いのが、におい問題。当社の調査によると自宅でにおいが気になる場所としてトイレを上げた方が73.3%に上がりました。そこで、トイレットペーパーの芯に香り成分をつけたり、天然由来消臭成分(タンニン)を芯に配合してアンモニア臭を消臭。さらに、尿ハネによるにおいの発生をおさえる防臭機能も付与し、におう前に防げるようにしました」

トイレットペーパーはいま、使用者のニーズに応えてどんどん進化しています。いつも同じ標準タイプを使っているという人も、用途に合わせて使い分けてみると、より快適なトイレライフを送れそうです。

 

いかがでしたか? 毎日使っているトイレットペーパーでも知らないことがたくさんあったのではないでしょうか? 次回は「キッチンペーパー」について詳しく紹介していきます。

 

【参考】

ミツカン 水の文化センター 機関誌『水の文化』58号 誰も知ろうとしなかった「拭く紙」
https://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no58/07.html


【教えてくれた人】

森脇哲平さん

大王製紙株式会社
グローバルマーケティング本部
ファミリーケア・ブランドマーケティング部

主にトイレットペーパー、ティシュー、キッチンペーパーなどにおいて、「エリエール」をはじめとする各ブランドの提供価値を高めるため、商品のコンセプト・企画立案から、パッケージ開発・商品開発・プロモーション展開までのブランド戦略を一貫して管理・実行している。

大王製紙 エリエールブランドサイト

嶋田久美子
嶋田久美子

エディター/ライター。大学卒業後、出版社に勤務し、その後、フリーの記者として主に週刊誌の編集・執筆に携わる。歴史や美術をはじめ、マネー・車・健康・ペット・スピリチュアル・夫婦関係・シニアライフスタイルといった多岐にわたる女性向け実用情報を手掛ける。1児を持つシングルマザーで、趣味は漫画・アニメ鑑賞、神社巡り。

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