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なぜ「マイクロファイバー」は水だけで汚れが落とせるの?NGなお手入れ方法も聞いてみた

洗剤を使わなくても、拭くだけで汚れがきれいに取れるうえ、吸水性・速乾性が高いマイクロファイバー製のクロスやスポンジ。とくに掃除シーンではあると便利ですよね。『kufura』でも、20〜50代の女性290人にマイクロファイバー製品の使用状況についてアンケートを取ったところ、約6割の女性が「活用したことがある」とのこと。

とはいえ、「なぜ拭くだけで汚れが落ちるのかがわからない」「掃除以外の使い道がわからない」など、意外と知らないことが多いよう……。

そこで、2回に分けてマイクロファイバー製品の徹底活用法を紹介していきます。1回目となる今回は、マイクロファイバーの製品開発をサポートする技術商社『椿本興業』の秋田朋希さんに、マイクロファイバーの歴史やメリット・デメリットなどの“基礎知識”を教えてもらいました。

そもそもマイクロファイバーってどういう素材?

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世界中で使われるマイクロファイバーは日本生まれ!

マイクロファイバーとは、その名の通り“とても細い(=マイクロ)繊維(=ファイバー)”のこと。では、どれくらい細いのでしょうか。

「マイクロファイバーとは一般的に、直径が10マイクロメートル(0.01ミリ)以下の繊維を指します。日本人の髪の毛の直径が60~100マイクロメートルですから、その約10分の1と、かなり細いことがわかります。

実はマイクロファイバーの定義はあいまいで、この直径以外で規定はありません。ですから、直径10マイクロメートル以下であれば、材質や構造はさまざま。とはいえ、ほとんどのマイクロファイバーはナイロンやポリエステルの化学素材から作られた合成繊維でできています」(以下「」内、秋田さん)

実はマイクロファイバーは日本生まれ。これほどまでに細い繊維を製造できる会社が約60~70年前にすでに日本にあり、1970~80年代には特許を取っていたといいます。

その後、日本国内で特許が切れたことで、海外メーカーが開発・製造に動き出し、主に工場や車などの掃除用製品として、世界的に普及していったのだそう。つまり、マイクロファイバーは日本で誕生した繊維なのです。

マイクロファイバーの特徴・メリットは?

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汚れをよくかき取る理由は、繊維の“隙間構造”にアリ!

アンケートの回答には、「使い続けると手が乾燥する」「肌に引っかかる」などの意見が見られたのですが、実はこれこそ、マイクロファイバーの特徴のひとつ。マイクロファイバーは、ただ単に細いだけの繊維ではなく、分割加工を施すことで機能性を持たせているのだそう。

「マイクロファイバーは一般的に、ポリエステル80%とナイロン20%を組み合わせて作られた合成繊維です。これに特殊な薬剤をかけて繊維の一部を溶かすことで、歯車のようなデコボコした断面にします。

このデコボコがあることで、綿などの一般的な繊維に比べ、より多くの汚れや細かいホコリをかき取れるのです」

左:繊維を薬剤で一部溶かして断面に隙間のある歯車状に。 右:隙間が汚れをかき取る。 画像:椿本興業HPより

繊維の断面がギザギザしているから手触りもゴワゴワ感じる、というわけ。逆に綿のタオルなどは手触りがいいですが、繊維にギザギザがないため、汚れをかき取る力は弱いといえます。

「汚れをかき取るということは、素材の表面に傷をつけるのではないかと思われがちですが、そんなことはありません。

弊社では、マイクロファイバー製のクロスと綿製のクロス、それぞれに2キロの荷重をかけ、その状態で数百回プラスチックをこする実験をしたのですが、表面についた傷の度合いは綿とほとんど変わりがありませんでした。

確かに触ると肌に引っかかる感じはありますが、傷はつけないことが分かっています。ですから、たいていの場所は掃除できます」

吸水性や速乾性が高いのは、この“隙間構造”のおかげ!

左:綿/繊維の隙間が少ないため、大量の水分を吸い込めない。 右:マイクロファイバー/繊維が細く隙間が多いため、大量の水分を吸い上げ、保持できる。 画像:椿本興業HPより

「吸水性・速乾性が高いのも、繊維断面の隙間のおかげです。

たとえば、綿は繊維自身が水分を吸い込みますが、繊維に隙間が少ないため、大量の水分を吸い込めません。

画像:椿本興業HPより

一方、マイクロファイバーは繊維そのものが細いうえ、分割加工によって大量の隙間を作ってあるため、その隙間に水分を大量に吸い込んで溜められます。

隙間が多い分、水分のリリースもしやすいので、速乾性も高い、というわけです」

マイクロファイバー製のクロスが掃除に向いているのは、繊維断面に隙間があるからなんですね。それが汚れをかき取り、隙間に大量の水分を吸い込んで保持してくれる。

しかも、溝がある分、繊維の表面積が広いので、軽く絞って干しておくだけで、室内干しでも数時間で乾かせるほどの速乾力があります(速乾性は綿のなんとおよそ7倍とか!)。

肌触りがごわつき、手の水分がとられて乾燥するという点は、確かにデメリットといえるかもしれませんが、だからこそ、掃除の場面では重宝する、というわけです。

乾燥機、柔軟剤、アイロンがけ…NGなお手入れ方法とは?

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有能なマイクロファイバーですが、実は気をつけないといけないことがあるのだそう。

「マイクロファイバーは、主にポリエステルやナイロンといった化学繊維で作られています。これらはいわば“元プラスチック(樹脂)”。ですから、あまりの高熱に当てると、溶ける可能性があります」

アイロンがけをしてしまうと繊維が溶けて、せっかくの機能が低下してしまいます。乾燥機にかけるのもおすすめはしないといいます。そもそも速乾性が高いので、乾燥機にかける必要はありませんが……。

「掃除に使うため、熱湯消毒をしたいという方がいらっしゃいますし、熱湯消毒可能とうたっている製品もありますが、機能の低下を考えるとおすすめしません」

洗濯は一般的な洗濯洗剤を使い、洗濯機で洗えば充分だとか。漂白剤も使えます。ただし黒など、濃い色のマイクロファイバー製品と一緒に洗濯機にかける際は、一緒に洗う洗濯ものへの色うつりに注意しましょう。

また、吸水性能を保持するには、柔軟剤は使わない方がいいのだとか。

「とはいえ、柔軟剤の使用でそれほど大きな変化はないので、風合いをよくしたい場合は、使っても問題はありません。ちなみに弊社で実験をしたところ、20回洗濯を繰り返しても吸水性能にはほぼ変化がないことが分かっています」

何度洗っても性能は落ちないとはいえ、ついた汚れが落ちなくなったら捨て時(取り換え時)の目安にしましょう。

肌や髪に使っていいの?マイクロファイバーのデメリット

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もうひとつ、デメリットといえるのが、体をふくのには向いていないということ。

マイクロファイバーは水分だけでなく、油分もしっかり吸収するので、それこそ掃除にはいいですが、顔などの肌が繊細な部分をごしごしふいてしまうと、水分と油分が取られ、乾燥してカサカサになってしまいます。

「とはいえ、髪の毛やペットの毛などを乾かす際は、速乾性があるのでおすすめです。

また、マイクロファイバーは、織り方、編み方、合成する化学繊維の割合などで風合いはもちろん、特性も多少変わるので、掃除以外にも、実は様々なシーンで活用できるんです。たとえば、薄く織れば眼鏡拭きになるんですよ」

どうやら掃除シーン以外にも活用されているよう。どのような使い道があるのかをふまえながら、マイクロファイバー製品の種類について、次回詳しくご紹介していきます。お楽しみに!

 

【取材協力】

椿本興業

嶋田久美子
嶋田久美子

エディター/ライター。大学卒業後、出版社に勤務し、その後、フリーの記者として主に週刊誌の編集・執筆に携わる。歴史や美術をはじめ、マネー・車・健康・ペット・スピリチュアル・夫婦関係・シニアライフスタイルといった多岐にわたる女性向け実用情報を手掛ける。1児を持つシングルマザーで、趣味は漫画・アニメ鑑賞、神社巡り。

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